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第十四話 ていうか、キミの瞳がオーシャンビュー☆

「ようこそグラツへ。大変に良いモノを見せてもらぶっ!」

「我らはあなた方を歓迎しますぞ! ピンクばんざーぶごっ!?」

「げへへへ……お嬢ちゃん、今夜おぢさんとイヤらしいはべらっしゃ!!」


「ふーっ、ふーっ、ふー……」


「エイミア、どーどー。殴ってもいいけど殺しちゃダメよ? 最後のヤツは別にいいけど」


「はい」

 めこっ!

「ぎゃあああああああっ! ……ぶくぶくぶく」


 あ、股間を押さえたまま泡吹いちゃった。


「エイミア、ブーツをよーく消毒しときなさいよ」

「当然です! ヴィー、≪浄化≫(ピュリファイ)!」

「え!? あ、はい!」


 ……流石のヴィーも今の(・・)エイミアには逆らわない方がいい、と判断したらしい。急いで聖術をかけた。


「なあ、私達はどこに連れていかれてるんだろうな?」


 リルの疑問ももっともだ。結界の上での騒動のあと、私達は町の入口を教えてもらった。すぐ近くに雪のトンネルがあって、先が町の門だったのだ。その部分だけ結界に穴が空けられて、出入りができるようにしてあった。

 その穴を抜けると、エイミアのパンチラを喜ぶ群衆の万歳が起き(エイミアが全員黒焦げにした)、さらに先に警備隊が現れて……ただいま連行中、というわけだ。


「何で私達が捕まらなくちゃならないのよ!」


「捕まって当たり前だ! どれだけ罪のない市民をシバき倒したと思ってるんだ!」


「いや、全員迷惑防止条例違反でしょ……」


「その前にお前らの公然わいせつ罪だろうが!」


「バッカじゃないの!? 見せたくて見せたわけじゃないわよ!」


「だからといって、釘こん棒で殴り倒していい理由じゃないだろ! 完全な傷害罪だよ!」


 うぐ……それを言われると……! 仕方ない。この手は使いたくなかったけど……!


「なら! 公然わいせつ罪も釘こん棒での傷害罪も、この娘がぜ〜んぶ一人でやったことです!」


 そう言ってエイミアを指差した。


「!! サ、サーチ!?」


「本当か!? ならお前だけ(・・)逮捕だ!」


「そ、そんな……! ちょっとサーチ!」


「じゃあ私達は無罪放免ってことで! 失礼しま〜す……」


「サーチ! 助けてくださいよおおおっ!」


 ……口笛を吹いて誤魔化す。


「ほら、行くぞ! 事情は警備隊の待機所でたっぷり聞かせてもらうぞ!」


 さよーなら、エイミア! あんたの犠牲はムダにしないわああっ!

 ……と考えつつ、手を振って見送った。


「サ、サーチぃぃぃっ! 覚えてなさいよおおおっ!!」


「……一番最初に現れるザコが、逃げながら言う捨てゼリフと同じね」


「……サーチ、お前……つくづくひでぇヤツだな……」

「いつか罰が当たると思われ」

「でも、そんな冷酷なサーチも素敵……」


 ……ヴィーの反応は、さらっと流しとこ。


「まずはギルドへ行きましょうか。氷河の城壁(アイスキャッスル)の詳しい情報を集めないと……」


 エイミアの貴重な犠牲をムダにしてはならない。


「……言っとくが、エイミアが怒っても……私達は知らねえからな」


「わ、わかってるわよ」


 ちっ。全員巻き込もうと思ってたのに。


「どうせお前のことだから、私達を巻き込んで自分への風当たりを弱くしよう……とか企んでると思ってな」


 鋭い。

 まあ落ち着いたら、ちゃんと迎えに行くわよ。



「……ん? あんたらは、結界の上にいた……」


 私達がギルドに入ると、受付に座っていた海賊みたいなおっさんが反応した。


「そうだけど……実は氷河の城壁(アイスキャッスル)の情報が欲しくて」


氷河の城壁(アイスキャッスル)の? あ、もしかして、あんたらが船の底抜きボトム・フォールアウトか?」


 お? 私達のパーティ、ちょっと有名になってきた?


「そうだけど……」


「ほう、そうか。あんたらが〝八つの絶望〟ディスペア・オブ・エイトばかりを攻略して回ってる、という超物好き(・・・・)の……」


 パーティまるごと変わり者扱いされてるのかよ!


「はいはい、モノ好きで変わり者パーティですよ!」


「わっははは、そう膨れるな! それだけ名前が知れ渡っているということだ! 実際にAクラスパーティでも二の足を踏む〝八つの絶望〟ディスペア・オブ・エイトを二つも攻略しているのだ! 胸を張るがいい、胸を!」


 ……このおっさんが「胸を張れ! 胸を!」って言うと、セクハラにしか聞こえないのは何でだろう。


「それで? 氷河の城壁(アイスキャッスル)の情報はあるの? ないの?」


「あるぞ。少し前にAクラスパーティが氷河の城壁(アイスキャッスル)に行ってきてな。その時に書いた『今年の氷河の城壁(アイスキャッスル)の傾向と対策』を売っている」


「……何なのよ、その入試の問題集みたいなヤツは……」


「にゅーし?」


「あ、何でもないです……リル、メモるな! あ、何でもないです。おほほほ……」


 あーめんどくさい。


「と、とにかく! 一冊売っていただけませんか?」



 とりあえず『今年の氷河の城壁(アイスキャッスル)の傾向と対策』ってのを買ってみたけど……。


「薄いな!」


 銀貨三枚払った対価がこれかよ! めっちゃぼったくられた気分だわ!


「まあ買ったんだから読むしかねえだろ」


 そう言ってリルが本を手に取って読み始めた。うちのパーティのマッパーだから、リルが把握してくれれば一番いいか。

 ……と、思ってたんだけど……。


「……うっがあああああ! 何だこれ!? 全然わかんねえよ!」


 そう言って本をリジーに投げた。


「どれどれ……パス」


 リジーは一ページもめくらないうちに、ヴィーにバトンタッチした。早いな。


「? ……そんなに難しいのですか?」


 そう言って何ページかめくるヴィー。読み進むにつれ、ヴィーの眉間のシワが深くなっていく。


「……これは……難しいとかいう問題ではないですね……感情の問題と言いましょうか」


 感情の問題?


「ちょっと見せて」


「……どうぞ」


 ……何故か異様にヴィーが疲れてるように見えるけど……?

 どれどれ……。


 ペラ……


『はあ〜い☆ 世界的に超有名な、Aクラスパーティの虹の極光レインボーサンシャインが! と・く・べ・つ・に……キミたちに教えてあげちゃう』


 パタンッ!


「……確かに感情の問題ね……」


 何よこの虹の極光レインボーサンシャインって……。


「先まで読んでみましたが……上から目線の解説と、異様にキラキラした文章が目に痛いと言いましょうか……」


 あ、ヴィーがちょっとイラついてる。


「はあああ……仕方ない、腰を据えてやりますか……」


 えーっと何々……『キミの瞳がオーシャンビュー☆』……破りたい。



 その頃。

 エイミアは警備隊待機所の独房内で、必死に身体を擦っていた。


「サーチぃぃぃっ! 絶対に許さないんだから!」


 バチ……バチバチ……

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