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第十七話 ていうか、〝下弦の弓〟と会議……。

「……え〜……これより第二回対帝国革命戦線の会議を行いたいと思います」


 パチパチパチ……


 ……エイミアとヴィーのまばらな拍手が郷愁を誘う。


「……〝下弦の弓〟の皆さんも、リルも、ブスッとしないでさあ……」


「………………」

「「「………………」」」


「……活発な……議論を……」


「………………フン」

「……何だよアイツ」

「そっちから仕掛けてきた癖に……」

「嫌な態度だな……」


 ……は、話が進まない……。



 玄関でのバトルが終結したあと、〝下弦の弓〟は私の謝罪を受け入れてくれた。

 フィリー曰く「罠を想定してなかった私達も悪いし、外の見張りに意識を向けすぎたし……」とのこと。

 外の見張り……密偵は粗方始末したつもりだったんだけど……まだいたのかしら?


「おい」


 で、問題はリルのこの発言だった。


「何よリル」


「こいつら……本当に〝下弦の弓〟か?」


 少し鼻白む〝下弦の弓〟メンバー。

 ちょっとリル! 今のタイミングは最悪だって!


「リル、この人達はちゃんと」


「待ってください。リルさん……でしたね。あなたの疑問は尤もです。まずは相手を疑ってかかるくらい用心深くないと、冒険者として長くはやっていけませんから」


 フィリーのナイスフォローのおかげで〝下弦の弓〟も冷静になったようだ。


「証拠はあります。冒険者証がありますのでお見せしますね」


冒険者証(それ)はいい。私が言いたいことは、そういうことじゃねえんだ」


「……でしたら、どういう事ですか?」


 するとリルはフィリーから目を逸らして、私に爆弾を投下してきた。


「こいつらがあの有名な〝下弦の弓〟? はっきり言って弱すぎるぞ(・・・・・)



 ぴきぃん



 ……あ、空気が凍った。


「な、何だとおおおおお!?」

「弱すぎるとは言ってくれるじゃねえか!!」

「流石にそれは聞き捨てなりませんね……!」


 うわあ! フィリーまでキレかかってる!


「リル! あんたは何つーことを……! 謝りなさい! 謝れコラ!」


「な、何だよ! 何でサーチは〝下弦の弓〟(あいつら)の肩を持つんだよ!」


「そういう問題じゃなあああい! 今は味方同士争ってる場合じゃ」

「味方!? こいつらが!? あんな子供騙しの罠(・・・・・・)に引っ掛かる連中が役に立つのか!?」



 ぴきぃぃぃん



「……あ、さらに凍結」

「……ですねえ」

「お茶入りましたよ〜」


「あんたらああああ! そんなとこでマッタリしてないで、止めなさあああい!!」


「このアマ、言わせておけば……!」

「おいおい、ここまで真っ平らだと(・・・・・・・・・・)男か女かはわからんぞ」



 びきぃ!



「……あ、凍結がヒビ割れ」

「……ですねえ」

「お茶菓子もあります」


「だああああかああああらああああ……」


「サーチの分のお茶です、どうぞ」


「あ、どうも……じゃなくて!」



「殺す!! ぜっったいにぶっっ殺おす!!」


「うわあ! 男女がキレたあ!」

「男女か!? 女男じゃねえか?」

「最初とは全く関係ない議論と化してますが……仕方ない! 迎撃するよ!!」

「「「おうっ!」」」



「あ、やば。本格的な戦闘になりそうね」


「……止めるべき」


「じゃあ私がリルを()止めます」


「あら、でしたら私が“下弦の弓”を()止めます」


「止めるのよね!? 『止める』の前に『し』があった気がするんだけど!?」


「サーチ姉、たぶん『仕止める』に変換される、と思われる」


 やああめええてええ!!



「お前らみたいな騙りなんざ、怖くとも何ともねえよっ!」

≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)、微妙にマイルド」


 バリバリバチィ!!


「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!」


「なんだ!? 同士討ちか!?」

「チャンスだ! 何でもいいからぶっ飛ばすぞ!」

「皆、囲んで一気に決めるわよ!」

「「「おう!」」」


「……足首を一瞬だけ≪石化魔眼≫(ゴルゴン)


 かちん

 ごきっ! ぐきぐきっ!


「「「あぎゃあああああ!!!」」」


 全員同時に倒れ込む。

 ここまで聞こえた複数の「ぐきっ!」はかなり痛そうだ。出来れば捻挫くらいで済んでくれればいいんだけど……。


「あ、足が……! って骨が折れてるぅぅ!!」

「チクショウ! 何でいきなり……」

「うああ! 足が変な方向に曲がってるうう!!」

「早く治療を!! お願いだから治療してえええ!!」


 ……二人は骨折確定。全治一ヶ月ってとこだから……戦力外は間違いないわね。


(ヴィー! やり過ぎよ!)

