第二話 ていうか、パーティの結束って不毛?
「ん〜と、大体の話はわかったわ。ていうか、聞けば聞くほど、私達だけでどうにかなる問題とは思えないんだけど……」
「それはそうです。但し、世界の命運を握っているのはサーチだという事もお忘れなく」
………………はい!?
「何でそうなるのよおおおおぉぉぉぉっ!!」
「だからヴィーが何回も言ってるだろ。三冠の魔狼の刺青を持つお前が、何かしらの鍵を握ってるんだって」
……つまり……これって……。
「……ただ単に……巻き込まれただけ……?」
「「…………はい」」
「のおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
え、えええ!?
何で!?
私はこっちの世界で面白おかしく生きたかっただけなのに……! どうしてこうなっちゃったのよおおお!
「サーチ、落ち着いてください。私達がいるじゃないですか」
「……エイミア」
気持ちはありがたいけど……。
「……流石に今回のことは……今までの比ではないくらい危険なことだし……」
「何を言ってるんですか! 私はサーチに何が何でも協力します!」
「エイミア?」
「私は誓ったことがあるんです。それは……サーチ達が私に協力を求めたなら、どんな事でも協力しようって。例え世界を滅ぼすから手伝って、と言われても」
「エ、エイミア……?」
な、何かこの子、スゴい発言を始めたんですけど……!
「私は皆に命を助けてもらいました。その時から私の命は、皆と共にあります! だから……サーチが困っているんなら全力でサポートします!」
エイミア……!
「……何か熱烈な愛の告白を受けた気分だわ……」
「えっ!! ちちち違いますからね!? そういう意味で言った訳じゃ無いですからね!」
「おいおい、エイミアこそ落ち着け…………おい、サーチ。私も忘れんじゃねえぞ。とことん付き合ってやるさ」
「リル……!」
「もちろん私もお供させていただきます。新入りだからって爪弾きは許しませんから」
「ヴィー……!」
「……以下同文」
かくっ
思わずズッコケる一同。
リジー……あんたはブレないわね……。
「……わかったわ……私も腹を括る……世界なんてどうだっていい。仲間を守るために……戦うわ!」
「「「「サーチ……」」」」
「ありがと、リジー」
ぎゅっ
一人一人ハグしていく。リジー……あんたとはいい勝負だから……もうすぐ追いつくわよ。
「ありがと、ヴィー」
ぎゅっ
……くっ! 強敵がまた現れたわね……!
「ありがと、エイミア」
ぎゅっ
………………あんたには勝てる気がしないわ…………。
「ありがと、リル」
ぎゅっ
……ふふ……。
ふはははは……。
あはは「はははははははは!!勝ったわ勝ったわ楽勝ごふぇっ!?」
「途中から声に出てるんだよ! つーかお前の表情を見てれば、何を考えてハグしてるか丸わかりだ!」
す、すいません……。
……何はともあれ、結束の固さを再確認できたはいいけど……。
「……団結できたからって事態が好転することはないもんね……」
「……ですね……」
「一番事情に通じてそうなソレイユにも参加してもらいましょうか」
「……そうですね……そうしましょう。魔王様には私が」
「お願いね、ヴィー。あと協力を頼めそうなのは……」
「あの……サーチがいた孤児院で院長先生をなさってたていう……」
「ああ、〝飛剣〟のヒルダか」
「そうです! 協力してもらえませんかね?」
「院長先生かあ……居場所さえわかれば協力してもらえるんだけどね……」
「え? 居場所って……メイドとして働いてるんじゃ……?」
「……とっくに辞めてどこかへ行ったわよ……」
〝刃先〟と二人であれだけ帝国軍に大被害を与えたんだから……帝都にいられるわけないしね。
「え……じゃあ〝刃先〟も……」
「当然消えたわよ。ギルドに聞いても『突然辞めると言って消えたきり見ていない』だったし」
「そ、そんな〜……」
「ならリフター伯爵夫人を召喚する」
ぎくっ。
「ま、まったく戦力にならない。問題外。よって却下」
「……何で?」
「前も言ったけどね、リファリスは対集団戦が専門なの。相手が一人……ていうか一匹なのが確定してる戦いじゃ、戦力外は確定ね」
「うーん…………でも、一応異名まである冒険者だし」
「はっきり言うわ。一対一のリファリスは、≪蓄電池≫なしで目隠ししたエイミアでも勝てるわ」
「………………ならいい。いるだけ邪魔」
その方が賢明です。
するとリルがため息をついて、一言。
「すっげえ極端な冒険者だな……」
まったくだよ。
ていうか、極端なのは性格も、だからね。
「……リファリスがリファリスたる所以よ。あの能力は異質過ぎるわ」
結局話は行き詰まり……「ソレイユが話に参加しないと、進展しそうにない」……ということで。
「……何で私達、まったりとお茶飲んでるのかしら……」
「仕方ねえだろ……あれから三時間、真っ昼間から旅館に籠って会議して何にも進展がないんだから。何か一日ムダにした気分だぜ……」
……確かにムダにしたわね……あ、このお茶おいし……。
「……一番サーチがまったりしてませんか?」
「え? マズい?」
「いえ……別に……」
……何か不満そうだけど……放置。
「そうだ。サーチはもう三冠の魔狼とは会話してみたのですか?」
「……とっくに。まったく反応がないわ」
「……そうですか……」
「……あ、もう連絡してたんですね……」
……エイミアが不満そうにしてたのはこれか。
「エイミア……あんたが気にしだす二時間くらい前から、連絡を試みてましたから」
「あ、そうですか……失礼しました」
バンッ!
「ごっめーん! 遅れました〜…………ってあれ? 皆どしたのかな〜? タヌキにつままれた様な顔して?」
……たぶんエイミアだけ「ナイスタイミング!」と思ってたでしょうね。
「何でもないわ。ただ話が行き詰まってただけ」
「? まあいいけど……で、アタシに聞きたい事って何?」
「そうだ、サラッと流すとこだったわ! 何なのよ、タヌキにつままれたってのは!? キツネでしょ!」
「「「「「…………は?」」」」」
な、何よ。
「……今の私達がタヌキにつままれたような感じだよな……」
「何ですか、キツネにつままれたって……」
「……モンスターでも『タヌキにつままれた』とは言いますが……流石にキツネは……」
「サーチ姉……意味不明」
へ? へ? 何で? どういうこと?
「……あ、そうか」(サーチ、もしかして前世の場合はキツネが入った慣用句になってた?)
(え? もしかしてこっちの世界だとタヌキなの!? し、知らなかった……)
(なーるほど……でも、誤魔化しようが無いねぇ)
うっ! 確かに……。
でも「間違えちゃった!テへ☆」なんて死んでも言いたくないし……。
「でもキツネって……クスクス」
「考えてられねえよな……クスクス」
「笑っちゃ悪いですよ……クスクス」
「抱腹絶倒……あはははは」
………………。
(ソレイユ……避けてね)
(……はいはい……手加減しなさいよ)
「…………羅王超強拳」
どっっかあああああああん!!!
「「「「うぎゃあああああぁぁぁぁぁ………………」」」」
あ、どこかへ飛んでった……。
「ねえ……今の」
「ん? 何よ」
「……どこかで聞いたことがある名前の技……」
……似たような名前の技あったかな?
「何かでっかい飛び道具が飛んでったけど……どういう原理?」
……さあ?
謎の技が生まれた。