表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
324/1883

第四話 ていうか、結局泊まることになってしまいました……「ふんぬっ!」「ふんぬっ!」

「いえ、全々々力でお断りさせていただきます」


 私達はキレイに一礼して、その場をあとに。


「待ちなさい……ふんぬっ!」

「待ちなさい……ふんぬっ!」


 ……できなかった。

 ていうか、こいつら語尾に「ふんぬっ!」つけないとしゃべれんのか!?


「我らが旅館は……ふんぬっ! 他の旅館とは……ふんぬっ! 違う」

「望まれるなら……ふんぬっ! 我らのような……ふんぬっ! 肉体美を」


「結構です」

「現在の肉体で満足だ」

「胸以外はですよねあぎゃああ!」

「エイミア姉は一言多い……私も遠慮」

≪回復≫(リカバリー)……私も遠慮します」


 あの筋肉で顔だけエイミアって……想像したくない。


「そう言わずに……ふんぬっ! 体験してみなさい……ふんぬっ!」

「我らの旅館のプログラムは……ふんぬっ! ダイエット効果が」


「「「やりますっ!」」」


 ええっ!?


「ちょっと!? エイミアにリジーに……ヴィーまで!?」


「わ、私は二の腕が……」

「呪いを食べ過ぎた」

「私はサーチの為に……ゴニョゴニョ」

「……お前らなあ……あいつらみたいな、マッチョになりてえのかよ……」


 リルのため息まじりの一言に、三人は全力で首を横に振った。


「そりゃそうよね……エイミアやヴィーが筋肉達磨(あんなの)になったら、絶交しちゃうわよ」


「「はうっ」」


 はうっ?


「「気を付けます!」」


 な、何を……?


「そこの二人の方もぜひ……ふんぬっ!」


 そう言われてもねえ……。


「私は体型で悩んでないし……ていうか太るほど食べないし(・・・・・・・・・)


「「はうっ」」


 ……さっきから「はうっ」「はうっ」うるさいんだけど……。


「そうだな……私もすぐ痩せられる(・・・・・・・)し」


「「はうっ」」


「何なんだよ、さっきからはうはうはうはう……」


「ま、そういうわけだから……あんた達だけで泊まりなさいな」


 私とリルは、もう少し静かな旅館に泊まるからさ。


「「「そ、そんな〜」」」


「……バストアップも見込めますぞ……ふんぬっ!」


「私も泊まるぞ! ホントにバストアップするんだろうな!」


「ちょっと落ち着きなさいよリル! どう考えたって脂肪は削られるわよ? どうせ筋肉でガチガチにされるだけよ?」


「……そうなのか?」


「我らの……バストトップは……ふんぬっ!」

「余裕の100㎝越え……ふんぬっ!」


「お前らがバストトップって言うのは止めてくれ!!」


 お願いだから「胸囲」って言って……。


「大体なあ、胸が揺れなきゃ意味ねえんだよ!!」


「揺れますぞ……ふんぬっ!」


 ピクピク


「筋肉をピクピクさせてるだけだろがああああっ!!」


 ……ここ泊まったら、逆に疲れるだけだわ……。



「いらっしゃいませ……ふんぬっ!」

「ようこそおいでくださいました……ふんぬっ!」


 ……あんたらさあ……一応私達はお客様なんだからさあ……筋肉誇張するポーズよりも、頭を下げなさいよ……。


「えっと……こうですか? ふんぬっ!」


「エイミア、やらなくていいから……」


 マッチョホテルマンがペンと宿帳を持って私達のところに来る。相変わらずの危ない黒パンツだけど、意味のない蝶ネクタイが追加されていた。

 半裸のマッチョの蝶ネクタイ姿……一体、誰得?


「宿帳に記入をお願いします……ふんぬっ!」


「あ、はいはい……ペンをお借りしても?」


「どうぞ……ふんぬっ!」


 何でペンを貸すだけでポーズが必要なの……?


「じゃあ借ります」


 ズシンッ! めきっぼきっ


「きいいあああああああ!! ゆ、指が! 指が折れたああああ!」


「サ、サーチ!? 大丈夫ですか!?」


「ペンをどかしてええっ!!」


「ペンを……?」


 ずしっ


「な、何ですか、このペン!? めちゃくちゃ重い……! ヴィー、お願いします」


「重いって……本当ですね。かなりズシリときます」


 ヴィーがペンをどかしてくれた。

 い、痛い……!


