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第十五話 ていうか、サーチに忍び寄る背筋も凍る恐怖……。

 何なのよ、この苦行。


「……えっと……『頭上につららがアンラッキー』じゃねえよ……何々? 『キミと一緒にアイスをスライダーしてハートは戴き☆』 ……星はいらないし、頂きは字が違うし……」


 ……このAクラスパーティ……虹の極光レインボーサンシャインだっけ……ヘタに冒険者やるよりも、暗号作成技術で一生食っていけるんじゃね?


「サーチ、お茶飲みますか?」


「あ、ありがと……『キミを連れてパラダイスアイスへgo』……何で小文字?」


「サーチ、それポットですよ」


「あっちいいぃぃ! は、早く教えてほしかったんだけど!」


 ヴィーは≪回復≫(リカバリー)をかけながら、クスクスと笑った。


「まさかサーチの手が、ポットへ真っ直ぐ伸びていくと思いませんでしたから……はい、治りましたよ」


 ありがとう、便利屋(こころのとも)よ。


「……もう一度火傷してもう一度治療しましょうか?」


 ご、ごめんなさい……。


「あっはは! すっかり尻に敷かれてるな、サーチ!」


「うるさいわよどら猫。あんたのスープだけ、毎回アチアチにしといてあげようか?」


「や、止めてくれよ……」


 ふん。あんたが猫舌の時点で、調理担当の私には勝ち目がないのよ。


「し、尻に敷くなんてあり得ません! 私はちゃんとサーチを立てますよ!」


「ヴィーさん? あんたも何を言ってんすか?」


「え? ええっと……目の錯覚です」


「それを言うなら空耳でしょ……ヴィーもしっかりしてよ……」


「す、すみません……」


 ふー、やれやれ……ええっと? 『ストレートにゴーして、ライトにスライドすればトゥギャザーなのさ』……こいつトゥギャザーの意味わかって使ってるのかしら……。



 その頃。


「……リーダーのサーチが身元引受人になる。これがギルドカード」


「……ふむ……何故リーダー本人が来ない?」


「今、ギルドで重要な仕事中。手が離せないので、私が代理」


「……身元も間違いないし、パーティクラスがBなら身元引受人としても文句無いな。わかった、連れていくと良い」


「……これでエイミア姉、やっと解放……」


「……連れてきたぞ。さっさと何処か行ってくれ。ドアがパチンパチンいってたまったモノじゃない」


「……?」


 ギイイ……


「エイミア姉、久し……ひええっ」


 バチ……バチバチ……

 バリ! バリバリ!


「……リジー……サーチはどこですか……?」


「案内する。案内するから触らないで」


「もちろんです……全部、サーチに浴びせる為に集めたせいでんき……ちょっとでも無駄にはしません……」


 バチバチ! バチ!