(すみません……思った以上に上手くいってしまいまして……)


 ヴィーは申し訳なさそうに、ケガ人の救護に向かった。

 ま、ヴィーみたいな美人に看てもらえるんだから、ケガをした男共はまんざらでもないだろう。



 ……で、現在。

 マイルドな威力のはずだったのに、しっかり焦げてるリル。


「びええ〜……」


 エイミアの頭にでっかいたんこぶができている。どうやら電撃の調整を誤ったらしく、キツい一発をもらったらしい。


「「「………………」」」


 反対側に座るのは、若手No.1と呼び声高い〝下弦の弓〟。但し全員、足を負傷中。

 言っちゃ悪いけど……若手No.1の割には、どいつもこいつも使えねえ。


「あの〜……何か意見は……」


 ……リルと〝下弦の弓〟との間に火花が散るばかりで、誰も発言することはない。


(ヴィー、何か言ってよぉ……)


 困り果てて、ヴィーに小声で意見を催促する。


(わかりました)


「何かご意見はありませんか?」


「はい!」「はい!」「はい!」


 おいっ!

 私の時と対応が違いすぎるだろ!


「はい、そちらの方……」


「司会進行をヴィーさんに代えていただきたい!」

「「さんせーい!」」


 おおいっ!!


「……さ、賛成の方は挙手をお願いします……」


 ざっ!


 全員賛成かよ!

 ていうか、リジーにリルに……エイミアとヴィーまで!?


(サーチ姉、我慢我慢)

(リジー! 何であんたまで……)

(今はヴィー姉が司会進行した方が、スムーズに進むのは明らか。我慢我慢)


 ぐ……! た、確かに……!


「ヴィーさんが司会をした方が華がありますな(・・・・・・・)

「まったくだ。あっはっは」


(……ヴィー……あの二人は後で、もう片方の足も石化して)


 ついでに「ぐきっ!」っと。


(……了解です)


「賛成多数で可決されました」


 パチパチパチパチパチパチ!!


 必死に拍手してんじゃねえよ!!


「じゃあ代わりま〜す」


(ヴィー、私達が都合良く動けるよう、取りまとめて)


(はい、わかりました)


(ごめん、この借りは返すから)


「……それじゃあ議案第一号から……」



「それでは賛成の方は挙手を」


 ざっ!


 ……すげえ、約十五分で最終議案まで来ちゃった。


「それでは可決という事で……」


 ……ホントに私達の都合良く……ていうか、良すぎる内容で全部可決された。


「よっし! それじゃあ決まった通りに動くわよ!」


 私は早速フィリーの前に座り。


「じゃあサクサクと城内の情報を言ってもらうわよ」


「え!? な、何で急に強気に!?」


「え? あんた達、賛成したじゃない? 実際の作戦行動は全部私達に任せる(・・・・・・・・)って」


「「「「……へ!?」」」」


 私の背後でリジーが議事録をチラチラ見せながら。


「三ページ目に書いてある。ちゃんと全会一致だったと思われ」


 議事録をひったくるように奪い、覗き込むフィリー。


「………………た、確かに……全会一致……な、何であなた達は手を挙げたの!?」


「「「……いや、フィリーも挙げてたし……」」」


 ……ヴィーが司会に代わってから、すっかり舞い上がった〝下弦の弓〟の男性陣は、内容を深く気にすることもなく議案の全てに賛成した。

 それに釣られる形で女性陣も賛成した。

 結局、その状況を鑑みたヴィーが私達に都合が良い議案をぶっ込みまくり……。

 現在に至る♪


「さあ、決まったことなんだから! さっさと吐きなさい!」


「な、何よこれ!? まるで取り調べじゃないのよ!」


 ヴィーが大量の書類を持って〝下弦の弓〟に近づく。


「すみません。現在スケルトン伯爵が怪我で療養中ですので、皆さんで書類の整理をお願いします」


「「「へ!?」」」


 またもリジーが議事録を持って言う。


「今度は五ページ目。これも全会一致」


「……嘘だろ……『怪我人は後方支援に徹する案』……全会一致……」


「というわけです。サクサクと書類を処理して下さいね♪」


「「「は、嵌められたあああ!!」」」



 この後、 〝下弦の弓〟の男性陣が、極度の女性不信に陥ったのは……言うまでもない。


「頑張って下さいね。疲れて倒れた時は、私が看てあげますから」


「「「も、もう勘弁して下さい……」」」


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