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第二十五話 ていうか、さらば、新大陸!! さらば、竜の牙折り……ええっ!?

 ちょーっとムチャな日程ではあったけど、何とか今日までに物資の調達を完了させた。

 装備品の修理や、消耗品の矢や投げナイフの補充も終わった。

 ちょうど明日の出航予定だった定期船のチケットも手に入れた。

 何故か私以外が異様に張り切っていたのが、気になってはいたんだ……。

 そう、気になっていたのよ!!

 ……考えが至らなかった私がバカだった……。



「……干し肉と干し野菜、あとはお米っと……。リル、いまの私達には無限の小箱(アイテムボックス)があるんだから、保存食じゃなくても大丈夫よ?」


 ぶっちゃけレストランとかで頼んで作ってもらった料理を、そのまま収納して持っていってもいいのだ。

 何せ無限の小箱(アイテムボックス)の中は時間が停止しているのだ。腐ることはないし、冷めることもない。


「……そうしたいのはやまやまなんだが…………干してあるのって安いんだよな」


 ……ああ、金銭的な問題なら仕方ないわね。新鮮な野菜はまだストックがあるから必要ないし。


「そんなに野菜が残ってるんなら干し野菜も必要ないんじゃないか?」


「干し野菜はスープなんかには重宝するのよ。新鮮な野菜はそのままサラダにしたほうが食べやすいし」


 考えようによっては、干し野菜は前世にあったフリーズドライに似ている。そのまま鍋にぶち込むだけでいいってのは、やっぱ楽なのよね。


「そんなもんか……お、エイミアも来たぞ」


「すいません、お待たせしました……。はい、サーチ。これがサクランドの領主さんからの推薦状です」


「ありがと。エイミアに伝があってくれたおかげで助かったわ」


 さすが貴族……元だけど。


「いえ、大した事じゃ無いですから……でもその推薦状が何か役に立つんですか?」


「ま、後々ね……ていうか、早く終わったわねえ……ヴィーとリジーも戻ってきてるし」


「……ん? じゃあ全員揃ってるのか?」


「ええ。あとは夕ご飯を早めに食べて……街にでも繰り出しますか」


「ちょっと待っててくれ。エイミア、ヴィー達を呼んできてくれ♪」

「はい♪」


 ……ん?


「……あ、おかえりリル姉、エイミア姉。早くて助かった♪」


「本当にそうですね。午前中からあちらこちらに奔走した甲斐がありました♪」


 ……??

 何でみんなの会話の語尾に♪がつき始めたのかしら?


「よし、それじゃ……」


 ♪の理由は、すぐにわかった。


「「「「サーチ先生、よろしくお願いいたします」」」」


 ………………………………へ??


「…………な、何か?」


「何言ってんだよ!! 昨日言ってた太ももの……」

「「二の腕の……」」

「お腹周りの……」


「……へ!? きょ、今日からやるの!?」


「「「「当たり前」です」だろ」でしょう」


 ……マ、マジか。

 まだ何も考えてなかったわよ……。


「「「「よろしくお願いいたします!」」」」


 ……とはいえ……「まだ未定」とは、口が裂けても言えないわね……。


「……わかったわ」


 とりあえず基本的なヤツを叩き込めばいいか。



 ……甘かった。


「いだいいだいいだいっっ!!」

「無理です無理です無理です無理ー!!」

「んのおおおおおおお〜……」


 こいつら揃いも揃って身体がガチガチに硬い!


「何でこのポーズができねえんだ、お前ら」


 ちゃんと身体を毎日伸ばしていたリル以外は全滅。

 基本的なヨガを教えただけなんだけど……これは頭が痛い……。


「……あんた達、肉弾戦もするんだから……ちゃんと毎日身体を解しておきなさいよ……」


「め、面目ありません……」


「……ヴィーは蛇なんだから、特にさ……」


「そ、そんな! 偏見ですよそれは! 蛇系のモンスターだからって全員身体が軟らかい訳じゃありません!」


「やかましいわ! あんまり屁理屈を言うのなら変態骸骨(リッチ)と魅惑の七日間を過ごしてもらうわよ!!」


「嫌あああああ!! わかりましたから、それは勘弁して下さあああい!!」


「だったらムリヤリでも軟らかくなりなさい! ふんっ!」


 ばきっ! ゴキゴキゴキぐきい!


