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序章 ある渇望

文章を改訂。

 私はアサシン。

 東洋の島国で生まれ、大陸で育った。身寄りの無かった私は、ある組織に保護された。その組織こそが、アサシンの組織だった。


 保護されてからは毎日が訓練だった。

 ひたすら人を殺す技術を叩き込まれた。食事も。睡眠も。すべての生活が何もかも訓練。

 笑う、泣く、悲しむ、喜ぶ。すべて必要とされなかった。


 私みたいな子は他にもいた。同じ年頃の子もいた。

 でも、仲間ではない。友達なんてわけがない。ライバルなんて格好いいものでもない。

 ……全員が……敵であり。

 “糧”である。


 そう教えられた。



 私は戦った。

 必死だった。

 訓練とはいえ、武器は本物を使う。日々、怪我人がでる。いや、死人も当たり前だ。毎日毎日、私の周りの子達の誰かが死んでいく。

 ……私は死にたくなかった。だから殺した。


 そんな殺戮が十数年も過ぎた頃。

 生き残っていたのは私を含め数人だった。



 私は組織からの任務を遂行するために生きた。名前はない。任務の度に仮の呼び名が与えられる程度だった。

 ただの道具だった。

 いつかは、使い捨てられることはわかってた。

 でも、私には人を殺すことしかできない。

 ……組織しか、私の居場所はなかった。



 任務の間にも、稀に暇がある。そんな時に様々な文化に触れた。幼い頃からの訓練では決して触れることのなかった娯楽が、少しずつ私を変えていった。



 狙撃の為にある高級ホテルに宿泊していた時。予定の時間までまだ余裕があった私は、なんとなくテレビをつけた。ちょうど芸能人の水泳大会が放送されていた。ビキニを着て、楽しそうに駆け回るグラドル。


 ……羨ましい。


 不意にそう感じた。


 訓練は苛酷だった。当然、身体は筋肉質になる。脂肪の塊である胸なんて、とっくの昔に萎んだ。

 男みたいな硬い胸板があるだけだ。


 ……羨ましい。

 あんなビキニを着てみたい。

 ゆっさゆさと胸を揺らして走ってみたい。

 ……羨ましい。


 あまりにも集中して観ていたせいで、危うく狙撃し忘れるところだった。



 それからまた十数年が過ぎた。

 私は裏の世界では知らない者はいないくらいの存在になった。だけど組織にしてみれば、存在が知られ過ぎたアサシンなんて不用だ。年齢的にもそろそろ限界が近い。処断すべき、という決定が為されても不思議ではなかった。


 でも、私の行動のほうが早かった。



「……ぐっ……」


 針で頭蓋を貫かれ、彼は倒れた。


「……お、終わった……」


 私は組織に牙を剥いた。

 どうせ処断される運命だ。生きるために私は戦った。


 いま、組織のトップを殺した。

 私は勝った。

 だけど。


「……ぐぶ……ゴボッ」


 大量の血を吐いた。

 ……私も致命傷を受けていた。



 あーあ。

 なんて人生なんだろう。


 良い様に利用され続けた人生。

 最後に反抗してみたけど、結局自由にはなれなかった。


 あーあ。

 馬鹿みたい。


 ……ふー。

 もう、痛みも感じないなあ。

 もう、死ぬんだなあ……。



 そうだ。

 来世。

 来世こそは、巨乳になってやる。

 ビキニを着て、はしゃぎまわって。


 面白い人生を送ってやる。

 絶対に。


「……絶対に……ね……




 こ…………う…………み…………ご……め……。

はじめまして、絵馬寿と申します。

駄文ですがよろしくお願いいたします。


次回からは少し明るい雰囲気になります…多分。

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