ビキニアーマーで殺意を込めて 〜元アサシンは巨乳の夢を湯煙の彼方に見る〜

第十六章 冷たくて寒くてCになっちゃう…

第二十三話 ていうか、まさかのニアミス！？

「……≪ちょこっと回復≫《ア・リトル・リカバリー》……これぐらいでいいですか？」

「めっちゃやる気のない回復だったわね……まあ意識があればいいんだけど」

『ををを……！　身体が、身体があああ……！』

　まだ全身が痺れてるらしく、プルプルと身体中が震えている。おもろい。

「気が済んだ、エイミア？」

「……私を放置したサーチ達にも、仕返ししようか悩んでます……」

　とんだ八つ当たりだな！　確かに私達も悪いかもしれないけど！

「……決めました！　やっぱり仕返しします！」

「ちょっと待てええええっ！」

「≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)！」

　くっ！　仕方ない、自分だけでも……！

「≪偽物≫(イミテーション)！」

　長い鉄棒を作って地面に突き立てる。そして棒を離さないように気をつけながら、両手に手袋をはめる。

　バヂバヂバヂィ！

「あっちちち、手袋焦げちゃったわ……」

　一応、絶縁体の手袋だったんだけど……。

「な、何でノーダメージなんですか！？」

「鉄棒で電気を地面に逃がしたのよ。避雷針ってヤツね」

「サ、サーチだけじゃありません！」

　え！？　みんなの分は間に合わなかったのに……？

「私もサーチ姉と同じ理屈」

　リジーは梯子を地面に突き立てていた。確かに梯子なら、避雷針には十分だわ。

「わ、私もサーチと同じ理屈……です」

　ヴィーは……蛇の一部を地面に潜らせていた。あれで避雷針代わりにしたんだろうけど……。

「……ノーダメージではなさそうね……」

「……後で≪回復≫(リカバリー)します」

　半泣きのヴィーが「可愛いな、おい……」と思ってしまう時点で、私も結構ヤバいのかもしれない。

「……ごほ、げほ……き、効かねえな……ごほ」

「……あんたは避雷針代わりにする手段がなかったのね……」

　……期待通りに、リルだけが焦げていた。

「あ、エイミア」

「何ですか？　みょーーーーんんんっ！」

「八つ当たりなんかしてくんじゃないわよ！　あんたの注意不足でしょうが！」

「みょんみょんみょん、みょみょみょーーーーんんんっ！」

「反省しなさいよ！　わかった！？」

　エイミアは必死に、みょんみょん頷いた。伸びた頬っぺたを離す。

　……ぱちんっ！

「いひゃ！！　……びえええええええっ！！」

　エイミアを泣かしてから、ヴィーの元へ行く。

「ヴィー、大丈夫？」

「あ、はい。心配して頂いてありがとうございます」

「あーあ、蛇が何匹か焦げちゃったわね……再生できるの？」

「だ、大丈夫です。人間の髪の毛と同じで、生え代わりますから……」

　そう言って俯いてしますヴィー。顔はほんのりとピンク色に染まっている。

「……ちゃんと約束通りデートしてあげるから」

「え！？　あ、ありがとうございます！　う、うふふ……♪」

　……はしゃぐヴィーが異様に可愛く感じてしまい、ついイタズラ心が疼いて……。

「……ふぅーっ」

「はひゃあああああああっ！？」

　ヴィーの耳に息を吹き掛けた。反応がおもしろかったので、耳を甘噛みしてみる。

「はむっ」

「ひゃ！？　ひいうううううっ！」

　ぺたんっ

　あ、あれ？　ヴィーが座り込んじゃった。

「どしたの、ヴィー？」

「は、はわわわわ……こ、腰が抜けちゃいました……」

　あららら、喜んでいただけたようで何よりです。

「サーチ姉、ヴィー姉をからかい過ぎ」

「あはは、おもしろくって、つい……」

「ええっ！？　私の事をからかってたのですか！？　……もうっ！」

　あ、怒った。

「……ヴィー姉、怒った仕草も可愛いなんて卑怯」

