第二話 ていうか、夜の見張り。
夜、交代で見張り。最初はリル、中番が私、最後がエイミアだ。
「じゃあお願いね」
「先に休みますね」
「ああ。交代になったら声かける」
そう言ってお互いの簡易テントに入った。
簡易テントってのは普段は片手に収まるくらい小さいが、魔力を通して投げると広がるマジックアイテムだ。片付けるときも同じで、そのお手軽さがうけて冒険者の必需品となっている。
私は個人的にホイポ…………やめます。
「ん〜♪ ん〜んん〜♪」
リルの調子外れの鼻歌を聞きながら私は眠りに落ちていった。
ザンッ
「ギシャア……」
爪で最後のランドリザードに止めを刺した。
「ち……ザコしかいねぇな」
見張りを始めてからモンスターに襲われたのは二回。
一回目がゴブリンが三匹、二回目に今のランドリザードだった。正直物足りない。もう少し手応えのあるモンスターが来てほしいくらいだ。
ザクザクッ
暇なのでランドリザードを解体する。焼いて食べたいくらいだが……モンスターをわざわざ呼び寄せる必要はないのでやめとく。
しばらく解体に熱中していたので時間が過ぎるのが早いな。もう交代の時間だ。
解体したランドリザードの肉をサーチの魔法の袋に収納しといてもらわないとな。サーチのヤツ、最近までこの袋の正体に気づいてなかったらしい。昨日エイミアに指摘された時のサーチの顔……思い出しただけでも笑える。呆気にとられたってヤツだな。
さて……サーチを起こすか。
「サーチ、起きろ。お前の番だぞ」
テントの入口を捲る。
サーチは寝袋に潜ったまま出てこない。意外と寝起き悪いんだな。
「おい! 起きろ!」
「ん〜……あと十分……」
「寝惚けてんじゃねえ!」
仕方ない。寝袋から引き摺りだすか。
「起ーきーろー!」
そう言って寝袋の口を強引に開ける。
「ほらサー……!」
てっ!
えええええええええっ!?
「ちょっと〜……寒い……あれ? リル?」
わっ! たっ!
「何? どうしたのよ……あ、ごめん。交代か」
いや! あの! な、なんで!?
「……? どうしたのよ?」
「な、な、なんで服を着てないんだーーーーー!!」
あまりのリルの絶叫に耳が痛い。
「ちょっ……! 耳がキーンてしたじゃない!」
「そういう問題じゃねえ! は、早く服を着ろ!」
あ。
そういえば何にも着てなかったんだっけ。一応寝間着に着替えようとは思ったのよ。だけど面倒くさくなってつい……ね。
けどさ。
「意外と寝心地いいよ、これ」
「だ・か・ら……!」
なんて言ってると。
「な〜に〜よ〜……うるさ〜い……」
騒ぎで目が覚めたのか、エイミアが起きてきた。
うわ……さらに大騒ぎに……!
「……なんでサーチ裸?」
「え、ええっと……ね、寝やすいのよ!」
ちょっと無理があったか……!
「え? そうなの?」
シュル……
「「え゛っ!?」」
え、ええエイミアが!?
「私もやってみる……おやすみ……」
あちこちに服を脱ぎ散らかしながらテントに戻るエイミア。
「「……」」
唖然とする私とリル。
「リル……」
「な、なんだよ……」
「あの子……また成長してたわね……」
「あ、ああ……て、そうじゃない! サーチ、服を着ろ! で、交代だっつーの!」
「わかったわ」
ビキニアーマーを身に付けながら答えた。
……。
眠気も吹っ飛んだわ……。
交代してすぐ。
シュー…… シュー……
……蛇か……“不殺の黒剣”に手をかける。
……。
音を消して……近づいてきてる。
……。
……そこ!
ザクッ
シャアアアアアアアッ!
……離れたわね。いまの感触だと……。
……。
≪偽物≫で長めの針を作る。
……。
……。
一歩下がって……。
ザザッ
大体1m先かな……。
……。
……ふっ!
グチュッ
シャ……。
……。
仕留めた。
「うわー、大きいわねー……」
ダークスネークかあ……確か牙が討伐証明部位で……毒袋と皮が素材になるんだっけ。
「……ま、暇だし。解体してよかな……」
ふわあ……解体に集中してたら……あら!? 朝だ。
しまった……エイミアのぶんまで見張りしちゃった…………まあ、仕方ないか。起こそ……。
ザッザッザッ
!?
足音!
一……二……三……四。四人か。
盗賊ね、たぶん。朝っぱらからまあ……。
バサッ
……リルが気が付いてテントから出てきた。エイミアは……期待するだけ無駄か。
「リル」
「わかってる」
リルが木の枝に飛び移る。それからしばらくして。
「……へへ、獲物発見」
盗賊が、来た。
リルには……気付いてないわね。
「何か用?」
背後で≪偽物≫を使い、針を作る。
「ヒュー、ビキニアーマーだぜ!」
「誘ってんのか?」
私を見て嘲笑う盗賊。はーあ、さっくりと殺りますか。私が合図を送るとリルが動く。
「お〜は〜よ〜……」
うわ、タイミング悪っ! エイミアが起きてきやがった!
「どうしたの〜?」
……完全に寝惚け…………エイミア、あのまま寝たのね……。
「うお!」
「すげー!」
「こんないい女、なかなかいねえぞ!」
「いいおっぱいじゃねえか!!」
「……ふにゃ?」
あー……このパターンは……リルも逃げたみたいだし、私も逃げよ。
しばらく走ってリルと合流。
「そろそろだな」
「そうね」
……。
……。
きゃあああああああっ!!
ずどおおぉぉぉぉぉぉん!!!!
「「……やっぱり……」」
戻ると。
「うう……ぐすん」
半泣きになってるエイミアと。
ブスブス……
真っ黒焦げになってる盗賊がいた。
……。
盗賊四人は剥ぎ取れるものは剥ぎ取って、縛って捨てた。四人とも半泣きだったけど……自業自得ね。