表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
273/1883

閑話 リファリス・リフター伯爵夫人…もとい女王様の憂鬱

「……ウフフ……可愛い子が三人も……ウフフ……」


 念話水晶での連絡を終えた後、一人でほくそ笑んでいた。

 最近は性癖が広く知られてしまい、警戒する人が増えてしまった為に……あたしの前に女の子が現れる率が格段に下がってしまった。

 中には自分の娘を差し出してきて「どうか便宜を図っていただきたく……」とか抜かす馬鹿もいる。そういう場合は便宜を一切(・・)図らずに、娘だけ頂くようにしている。


「……リファリス様、ソサエト侯爵閣下の配下の方がお見えですが……」


 そうして頂いた娘の一人、エリザがあたしに声をかけてきた。

 エリザはこの屋敷に来てからはメイドとして仕えてくれていて、現在はメイド長を務めている。

 頂いた女の子は何故か、あたしの家のメイドとして居座ることが多い。


「わかったわ……たぶん夕食までには戻るから、そのように準備しといて」


「畏まりました」


「……近いうちに皆を集めて夕食会(バーベキュー)をしましょうか」


「畏まりました。皆喜びます」


「段取りはエリザに任せるわ……じゃあ行くわ。あまりお客人を待たせるとソサエトの爺様がうるさいからね」


「そうですね」



 ソサエト侯爵の配下……というより「パシり」と化しているミハエル坊やの案内で、帝都のある場所へと向かう。


「……何? あたしの顔に何かついてる?」


「え!? い、いえ、何でもありませんゴニョゴニョ……」


 ……何故ソサエトの爺様がこの坊やを、あたしの専属使者として遣うのか理解に苦しむ。まだ十代前半と若く経験の浅いこの坊やは、あたしを見る度に真っ赤になって口ごもってしまう。会話にもなりゃしない。

 その事をエリザや屋敷の者達に話すと、全員生暖かい目であたしを見て「……リファリス様がリードしないと……」と忠告してくる。意味がわからない。


「あ、あの!」


「だから何?」


「ちちち近々、夕食会(バーベキュー)を開催されるそうで……」


「……そうよ」


 また屋敷の誰かがミハエル坊やに喋ったわね。


「ぼ、ぼぼぼボクも……」


「来たければ来なさいよ。貴方に開かない門は我が家には無い、と何回言わせる気?」


「すすすいません! …………そそそれで……ボクは……は、はくはくはく」


 ……面倒ね。


「いつものようにあたしの隣に座りたいのでしょう? あたしの隣は貴方の為にいつでも空けてある、と何回言わせる気?」


「すいませんん!! じゃなかった、ありがとうございます!!」


 エリザ達に言われなくても、ちゃんとリードしてあげてるわ。侯爵の使者として(・・・・・・・・)の待遇(・・・)できちんと接しているわよ。

 ……だけど……「リファリス様はそちらの方面には疎いのですね」と言われる。メイドなのに主人に向かって失礼なことばかり言うのよね、ウチの屋敷の場合は。



「……(わたくし)がですか?」


「うむ。そうなる公算が高い」


 ミハエル坊やに案内されて着いた、改革派がよく秘密の会合を開くソサエト侯爵の別荘。

 そこで爺様から言われたのが……。


「近いうちに保守派が蜂起する可能性がある。その場合はリフター伯爵夫人だけで(・・・)処理してほしい」


「……(わたくし)だけで? 何故?」


「軍を動かしたいのはやまやまなんじゃが……内部に間者がおるやもしれぬ」


「あら。間者の一人や二人、爺様が気になさるような事じゃありませんこと?」


「……その気色悪い喋り方は何とかならぬのか。普段通り話さんか」


「……気色悪いっていうのは聞き捨てならないわね……あたしだってTPOってモノがあるんだから。少しは貴族的対応にも慣れないとダメなのよ」


「はっはっは……お前からTPO等という言葉を聞く事になろうとはな」


「うるさい、クソジジイ! とにかく始末すればいいんだな?」


「そうじゃ。久々に暴れられるぞ?」


「……あのなあ……人を血に飢えた獣みたいな扱いしないでほしいな」


「何を言うとる。すでに極上の笑顔(・・・・・)になっとろうが」


 あら、本当に?

 やっぱり血に飢えているのかしら?