「あはは、確かに……ヴィー立てる？」

　ヴィーは立とうとするけど、完全に腰が抜けたらしく。

「……駄目です、立てません……」

　いくらメドゥーサでも、腰が抜ければ立てないか。

「サーチ姉、責任持ってヴィー姉を連れてって」

「わかったわよ……。でもリルとエイミアはどうするの？」

「ヴィー姉、回復できる？」

　ヴィーはゴニョゴニョと詠唱を始めたけど、少し顔を歪ませてから止めた。

「……すみません、腰が痛くて集中できません……」

「わかった、私が引き摺っていく」

「ちょっと、さすがに引き摺るのは」

　どくんっ　　　　

「…………！」

「……サーチ姉、どうしたの？　腕が痛む？」

　……三冠の魔狼(ケルベロス)の刺青が……焼けるように熱い……！

『お前達！　早く隠れよ！』

　突然私達の頭の中に氷の真竜(マスタードラゴン)の声が響く。相当焦ってるみたい。

「……何事なり？」

　……間違いない、これは……！

「早く隠れるわよ！　急いで！」

「サ、サーチ姉？」

　ヴィーをおんぶすると、リジーに振り返って叫んだ。

「ここに現れるのよ！　七冠の魔狼(ディアボロス)が！」

　近くの窪地に駆け込む。すると、頭上を氷のフタが覆った。氷の真竜(マスタードラゴン)、さんくす！

『これで少しは誤魔化せよう。後はお前達で何とかせよ…………幸運を祈る』

　さあ、何とかして気配を隠蔽しないと！

「ヴィー、私達を空気の膜みたいなモノで包めない？」

「できます……普段なら」

　ぐあ、腰か！

「任せろ！　うりゃりゃりゃりゃ！」

　突然リルがヴィーの腰をマッサージし始めた。

「あ……すっごく気持ち良いです……。でもいつ終わるのですか？」

「……三時間」

　絶対間に合わないじゃない！

「でしたら≪電気治療器≫(バッテリーチャージ)で！」

「止めた方が。ヴィー姉が黒焦げになる可能性が大」

　……イヤだからね、ヴィーのリアルな姿焼きなんて。

　あ、でも、褐色のヴィーも可愛いかも。

「……サーチ、何を想像してるのですか？」

　や、やだ〜、ヴィー。目が怖いわよ……。

『何をしておる！　早く気配を消さぬか！』

　そ、そうは言われても……私以外は≪気配隠蔽≫使えないし……。ヴィーは相変わらず腰抜けてるし……。

「何かヴィーを急速に回復させる方法ないの！？」

　焦ってると、リルがリジーに耳打ちしてるのが見えた。何してんの？

　しばらく観察してると二人は頷きあって……。

「「とりゃあああ！」」

　私に飛び掛かってきた……って何でよ！？

「ちょっと！　何なのよ！？」

「おとなしくしてろ！　リジー、そっちはどうだ？」

「大丈夫、準備万端」

「あ、あの〜？　何をする気ですか？」

　リジーはヴィーをおぶって連れてきた。そのまま私の前に降ろす。

「はーなーせー！」

「サーチ、ジッとしてろっての！」

　ぼかっ！

「イタ！　何すんのよって……マジイタい〜！」

　痛みで怯んでる隙に私の頭を正面に向け、スタンバイしていたリジーの誘導で、ヴィーの顔の一部(・・)とくっつけられた。

「≪聖風の加護≫《ホーリー・エアヴェール》！」

　……すげえ……ホントに治ったよ……。

「これで私達の気配は遮断されました！　後の微調整は私にお任せ下さい」

「いやあ……気合い入ってるねえ……」

「さすがヴィー姉。聖術が冴え渡る」

「やかましいわ！」

　一喝されて、黙り込む二人。

「あ、あのさあ……悪かったからさ……」

「サーチ姉お願い、服返して」

「ああんっ？」

「「いえ、何でもないです……」」

　たんこぶや青タンをたくさん作ったリルとリジーは、罰として……剥いた。

「このまま町まで連れていこうかしら〜〜」

「「本当にすいませんでした！」」

　……その脇で。

　なぜか異様にエイミアがご機嫌斜めだったのが……謎だ。