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第三話 ていうか、キャンプ開始。

「びええええ……ぐすっ」


 あれから、まだ泣いてるエイミア。普通だったら、旅の途中で泣かれるなんて迷惑極まりないが……。


 ガサッ

 ガアアアッ!!


「人食いタイガーよ! エイミア気を……」


 バリバリバリ! どどーん!


 ギャイイイン……バタッ


「も〜……嫌! びえ〜……」


「……つけなくても平気ね……」


 …………。

 泣きながら出てくるモンスター一匹残らず黒焦げにする。……言っては悪いけど……たぶん八つ当たりだと思う。だけど非常に便利だ。


「あ、見えてきたわよ」


 町を出発してから約二日。予定より半日ほど余計にかかったけど、スパミーネ山の中腹に到着した。

 四、五日はこの辺りに滞在する予定なので、まずはベースキャンプを設営する。ま、設営するなんて言ったって難しいことじゃない。


 一、まずは一定の範囲に魔除けの聖杭を打ち込む。これで大体のモンスターは近寄ってすらこない。

 二、石を積んで竈を作る。鍋が置ければOKくらいのモノで良し。

 三、簡易テントを投げてほぼ終わり。


 遠征の間はお風呂事情が一番難しい。近くに綺麗な川や泉があるなんて稀だし。

 一応軽く水で濡らして拭くだけで簡単に汚れが落ちる「清洗タオル」なんていう便利道具がある為、匂いとかの心配はないけど……このあたりは気持ちの問題ね。やっぱり便利なタオルよりも気持ちいい水浴びのほうが勝る。

 ベースキャンプが完成したら、夕方まで各自でお仕事。

 リルとエイミアが周辺の探索。私がベースキャンプの警備兼夕食の準備。

 夕食は携帯食のかったいパンと干し肉、干し野菜を煮込んだ簡単なスープ。携帯食は一応一週間分は用意してきたけど、基本は現地調達。ホワイトヤタの探索と共に狩りもしないと。

 そう、携帯食はあくまで非常用。念のために、というものだから極力残さないとね……。


「調味料があればね、もっと幅が広がるのに……」


 この世界には塩と砂糖と胡椒があるのは確認してる。だけど砂糖と胡椒は高い。特に胡椒はバカみたいに高い。元の世界の「大航海時代」と同じ状態なんだと思う。

 ……というわけで基本味付けは塩。あとは近くで見つけたハーブで香りをつける。

 さーて、できた。



 いい匂いが漂って魔除けの結界の周りをゴブリンとかオークがフラフラしている。鬱陶しい。

 結界から出てサクサクとモンスターを狩っていると、リルとエイミアが戻ってきた。


「何ですか、このモンスターの集団」


「夕ご飯の匂いにつられて集まってきたみたいで……」


「結界入れば問題はないけど……目障りだな」


 そう言ってリルが近くにいたオークをぶっ飛ばす。


「もう静かなる雷も無くなりました……えい」


 静電気切れらしいエイミアは釘バットならぬ釘棍棒をゴブリンに振り下ろす。


 ばごっ

 ギャアアア!


 うわ、エイミアすげ。もぐら叩きみたくドッカンドッカンゴブリン叩いてる。


「……意外とエイミアって肝座ってるな……」


 無表情でゴブリンとオークの頭を砕く作業に没頭してる。


 ぱかぁん!

 オゲェェ!


 ……最後のゴブリンを叩き終えたエイミア。……うわあ…………血みどろ……。


「ふー……。結構レベルが上がりました」


 エイミア……血みどろでニコニコされても怖いだけよ……あ、リルもドン引きしてる。


「スキルも新しいものが増えました!」


 リルが魔法の袋(アイテムバッグ)をゴソゴソして、鏡を出した。


「エイミア」


「なに?」


 鏡を渡すリル。

 鏡を覗くエイミア。


「…………はぅ」


 そしてエイミアは卒倒した。



 エイミアが寝ている隣で夕食を済ませる。


「なんだこれ!? すっごい香りがいいな!」


 ……この辺りにいっぱいある草なんだけどね。


「で、どうだった? ホワイトヤタは」


 噛み千切っていた干し肉を置いて苦い顔をするリル。


「ダメだな。この辺り一体不思議な匂いに包まれてる感じで……さっぱりわからねえ」


 不思議な匂いって、もしかして。


「……まさか……この草の……」


 苦笑して顔を横に振る。


「安心しな。これくらいなら全然問題ない」


 そして難しい顔をして。


「たぶん……違うモンスターが彷徨いてるな」


 そう言ってリルはまた干し肉にむしゃぶりついた。


「……となると……まずは正体不明のモンスターを処理しないとね」


「ああ……でもな、間違いなく厄介なヤツだぜ」


「……ドラゴンとか?」


「……だったらマジで笑えねえ。パーティ(うち)で1番高火力のエイミアの電撃も効かねえからな」


 ドラゴンの耐性は幅広いからね。


「うう〜ん……血が……血が……」


 ……名前が聞こえたせいか、エイミアがまた魘されてる。仕方ない、流石にエイミアが可哀想ね……拭いてあげるか。


「この服は……さすがに洗わないとダメね」


 リルに手伝ってもらい、服を脱がせていく。


「ち……何でエイミアはムダに(・・・)でかいんだ……」


 ポツリとリルが呟いた愚痴は私も大いに共感した。はやく済ませて私達も身体を拭きますか……。

 すると。


「……何をしてるんですか」


 ピシリッ


 ……何だか空間に軋んだ音がした。


「な、な、何故私を裸に……!」


「エイミア、なんか盛大に誤解してない?」


「まずは落ち着こうな、な?」


 エイミアが静電気を帯びてパリパリいいだしてる……これはヤバいやつですね……。

 リルも……あ、なんか悟りを開いてる。

 私もそんな感じ。


「「何を言ってもムダだな」」



 いやああああああっ!!


 バリバリバリ! ずどーん!



「ねえ、リル……」

「なんだ、サーチ……」

「これも……パターン化してるわね……コホ」

「昨日の盗賊、笑えないな……ゴホ」



 次の日、誤解だと気づいたエイミアは日謝り倒した。

 ……アフロになった髪の毛はしばらく戻らなかった。

次回は結構バトります。

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