表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
296/1883

第二十三話 ていうか、またまた温泉回!?

 お風呂から上がると、恥ずかしまぎれの勢いのまま、酒盛りへと突入した。

 その流れにリルとエイミアは嬉々として乗っかり、やがてリジーを巻き込み、ヴィーも巻き込み……夜半過ぎ辺りからの記憶がとんだ。


「……ううん……」


 ま、眩しい……。

 みんなを酔い潰してから一人で飲んでたけど……私も寝ちゃったみたいね……さて、起きますか……ん?


「……あれ? あれ?」


 か、…身体が動かない?

 な、何で? あれ、あれ?


「ん? 待てよ……もしやこれが『金縛り』!?」


 をを! 人生初金縛り!

 前世ではなったことなかったから、どんなんだろうな〜って思ってたんだけど。思ってたより締め付け感が強いわね……何かロープでぐるぐる巻きにされてる感じ。


「どうすれば治るんだろ……ひゃう! うひゃい! ひう!」


 こ、今度は身体のあちこちがくすぐられてる……! ていうか、変なとこ触るんじゃない! こ、こら……変な気分になる……じゃなくて!

 金縛りで身体がくすぐったくなるなんて、聞いたことないわよ!


「この! この! むう、少しだけなら動くかな……ん?」

「シャ?」


 布団の中から、何か長いモノがにょろにょろと這い出てきた。ていうか、蛇よね? 蛇ってことは……。


「……あんたヴィーの蛇?」

「シャシャ!」


 頭を縦に振る。たぶん「そうだ」と言ってるんだろう。


「……なら本体(ヴィー)は?」


 質問に反応するように、蛇は布団をずらす。そこにはぐっすりと寝入っている本体(ヴィー)がいた。


「……なるほど……これが金縛りの正体ね……」


 ……私の全身に蛇を巻きつけ、抱き枕代わりに私を両手でガッチリとロックしていた。身体がくすぐったくなったのは、蛇の舌だろうな。


「……あんた達、今すぐ私から離れなさい」


「シャ〜♪ シャシャシャ♪」


 ……離れる気はないってか? 完全に面白がってるわね。


「……≪毒生成≫でナメクジの成分を作れるかな……」


「「「シャッ!? シャアアアアアア!!!」」」


 あ。蛇だけど脱兎の勢いで逃げ出した。蛇、蛙、ナメクジの三竦みってウソだって聞いてたけど……こっちの世界では該当するみたいね。


「……たく……何かベトベトするからお風呂行こうかしら……」


 脱ぎ捨ててあった浴衣を着る。あ、まずは下着を……ってあれ? この黒いのは私のじゃないけど?


「これって……ヴィーのよね……あらら」


 ヴィー……そういえば酔った勢いで、ストリップショーをやってたわね……。


「……風邪ひくわよ……まったく……」


 とりあえず布団をかけてあげようと思い、ヴィーに近寄ると。


「……ふぁ……あれ?」


 ……ねえ、なんでこのタイミングで目が覚めるかな……?


「さ、サーチ! いつも言ってますけど、ちゃんと服を着てくださいよ!」


 ……この状況下……妙な疑いをかけられることは確定なわけでして……。


「あれ? 何故サーチが私の下着を持って……って、ん? ……っ!!」


 ……ヴィーが布団で自分の身体を隠し、片手を振り上げるわけでして……。


「いやああああああっ!! セクハラ許すまじぃぃぃっ!!」


 ばっっちいいいいん!!


 ……≪怪力≫の発動したビンタで、意識が飛んじゃうわけでして……がくっ。



「すみませんでしたっ!! 本当に申し訳ありませんでした!」


 またまた露天風呂。

 私が一撃でノックアウトされてた間に、蛇達が本体(ヴィー)に事情を説明してくれたらしい。私が目を覚ますころには疑いは晴れていた。

 で、先程からヴィーが私に謝り倒してるってわけなんだけど……。


「別に気にしてないわよ」


「いえ。私は誤解してとんでもない事を……」


 ……下手にマジメだと、思い詰めた時は厄介ね……。


「本当にいいって。ヴィーが酔っぱらったおかげで良い思いもできたし……」


「良い思い……ですか?」


 こういう場合は、笑い話ですませちゃお。


「そ。ヴィーが抱きついてきたからさ、感触はサイコーだったわよ〜」


「!!!」


「私はそっちの気(・・・・・)はないけどさ、ちょっとグラついたよ……ってあれ? ヴィーどしたの?」


 さあ、ここから笑って「そんな、またまた〜」で終わる……というタイミングだったのに、ヴィーは真っ赤になって俯いてしまった。


「あれ? ヴィー? もしもーし」


「……申し訳ない……」


「……はい?」


「……申し訳ないんですけど……私には好きな人がいまして……」


 ……へ?


