表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
330/1883

第十話 ていうか、スノードラゴンの素材でウハウハ! 一気に財政が潤ったのに……?

 警戒しながらスノードラゴンに近づく。


≪聖火の加護≫ホーリー・ファイアベール!」


 ヴィーが念のために、私に対氷属性の聖術をかけてくれた。


「ありがと、ヴィー」


 ふざけて投げキッスしたら、ヴィーが卒倒した。何でやねん。


「……あれだけ血を流してれば……死んでるとは思うけど……」


 1m近くまで近づいて、≪偽物≫(イミテーション)で作れる限界の長さの棒を作り、つつく。


 ツンツン、ツンツン


 ビクビク! グェア……


「わたたたた」

 ズザザザザ!


「どうしたんですか、サーチ!?」


「な、何でもない! 大丈夫大丈夫!」


 まだ生きてたのね……! ていうか、スゴい生命力。


「……口から短槍をぶち込まれて、身体を串刺しにする感じで貫通したってのに……」


 敵ながらあっぱれ。手を合わせてから、長い針でドラゴンの頭を突き通した。

 これで死ななかったらゾンビよね……あ、瞳孔が開いてる。


「……OK! 間違いなく死んだわ! 全員来てもいいわよー!」

「本当に!? やりましたねわぶっ!」


 エイミアが歓声をあげながら走ってきて……コケた。


 ツツゥゥー……


 そのままキレイに滑ってきて……私の前で止まった。


「……サーチぃ……痛くて冷たいです……」


「……エイミア、わざと? ウケ狙い?」


「わ、わざとじゃないですよ〜……びええええっ」


 ……あんたの場合は、わざとじゃなくても笑いをとれるしね……。

 次にやってきたヴィーが、必死に笑いを堪えながらエイミアの擦り傷を治療していたのが、また笑えてしょうがなかった。



「リル、あんたの新技は確実に私達の中では、一番の破壊力よ」


「お、おう! これもダンジョンでサーチに相談にのってもらったおかげだ!」


 以前の長〜いダンジョンの旅館で、私はリルから「≪獣化≫(アーマード)してから≪全身弓術≫をしたらどうだろう?」と相談をされたのだ。

 だから「足を弓代わりにする感じで、両手で弦を引っ張ればスゴい威力になるんじゃない?」とアドバイスしたのだ。その後、矢を短槍に替えたりしてアレンジを加え、少し前に完成に至ったのだ。


「なるほど、それで最近はスパッツを履いていたのですね」


 ……両足を使って弓代わり……ということは、大股開きになるわけで……。

 最初に私の前で披露したとき、私がつい「おぅふ。大胆な紫」と呟いたのがしっかり聞こえてしまい……リルはスカートの下にスパッツを履くようになった。ちえ。


「……とりあえず解体する? ドラゴンの素材だから、高く売れると思われ」


 そ、そうだわ!


「こ、これで財政問題は一気に解決よ! 素材は当然高額で売れるし、討伐証明部位を持っていけばギルドからも報奨金がもらえるし……! うふ、うふふ……あはははははははは!!」


「おーし、さっさと解体始めるぞー」


「はーい。私は尻尾からいきまーす」


「私は爪を集める」


「私は角をやります……あ、サーチ。笑い終わったら頭をお願いしますね」


「ははは……へ? ……は、はい」


 何げに、一番難しい頭を私にまわしたわね……。



 それから三時間ほどかけて解体を行い、相当量のドラゴンの素材が手に入った。

 流石にドラゴンの臭いがプンプンしてるような場所に、モンスターが寄ってくるわけもなく……平和な時間が過ぎていった。


「うわ〜、血でベトベト……すぐにでも風呂に入りたいわ……」


「まったくだな。ま、あと少しで小さい村があるから、そこで宿を探そうぜ」


「そんな小さな村に温泉があるんでしょうか?」


「ある。この辺りはどこを掘っても湧くって言われるくらい、温泉が豊富な場所」


「多分ですが近くに火山があるのでしょうね。火山の麓には、よく温泉が湧く……と聞いた事があります」


 相変わらずいろんなことを知ってるわね……。


「その村へ向かいましょう。宿がなくても廃屋の一つくらい借りられれば、ずいぶんと楽だしね」


 風呂に関してはヴィーに頑張ってもらえば何とかなるし。何せ雪は大量にあるのだ。水には事欠かない。


「……ちっ。なかなか簡単には行かせてくれそうにないな。敵だ」


「何がいるかわかる?」


「クンクン……たぶん狼だな。二三十匹くらいいるかな」


 え〜……めんどくさいな。単なる狼だから経験値はもらえないし、多いから厄介だし……。

 周辺を見渡す。少し離れた丘に雪の吹きだまりを見つけた。


「よし、あれを有効活用しよう」


 炎熱石を利用して作った炸裂弾を取り出す。あの鬼才道具屋が作った簡易護符(シンプルアミュレット)をヒントに、私が作ったのだ。えへん。


「全員下がっててよ〜……ちぇいっ!」


 さっき見つけた吹きだまりに向かって投げる。


 ひゅ〜〜ん……ぼふっ


 よし! ナイスな場所にジャストミート!


「三……二……一……」


 ……どおおおん……

 ……ドドドドドドドドドドドドッ!!


「あ、雪崩が……」


 ドドドドドド!!

 あお〜〜ん……

 きゃぅぅん……

 ギャンギャンギャイーン……


「……よし、一掃できたわね」

「「「「…………」」」」


「……何よ、全員黙りこくって」


「……イヤな、つくづくサーチは血も涙もないヤツだな〜、と思って……」


 なっ!?


「どういう意味よ!?」


「どういう意味も何も、そのまんまじゃねえか。正面切って戦ってもらえずに、雪崩に巻き込まれて死亡って……狼が不憫すぎる……」


 全員がそろって頷く。エイミアなんかちょっぴり涙してるし。


「……ヴィーまで?」


「あ、え!? そ、その……深い意味は……」


「ああ、そうなんだ……ヴィーまで……ヴィーまで……」


「ちょ、ちょっと待ってください! 私はやっぱりサーチに味方します!」


「はいはい、ありがと。じゃあ先に進むわよー」

「「「は〜い」」」

「え? ………み、皆グルなんですね!? 私をからかったんですね!? ちょっと! 答えて下さいよ!! ねえってば!」


 ……全員必死に笑いを堪えていた。



 どうにか夕方には村に到着し、一軒しかない民宿に宿泊できた。

 ……ただ……。


「へ!? お、温泉がないっっ!?」


「すんませんなあ……。最近何故か、とんと湧かなくなっちまって……」


 そ、そんな……。


「な、何で急に……?」


「それがねえ……氷河の城壁(アイスキャッスル)が急にデカくなってきてから」


「ア……氷河の城壁(アイスキャッスル)が原因だとおおおっ!?」


 私はヴィーとリジーに、キッ! と視線を送る。


「今から出陣よ! 氷河の城壁(アイスキャッスル)を完膚なきまでに溶かしてやる!!」

「サーチ、流石にそれは……」

「一晩どころか一ヶ月くらい添い寝してあげるから!」

「リジー、行きますよ!」


「ヴィー姉!?」


「さあ、氷河の城壁(アイスキャッスル)に行って、生きて活きてイキまくりますよ! でも逝っては駄目です、氷を煎ってやりましょう!」


「ヴィー姉が壊れた!?」



 一時間くらいで諦めました……。 

 だけど氷河の城壁(アイスキャッスル)許すまじ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