 爺様の予言が的中した。

 分が悪くなった保守派の残党が帝都から脱出し、少し離れた山岳地帯にある砦を占拠したのだ。

 現在帝都では革命が進行している為、軍が動くことができない。


「……つまり……あたしの殺り放題ってわけだよなあ! あは、あはははははははは!!」


 あたしは普段のドレス姿のまま砦に歩み寄る。


『そこの婦人! ここは我等が正統性を示さんが為の戦場である! 今すぐに退去せよ!』


 正統性だあ……? 争いに敗れて逃げ出した負け犬が偉そうに……! 懐から魔力充填式の手榴弾を取り出すと、返答代わりに数キロ先に(・・・・・)投げた。



 ドゴオオオン……



 ……命中。

 ……いいねいいね!

 この焼け焦げた皮膚の匂い!

 爆発に巻き込まれて死んだ兵士の無念の叫び!

 そしてそして…………あちこちに飛び散る真っ赤な血液!


「あはははははは! やっぱりこれ最高だわ! あはははははは!」


 あたしは愛用の三ツ又の短槍を取り出すと、くるくると振り回しながら叫んだ。


「あたしはリファリス・リフター伯爵夫人!!あたしの快楽(たたかい)に付き合える猛者はいないか! いないんだったら全員ぶち殺してやるよ♪ あっはははははははははは!!」


『お、おい! あれは〝逆刃〟じゃないのか!?』


『う、うわあああ! 勝てるわけがない、総員退避ぃぃぃぃぃっ!!』


 逃がすわけないじゃないの……あはははは!


「閉門! 閉門ーーぅぐわ!?」


「門は閉める必要ないわよお……♪ あたしはもう……砦の中だから! あは、あはははははは!」


「ぎゃあ!」

「うがあっ!」

「た、助け……があああ!」


 宙に舞う血、血、血……! とおおっても綺麗な光景だ……! あたしはこの絶景を求めて止まないんだ……!


「さあさあ! 仲間同士で血を流してちょうだい……≪女王の憂鬱≫メランコリー・オブ・クイーン


「あ……が……あああああ!」

「あ、足元に線が……? ぎゃあ! な、何で仲間が襲って……ぐああ!」


「あはは! あたしの軍勢スキル≪女王の憂鬱≫メランコリー・オブ・クイーンはね、あたしを中心に広がったボードの上の人間を駒として自在に操れるのよ! こんな風にね!」


「あが! あががががが! ぐがっ」


「ほらね? ほらね? 自分で自分の首を斬り落としたりも出来るのよ……あっはははははは!」


「「「う、うあああああ!!!」」」


「さあて、あたしの兵士(ポーン)達……仲間の首を狩るのよぉ!!」


「や、やめろおおお!」

「手が! 手が勝手にぃぃぃ!」

「ぐぎゃあ!」

「あああああ!」


「く、くそお! 悪魔め! 悪魔めええええ!!」


「最高よ……最高の褒め言葉よ! ひゃはははははははははは!!!」


 ……お礼に槍の反対側についている錘で頭を叩き潰してあげた。

 真っ赤な真っ赤な紅蓮の花火……♪ ふふふふふ……!



「「「お帰りなさいませ」」」


「あー面白かった……! エリザ、ギルドに依頼を出しといて」


「畏まりました。どのような?」


「山の砦にたーくさん生首が落ちてるから、全部集めてソサエトの爺様の屋敷に放り込んでって」


「はい」


「うふふ……今度はいつ快楽(たたかい)があるのかしら……ふふふふふ……」



「……今日はご機嫌みたいね」

「相当暴れられたんじゃない?」

「あ、あの」

「あら、ミハエル君どうしたの?」

「リフター伯爵夫人って……格好良いですよね……」

「「「何故そう変換できるの?」」」

「……やっぱりリファリス様の花婿になれるのはミハエル君だけね」

「ははは花婿!?」



「何をやってるの! 夕食会(バーベキュー)を始めるわよ! メイドの皆(・・・・・)は集まりなさい!!」


「「「はーい」」」


「ミハエル坊やも早く来なさい! あたしの隣に座るんでしょ!」


「は、はい!」


明日から新章です。



ちなみに、リファリスの愛用の武器は…平たく言えばでっかい孫の手。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