「サーチの事は……実は好きなんです……だけど、私の中では魔王様の占める割合が圧倒的なんです」


 …………な、何か爆弾発言を始めちゃいましたけど……。


「で、でもサーチが望むなら私を抱」「ちょーっとストップストップ!!……少し向こうへ行こうか!」


 ……やべやべ……話を聞いてた他のご婦人方の視線が痛かったよ……。

 少し離れた場所に移動した私達は、周りからは影になる岩の裏に回った。


「……大丈夫ね……ヴィー、ちょーっと落ち着こうね?」


「何を言ってるの()すか。私は酔っていません」


 ……ん? れ?

 ていうか酔ってないって……。


「まさか……あんた、まだ酒残ってるの!?」


 それで妙なことを口走ったのか!!


「酔いを覚ましなさい! ヴィー、聖術に≪解毒≫ってあるでしょ?」


「ありますよぅ……≪解毒≫(デトックス)


 ヴィーは自分自身に聖術をかけ、体内のアルコールを分解する。

 一応アルコールも解毒できる……はず。


「う〜〜ん…………あ、サーチ。何だか頭がスッキリしました」


 ……酔いが覚めた……のかな?


「……私は……いつからお風呂に入っているのでしょう?」


「……昨日の夜にかなり飲んだの、覚えてない?」


「あ、はい。あまり飲まないように気を付けていた……と思います」


 ……最初から大ジョッキ(っぽい木のコップ)を一気飲みした人が言うセリフじゃないよね。


「……慎重に酔わないようにしたつもりだったのですが……やはり私はお酒には弱いのですね……」


「いやいや、あれだけハイペースで飲めば、誰だって酔うと思うよ!?」


 私以外はだけど。


「そ、そんなにハイペースでしたか……」


「私のペースに釣られたのね…………ヴィー、何か普段から溜め込んでることがあるんじゃない?」


「へ? べ、別に溜め込んでなんていません!」


 ……顔にもろ出てるんですけど……ちょっとつついてみるか。


「……ソレイユに関することとか……」


「ひう!! ままま魔王様になな何も思うところはありません!」


「……好きな人に関することとか……」


「ひゃう!! 何もにもにもありません!!」


 にもにもって……。


「ふーん……ならいいけど……」


「……ほっ……」


「ま、私のことも好きだって叫んだことは黙ってようかな〜」


「はうっ!? |%≧∞〆√∀@¥>〜〜!!」


 顔を真っ赤にして何か叫んでいるヴィーに止めを刺すことにする。


「……観念しなさい。さっきまでヴィー自身が話してたことよ」


 ヴィーは顔をゴシゴシしたり、手をわたわたと振ったりしていたけど……やがてカクンと頭が下がった。降参みたい。


「……お願いですから魔王様には……」


「言わないわよ。ヴィーのことだから、ずっと秘めておくつもりだったんでしょ?」


「…………はい…………〝繁茂〟様もいらっしゃいますし……魔王様にバレて嫌われるのは耐えられませんし……」


 ……ソレイユはそんなことでヴィーを手放すほどバカじゃないと思うけどね。


「……それと……私のことを好きだって……」


「ちょちょちょちょっと待って下さい!! これはその………………ひくっ」


 ふえっ!?

 ヴィーが泣き出した!?


「やっぱり気持ち悪いですよね……同性が好きだなんて変ですよね……。だけど……お願いです……お願いですから……嫌わないでぐだざい゛……うわあああああん!」


「ちょっとちょっと! 私がそんなことで嫌ったりするわけないでしょ!」


「……え?」


「……はあ……別にヴィーは恋愛感情じゃなく友達としての『好き』なんでしょ?」


「!? は、はい」


「なら全然いいじゃない。私は大歓迎よ。私もヴィーのことは大好きよ」


「………………何だ………………そうだったんですか……ふぅ」


 ヴィーは落ち着きを取り戻したらしく、普段の笑顔を浮かべた。


「すみませんでした。少し取り乱しました」


「別にいいわよ。もし何かあったら私に話しなさいよ。話すだけでも、案外スッキリするものよ?」


「そうですね。私も身に沁みました」


 ヴィーは立ち上がり、湯船から上がる。


「サーチ。ありがとうございました……これで吹っ切れました(・・・・・・・)


 ……?


「……まあ……良かった良かった」


「そうですね……では失礼します。愛してますよサーチ」


「あーはいはい。私も愛してる」


 ヴィーが離れていく水音がした……と思ったら、また戻ってきて。


「どしたのヴィー……わ」


 ヴィーが背後から私の首に手を回した。

 そして、私の左頬に温かい感触。


「……サーチ……ありがとう」


 と言ってから。


「……覚えておいて下さい……蛇は執念深い(・・・・・・)んですから」


 と言って離れていった。


「しゅ……執念深いって……」


 ……どういう意味でしょうか?

ヴィーの種族であるメドゥーサは、恋愛には非常に寛容な種族です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