「筋肉の基本は鍛練にあり! 文字を書く時も鍛練あるのみ……ふんぬっ!」


「こ、こんなクソ重いペンで文字が書けるかあっ!!」


 ヴィーが≪回復≫(リカバリー)で治してくれてる間に、マッチョホテルマンに食ってかかる。


「これぐらいで音を上げては……ふんぬっ! ダイエットは難しいかと……ふんぬっ!」


 そのペン持てるころには、腕の太さ倍になってるわよ!


「仕方ありません。私が書いておきます」


 私の指の治療を終えたヴィーが代わりに書いてくれた。


「……ほお……そちらの女性は見所がありますな……ふんぬっ!」

「我らと同じ境地に至れそうですな……ふんぬっ!」


「私が見所があるのですか……」


「……ヴィーがマッチョになるの? 止めてよマジで……」


「私は今のままでいいです!」


「そうか……残念ですな……ふんぬっ!」

「仲間が増えると期待したのですが……ふんぬっ!」


「ヴィーを巻き添えにしないでくれる!?」


「ああ……サーチが私の事を想って……やはりサーチは私の事を……ぽっ」


「すいませーん、ちょっと妄想に耽ってる娘がいるんですけど、ムキムキコースでお願いしまーす」


「サーチ!?」


「冗談よ、冗談……」



 その後、部屋に案内されたんだけど……。


「んぎぎぎぎぎ……! ドアが開かない……!」


 ……から始まり。


「な、何だこのポット!? 重くて持ち上がらねえぞ……!」

「んぃ〜〜〜! 蛇口が回らない〜!!」

「このスリッパ、片方だけで漬け物ができる気が」


 ……という具合で、下手したら移動すらままならない状態。


「そうですか? 普通に生活できますが……」


 ……ほとんどヴィーに頼らないと、どうにもならなかった……。



「はい、サーチ。あ〜〜ん」


 当然ながら、箸もスプーンもフォークも同じ超重量仕様で……持てない。

 そんなんじゃ食事も難しいので、手掴みで食べるか……。


「サーチ、恥ずかしがらなくてもいいんですよ。ほら、あ〜〜ん」


 ……ヴィーに食べさせてもらうか。


「ヴィー、いいから。私も手掴みで食べるわよ」


「……蕎麦をですか?」


 ……こういうときに限って、アツアツの料理が出てくるんだし……。

 リルは「熱いニャ!熱いニャ!」と叫びながら食べてるし、リジーとエイミアも悪戦苦闘している。


「ほら、サーチ。恥ずかしくなんかありませんよ〜〜」


 ヴィーはニコニコしながら迫ってくる。

 ……あーもう、わかったわよ!


「はいはい、あ〜〜ん」


「♪ ……はい、どうぞ」


 ………………美味しいわ。


「じゃあサーチ♪ 私にもくださいな♪」


 あんた問題なく、その重い箸持てるでしょ!


「サーチ、やってやれよ……」


 ……仕方ない。今日はヴィーに指治してもらったし。


「じゃあ目を閉じて、あ〜〜んして」


「は、はい……あ〜〜〜〜ん」


 ……口でかいな。

 入りそうね。


「えい」


「ぱく……んぐ」


「ホ、ホントに入るのね……生卵入れてみたんだけど」


「うー! うー!」


 あ、怒ってる。


「サーチ……そりゃねえぞ……」


 ごめんごめん、つい。


「んうーっ! んうーっ!」


「? ……どしたの?」


「えっと? ……喉に詰まったみたいです」


「ええ!? 割りなさいよ!」


「んぐぅーっ! んぐぅーっ!」


「えっと? 割れないみたいです」


「おい!? 顔色がヤバいぞ!!」


「サーチ姉、さっき飲ませたの茹で卵(・・・)


 げっっ!!


「ちょっとヴィー! 吐きなさい! 吐きなさいっての!」


 ばんばんばん!


 目一杯背中を叩きまくる!


「むぐぐぐ……ぷはあっ!」


 ぽんっ


「あ、出たあ! 良かった……ごめんなさいヴィー!」


「けほけほ……はあはあはあ……」



 ……一晩中、石化正座の刑になりました。

 一瞬だけど……楽器の大魔王が浮かんだのは、私だけかな……。


「……サーチ、反省してないようですね……」


「ご、ごめんなさいごめんなさいきいああああああああっ!!」

話が進まない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