第二十一話 ていうか、明かされる真竜誕生の秘密!
『お、お前達は何なんじゃ! 人を散々、瀕死状態にまで追い込みおって……!』
はいはい、ごめんごめん。
「それより〜七冠の魔狼〜について〜さっさと〜教えなさいよ〜〜」
『な、何じゃ! 異様にムカつくな……』
「まあまあ。ここは私に任せてくれよ」
「リルが……? まあいいけど……」
『おほ♪ ビューティフルヒップのリルちゅわんではないか♪』
……やべ。今全身を悪寒が走った。トリハダが一気に……。
ごっ!
『あぎゃあ!』
ごっごっごっ!
『いだあい! 止め……いで! いでえ!』
リルによる向こうずねへの連続攻撃! あれは痛い……。
「もうめんどくせぇのは御免なんでな……さっさと七冠の魔狼について、知ってること全部吐け」
『な、何ちゅう無体な真似を……!』
めきっ
『いぎゃああああ! 小指、小指があああ!』
うわあ……足の小指へのピンポイント攻撃! 器用ね……。
「さっさとしゃべれ」
『痛いーー! 痛い痛い痛いいいいい!』
「痛い痛いうるせえんだよ!」
めきっご! めきっご! めきっご! めきっご!
『あぎゃらばやはらはー!!』
スゴい、向こうずねと小指への波状攻撃!
「……次は本命の深爪いくけど……」
『わかった! わかりました! 言う! 言います! 言わせていただきます〜〜! だから堪忍してえ〜〜……ウワアアアアアアン!!』
あ、マジ泣きしちゃった。
「サーチ。これが死なない程度の攻撃のお手本だ」
……確かに向こうずねや足の小指をいくら攻撃されても、致命傷に至ることはないわね……。
『ぶくぶくぶく……こひゅー……ぐふっ』
「リル姉、瀕死になっちゃった」
「な、何ぃ!? げ、脈がない! ……ヴィー、あの……」
「……本当に疲れてるんですけど……。何回≪回復≫をやらせる気なんですか?」
『おお……天にまします我らが神よ……今、お近くに……』
「リル姉、魂が天に召されかけてる」
「げええっ!? 逝くな、逝くんじゃねええ!! 頼むヴィー! マジで頼む!」
スゴいわ、リル。魂の尻尾を捕まえて、昇天を防いでる……。
「やってあげて、ヴィー。リルをコキ使う権利三日分で」
「それには一切興味ありません」
「……私との混浴」
「≪完全回復≫の三乗!」
……このヴィーのやる気の源、何とかなんないかなあ……。
……めっちゃムダな時間を浪費しまくって、ようやく本題に入れた。
『……七冠の魔狼が〝八つの絶望〟を巡っておるのは知っておるな?』
「ええ。それぞれの属性の力を集めて、自らの存在を安定させるんだって」
『成程。大体の事は知っておるようじゃな』
大体の?
「何よ、その言い方だとまだ何かあるような感じがするんだけど?」
『その通りじゃ』
え?
『お前は知っておるか? 〝八つの絶望〟が、かつては〝七つの絶望〟であった事を』
……そういえば……闇深き森だけは、マーシャンが作り出したダンジョンだったのよね。
「……闇深き森だけが後から作られたダンジョンだから……じゃないの?」
『お、知っておったのか。中々に博識じゃのう』
「サーチはくだらねぇことばっか知ってるからなぐぼぉ!」
リルに教えてもらった「死なない程度の攻撃」をリル自身に試してみた。
……リルは悶絶して崩れ落ちた。
『……お前は仲間にも容赦ないのう』
「ほっといて。それで? 闇深き森が出てきたってことは、マーシャン……サーシャ・マーシャも関わってるの?」
『何と! ハイエルフの女王を知っておるのか!』
「パーティメンバーよ」
『な、何と……。どうやらお前達は、大きな使命を担っておるようじゃの……』
「そんなの知ったこっちゃないんだけどね……。で? 続きは?」
『あ、うむ。〝七つの絶望〟。これを魔王様が作った理由はわかるか?』
「秘密の村のカモフラージュと、真竜への嫌がらせでしょ?」
『そこまで知っておるのか……本当に魔王様と友達なのじゃな……』
まあ一緒に温泉にも浸かった仲だしね。
『その真竜じゃが……属性を司っているのは知っておろう。実は司っておるのは、属性だけではない』
ははあ……七つだもんね。
「……七つの大罪ね」
『そういう事じゃ。滝の真竜は「暴食」、炎の真竜は「怠惰」、地の真竜は』
「『色欲』よね」
「『色欲』だな」
「『色欲』一択」
「……あの方は『色欲』以外はあり得ないと思いますけど……あなたも『色欲』なのですか?」
あ、そうだわ。こいつも「色欲」以外はあり得ない気がする。
『私か? 私は「強欲」じゃ』
あ、それがあったか。
「ていうか『強欲』って確か『物欲』よね? あんた女性を『物』扱いしてるわけ?」
『私からすれば人間など「物」と同様』
最低だな!
『さてと。ここまで言えば〝七つの絶望〟に七冠の魔狼が立ち寄る理由が、属性だけではないとわかるな?』
「それぞれの真竜が七つの大罪を司ってる……。どう考えても七冠の魔狼と何か繋がりがある、と考えるのが自然よね……」
『……そうじゃな……』
「それは話してくれないの?」
『全ては語らぬよ。多少はお前達自身にも、御足労願おう』
「じゃあリルに御足労願いましょう」
「向こうずねか? 小指か? それとも……深爪か?」
『私達真竜は元々七冠の魔狼の力の一部じゃったんじゃ!』
あっさりゲロったな!
ていうか力の一部ですって!?
『自らの頭同士の争いを悔いた七冠の魔狼は、己の力を分離して各地に封印した。そして再び過ちを犯さぬよう、監視役として真竜を生み出したのじゃ』
「……その割には七冠の魔狼には『様』付けせずに、魔王には『様』付けするのね」
『当たり前じゃ! 生むだけで放りっぱなしの輩と、私達を何かと気にかけてくださった魔王様とは違うわい!』
「え? 確かソレイユは『真竜への嫌がらせ』って言ってたけど……?」
『……魔王様は素直ではないからのう……』
……ああ、ツンデレってことか。