「……前言撤回。近寄るのも遠慮する。私まで帯電する」


「……早く……サーチに……ウッフフフ……」


「……ワタシ、シラナイヨ。ムカンケイヨ」



 ぞわぞわっ


「っ……!」


「サーチ? どうかしましたか」


「な、何でもない……何故かコールドな気を感じただけ」


「風邪ですか? ちょっと熱を測ってみましょう」


「もしもーし、ヴィーさん? おでことおでこをくっつける必要性があるのかな?」


「この方が正確にわかります。別に密着したいとか、少し滑った振りをして唇を奪おうなんて考えてません」


「……考えてたわけね……。あと、何で脇に手をいれてるのかな?」


「これも正確に熱を感じる為です。手が滑ってブラに手を突っ込もうなんて考えてません」


「……考えてたわけね……。ていうか、口からだだ漏れなんですけど……」


 そんな私とヴィーのやり取りを見ていたリルが。


「おーおー、熱いこって。見てるこっちまで暑さを感じるぜ」


 ……とか言って、うちわで自分を扇ぎ出した。


「リル。全身が暑いんだったら、口の中からスーパーホットにしてあげようか?」


「や、やだなあ……冗談だ冗談」


 ……たく。だったら最初から言うなっつーの。


「はあ、まだ半分……何でこんなに薄っぺらいブックなのに、ここまで時間がかかるのかしら……」


「サーチ、頑張って下さい。何でしたら肩を揉みますよ」


「ありがと……ていうか、何で手が徐々に前にズレてくるのよ!」


「気のせいですよ」


 ……たく。


「さあ、一気に読んじゃうわよ! 『あと三歩進めばキミのヘヴンへ無限にフォール』……つまり落とし穴があるのね。何て回りクドい……」


「君のヘヴンへ無限にフォール……私はすでにサーチのヘヴンへ無限にフォール……うふ、うふふ……」


「ヴィー! オーラが散るから、独り言と妄想は他でやってくんない!?」



 その頃。


「な、何でしょうか? 今日はやけに、ドアノブからパチッっときますな」


「そうなんですよ。私も今日は髪が逆立って逆立って……髪型が崩れて仕方ないんですよ」


「何でしょうね……こんな事は初めて『バチチッ!』 うわっ!? な、何だ?」


 バチチッ! バチバチ!

 バリバリ!


「な、何だあれ……」


「……近寄らない方がいいですな。あれは危険だ」


 バシィ! バチバチバチ……


「サーチぃぃ……待ってなさいよぉぉ……」


 バリバリバリ!


「ちょっと! そこの君!」


「……何か?」

 バチィ!


「ひっ! な、何でもありません。どうぞお通り下さいませ」


「………」


「そこの人。今のエイミア姉には関わらない方がいい」


「あ、あなたはアレ(・・)の知り合いなのですか!? なら何とかしてくださいよ! 危ないったらない!」


「………」


「ちょっと! 何とか言いなさいよ!」


「ワタシ、ムズカシイコトバワカラナイ……」


「そんなので誤魔化せると思うなあああっ!」


「ひえええっ! お助けえええっ!!」



「……ん? あれ?」


「どうしました?」


「ん、んん……何かリジーがヘルプミーするボイスが……」


「へ、へるぷみ? ぼいす?」


 あ、しまった。変なカタカナ語が混ざった。


「ソーリーソーリー。オーラにしないで……え゛」


 な、何か言葉が変になってる!?


「ど、どうしよう! ホワイかブックのワードが……あああああっ!」


「サーチ!? どうしたんですか!? サーチ!」


 な、何かに書けば大丈夫か? 私は手近にあった紙に書きなぐる。


『どうやらこの本には妙な呪いがかかってるみたい』


「ええ!? 呪いですか……ならば≪浄化≫(ピュリファイ)!」


 ああ……私の中の呪いが……。


「ヴィー、サンキューベリマッチ……って消えてないいいっ!?」


「そんなっ!? 私の≪浄化≫(ピュリファイ)で呪いが解けないなんて!!」


「なあ、純粋に≪解呪≫すればいいんじゃねえの?」


≪浄化≫(ピュリファイ)≪解呪≫(ディスペル)の上位聖術です。解けないはずがありません」


「そんなこと言ったって……リアルにリカバリーされてナッシング! って、もうイヤアアああ!!」


 バアンッ!


「見つけましたよ……サーチぃぃ!!」


 げっ! エイミア!

 何てタイミングの悪い……!


「私を陥れた事……償ってもらいます!」


「リ、リトルウェイト! それどころじゃ……」

「問答無用!」


 がしぃ!


 つ、捕まった! エイミアのスイカの柔らかい感触が何とも……じゃなくて!


「行〜き〜ま〜す〜よ〜……フルパワー放電……」


 ちょっ、待っ……!


≪女神の抱擁≫(ゴー・トゥー・ヘヴン)!!」



 (注! 言語道断な爆音が響き渡りました。擬音ではカバーしきれないため、皆さんの頭で想像してください)



「……けほっ」


 ブスブス……


「はあはあ……どうですか、サーチ! 思い知りましたか!」


 や、やってくれたよ……ごほ。 


「……十分に味わったわよ……けほこほっ。ていうか、周りを巻き込み過ぎだっつーの! ……ってあれ?」


 な、治ってる?


「サーチ! 呪いが解けたようですよ!」


 ヴィーの言葉で、私は確信を得た……っていうか!


「な、何であんた達は無傷なのよ!?」


「咄嗟に≪聖なる結界≫(マジックシールド)を張りましたから……。でも私の全MPを注ぎ込んで、ようやく防げました。恐ろしい威力です……」


 そうなの……けほ。


「ま、何はともあれ。おかげで変な呪いが解けたわ。ありがと、エイミア」


「は、はあ……どういたしまして……? 何故か釈然としないんですけど?」

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