第四話 ていうか、エイミアの想い届いた。
フラグってあるよね。
戦地に向かう男の人が恋人に「戦いが終わったら結婚云々」なんて言うと、大体お亡くなりになる……ていうアレ。
……たぶん、これも同じなんでしょうか……。
「おい!昨日ドラゴンが何とかって言ってたのサーチだろ!」
「バカ言わないでよ! 言い出したのはリルじゃない! 大体さぁ、今更そんなこと言ったってどうしようもないでしょ!」
「二人とも! 言い争ってる暇があったらあれ何とかして下さい!」
「「何とかできるんなら逃げてない!!」」
ゴオオッ!!
「あちっ! 熱い熱いあちいいっ!」
「髪が! 髪の毛があああ!」
「あっつーい!」
ビキニアーマーだと尚更熱い!
とにかくブレスはヤバい! とにかく逃げの一手!
「全力全霊で戦略的撤退!」
まあ、何が起きているかというと。
……ドラゴンに追いかけられてます。
少ーし時間を遡ります。
夜の作戦会議。エイミアが着替えをしてる間に少しリルと話す。
「リルの……≪身体弓術≫だったっけ……射程ってどれくらい?」
「……ホワイトヤタを撃ち落とせってか?」
まあ実際に空飛ぶ相手への攻撃手段はリルの弓しかないし。
「あのなあ……地上にいる相手ならともかく、空飛んでるヤツを射るのがどれだけ難しいかわかるか?」
難しいよねー。前世でも散々狙撃で苦労したから……。
「だったら弓みたいに一点に攻撃を集中するタイプじゃなく、魔術の広範囲攻撃みたいなのがベストってことよね……」
まあそれしか選択肢はないよね、実際。
「となると……エイミアに頑張ってもらうしかないな」
話がそういう結論になった時に、タイミングよくエイミアが戻ってきた。
エイミアの≪蓄電池≫による攻撃で撃ち落とす、あるいは動きを鈍らせてリルの≪身体弓術≫で止めを刺す。この二段構えでいくことで決まった。
「うまくいくでしょうか……」
「まあこれ以外に方法がない、ていうのが事実だし……」
「やるしかないってことだ。悪いがエイミア頑張ってくれ」
「はい、わかりました」
次の日に備えて早めに就寝した。
朝。
日が昇ってすぐに行動を開始した。
「う〜ん……匂いがわかんねえ」
「となると……目視で確認するしかないわね」
……かなり絶望的な探索方法だわ……よく例えにある「砂漠で金一粒を探す」並みね……。
「ねえねえ」
「……なに? エイミア」
ものすごく不思議そうな顔をしたエイミア。
「空飛んでるホワイトヤタを探すよりも……地上に居る時を狙ったほうがいいんじゃないですか?」
まあ理屈上はそうなるけど。
「それができれば苦労はないわよ……」
「あの……ホワイトヤタも一応寝たりするときは飛びませんよね? 住み処とかは無いんですか?」
住み処!
そうか、その可能性があった!
「ホワイトヤタって確か小さくても3mはあるんですよね?」
そうだ。ホワイトヤタって結構大きいんだ。このあたりの樹では支えられないくらいの体重はあるはず。だから森は有り得ない。
「だったら住み処の場所は限られるな。この辺りの地形を考えても……」
「山頂近くの崖……辺りが怪しいわね」
「ちょっとした横穴でもあれば絶好の住み処です」
うーん。
早めに気づくべきだったわ。
「……リル! あそこ!」
目的地の崖の下に着いてすぐ、10mほど上にぽっかりと穴が開いているのが確認できた。
「おおっ! なんかそれっぽいな!」
リルも嬉しそうだ。
運が良ければ簡単にホワイトヤタを仕留められる……かも。
「あとは……どうやって誘い出すか、だな」
それは私に考えがある。
「任せて。これを使うわ」
そう言って私は丸い玉を出した。
「……何それ?」
「モンスターが嫌う匂いを出す草を乾燥させて丸くしたの。これに火をつけて巣穴に放り込めば……」
「なるほどな。でもどうやって放り込むんだ?」
リルの肩を叩く。あなたの出番よ。
「おい……まさか矢に括って撃ち込め、とか言わないよな?」
「そのまさか、よ」
「バカ言うな!そんな重いものムリに……」
その時。
『何か』がきた。
「……なんだ!?」
何これ……ものすごい重圧感……何か……とんでもないヤツが……近くにいる……!
「……撤退するよ!」
私の言葉にリルも頷く。
「ああ……これは……危険すぎるな」
そう言いつつ、荷物をまとめ始める。
……エイミア以外は。
「サーチ! 何かが飛んでいます!」
そう言って静電気を帯び始めるエイミア。
「ちょっ! 待ってエイミア、撤退……」
「我が想いよ、形となれ! 静かなる雷よ! 空を駆ける魔物に届け!」
少し遅かったあ!
「……ていうか、届いちゃだめええええええ!」
「わぶっ!?」
エイミアを抑え込む。
けど。
どおおおん……
「おい……当たったぞ……」
……。
……やばい……。
なんか下りてきた……。
「あれ……ドラゴンに見えない……?」
「……見えるな……」
「……誰か……耐性半端ない……て言ってなかった……?」
「耐性あっても……ダメージ0じゃないし……」
「…………」
「…………」
そして。
人間には聞こえない音域のドラゴンの叫びが轟く。
その凄まじい振動は人間以外の生物を戦慄させ、大地を震わせる。
その震動を合図に。
「「「に、逃げろ!」」」
……まわれ右した。
そして、現在。
こうして私達はドラゴンに追われることになった。
「ほ、ホワイトヤタってドラゴンだっんですね」
「んなわけないだろ!」
「ちょっと勘違いしました! てへっ」
リアルにてへペロしてる場合かっ!