「はみゃああああ!!」


 どんだけ硬いのよ! ちょっと背中押しただけで、この音なの!?


「はぅあ! 痛い痛い痛いー!!」


 ……あれ?


 ぐいっ!!


「ひいいいあああああ! 折れる折れる折れる折れ……あれ? 痛くない?」


「……何よ、どしたの……私より軟らかいじゃないの……」


 さっきまでカタカナの「ヒ」だった人が、いきなり180°開脚して上半身がペタッて……!


「あ、あれあれあれ? こんな事もできます……」


 ……イナバウアーをしてから股の間に頭通しやがったよ……。


「……やっぱ蛇のスペックはあったわけね……たぶん、人間の関節に慣れすぎてたんだわ……」


 骨の構造そのモノが違うんだろう。

 ……ってすげえ。首を180°回転させたよ……。


「良かったわね……それだけ軟らかければ戦闘にも活かせるわよ」


 前の世界だったら、びっくり人間大賞に出れるわよ。


「身体が軟らかいとそんなに違うんですか〜?」


 さっきまでのヴィーみたいに、「ヒ」で苦しむエイミアが聞いてきた。


「そりゃあ、ね。攻撃の回避もバリエーションが増えるし、関節が軟らかいってことは武器をスナップしやすいし」


「へえ〜……」


「……あのね、あんたみたいな打撃武器には特にスナップは重要なのよ? わかってる?」


「…………サーチ……スナップって……?」


 がくっ


「……あんたもヴィーレベルまで、がんばってもらうわよ」


「え!? 無理ですよ」


 ぐいっ!!

 めきめきみしみしっ!


「あきゃああああああ!!」


 ……しばしエイミアの悲鳴が響き渡った。

 ちなみに、こんなムチャな方法で身体が軟らかくなることは……ない。


「見てくださいサーチ! 肘の関節も逆に曲がるようになりましたよ!」


 ……前言撤回。ヴィー以外は。



 ザザアアン……


 ……久しぶりにちゃんとした(・・・・・・)海を見た気がするわ……。

 汚泥内海(マッドインランドシー)みたいな茶色い海を見た後だと、余計に青い海が目に沁みる。


「サーチ、何を黄昏てるんですか! 早くしないと船が出ちゃいますよ!」


 あーはいはい。

 別に黄昏てたわけじゃないんだけどね。


「何言ってんだよエイミア。サーチが黄昏るなんてタマかよ「茶番ストラッシュ!!」ぅぐっふぅ!!」


「……その通りなんだけど、言われたら言われたでムカつくわ」


「リル!? しっかりしてリル……あああ早くしないと遅れちゃうううっ!!」


「そんな極端な……」


「何が極端なんですか! もう錨を上げ始めてるんですよ!!」


 あ、それはマズい。


「急ぐわよ!」


「え!? ちょっと!」


「ヴィー、リルをお願い!」


「……サーチも少しは考えてからぶん殴って下さいね?」


 すいませんね。


「それと茶番ストラッシュって何ですか?」


 ……必殺技……かな?


「それはさておき……リルだって軽いわけではないのですからねっ! よっと」


 ていうか片手かよ!

「軽いわけではない」とか言いつつ余裕だな!


「ていうか、間に合わないかも……!」

「大丈夫ですよ! リジーがいますから!」


 いやいや、リジーだから危ないんじゃ……!



 ずごおおおん…………



「!? わ、私達の乗る船ですよ、あれ……」


 やっぱりリジーは一人にしちゃダメだああ!!


「ちょっ! 船が傾いて……!」


 あんのバカ……!


「ヴィー! エイミア! 速攻でリジーを確保して逃げるわよ!」

「「了解!」」



 ……当然の如く、逃げる前に捕まることになり。

 いつぞやのエイミアのように、今までの稼ぎは船の弁償代として消えることになる……。



 ……ついでにギルドからも制裁を貰うハメになり……竜の牙折り(ドラゴンブレイカー)じゃなく、船の底抜きボトム・フォールアウトにパーティ名を変更させられた……。



閑話をはさんで新章です。

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