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第十六話 ていうか、ギルド本部の企みも絡んできて……。

「あの、信じてもらえたのならもういいですよ……」


 ひたすら謝り続ける私にフィリーは、苦笑しながら許しの言葉をかけてくれた。


「ホンットにごめんなさい。エイミアのヤツ、素っ裸に剥いて吊るしてやるんだからっ!」


「………………………………あなたは女の子を素っ裸にするのが好きなの?」


「失礼な! マーシャンやリファリスじゃないんだし!」


 私の言葉を聞いた瞬間に固まるフィリー。


「リ、リ、リファ……リス……?」


「? リファリスがどうかしたの?」


「……〝逆刃〟のリファリス……?」


 私は頷く。他にいないでしょ。


「な、何て事なの…………でもリファリスがいるのならば、あるいは……」


 いきなりブツブツ独り言を言い始める。


「リファリスが協力してくれれば、火力不足は一気に解消……」


 おーい。


「でも一度辞めた人間を復帰させるのは至難の技……」


 てい。

 かっくん

「うひゃあ!? ……な、何をするんですか!?」


「…………いえ、現役の暗殺者が重装戦士に背後(バック)をあっさり取られるんだなあ、と思って……」


 どうやら「ぐさっ!」と何か刺さったらしく、胸を押さえて踞った。


「しかも時代遅れの膝かっくんに、こうも見事に引っ掛かるとは……」


 涙目で私を見上げる。どうやらライフは0らしい。


「で? リファリスがどうかしたの?」


「……どうせ私は未熟ですよ……どうせ私は時代遅れですよーだ……」


 いい大人が拗ねるな!


「……今度は素っ裸のままで街に放り出すわよ?」


「はいはい!! 何でしたか!? どのようなご用件で?」


 寿司屋かよって言いたくなるくらい威勢が良くなった……変わり身は早いわね。

 ……何かつっこんだら負けな気がするから、このまま話を進めましょ……。


「で、もう一回聞くけど、リファリスがどうかしたの?」


「あ、その事ですか。今回の作戦に参加する冒険者は〝下弦の弓〟と竜の牙折り(ドラゴンブレイカー)だけなんです」


「……ちょっといい? めちゃくちゃどうでもいいことなんだけど……何であんた達のパーティ名には〝〟があって、私達にはないわけ!?」


「え? 〝〟ですか? ただ単にパーティ名登録の際に、名前に〝〟を入れただけですよ……?」


 あ、そんだけのことか……。

 ………………。


「ねえ、パーティ名の再登録ってらできるの?」


「は!? ……あ〜確かできないはず……余程の例外が無ければ……」


 ガーン!!

 ……で、でも余程の例外があればいいのね!?


「……わかったわ……で? リファリスの何を聞きたいの?」


「……私達と竜の牙折り(ドラゴンブレイカー)だけじゃ火力不足は必至でしょ? だから〝逆刃〟に協力してもらえれば、火力不足を補えるかと思って……」


「火力不足? なら大丈夫よ。ウチには期待の新人が加入したから」


「え!? 四人しか登録されてなかったような……」


「っ! ……ちょ、ちょっと前に加入したばかりだから……て、帝国じゃ登録しようがないし……」


 しまった……! パーティのメンバー登録、すっかり忘れてた……!


「まあ、急がなくちゃならないもんでもないし……今回の件が終わったら登録するわ」


「それでいいんじゃない? ……で? 〝逆刃〟は協力してくれるの?」


「それは期待しない方がいい。リファリスは今は帝国の伯爵夫人だから、立場的に難しいと思う」


「へ!? 伯爵夫人!? な、なかなか波乱万丈な人生ね……」


 まあ冒険者から大量殺戮者、そして伯爵夫人になるなんて滅多にいないからね……。


「……あなたのパーティの新人、本当に期待できるんでしょうね?」


 大丈夫よ。石化と怪力なんていうチート能力の持ち主だから……。



 私とフィリーはとりあえず別れることにした。


「じゃあ帝国の改革派が革命の準備を……? だったら私達の目的と合致するわ!」

「え、城内の詳しい情報を持ってるの? なら私達にとっても好都合だわ」


 ……というわけで。

 お互いの利害が合致したために、協力することにしたのだ。

 私は一旦引き上げて、フィリーはパーティメンバーを集めてスケルトン伯爵邸を訪問する、ということにした。

 戻るついでに伯爵邸周りを少し掃除しておこう(・・・・・・・・・)



 ヒュヒュ……ドスドス!


「ぎゃ!」

「ぐあ!」

「うぐ!」


 ドサドサ……バタ


 即効性の猛毒をたっぷり塗りつけた針を、密偵達の首筋に投げて刺す。

 死体を植え込みの影に引き摺りながら、周りを確認する。


「……これで半分は始末したか……ヴィー、コイツもいい?」


「はーい、よっこらしょっと」


 どさんっ!


 すげ……植え込みまで10mくらいはあるけど、人間を軽々と投げ飛ばしたわよ……。


「でも、あれだけの数を石化して大丈夫なの?」


「大丈夫です。≪石化魔眼≫(ゴルゴン)の制限の発動条件は回数なんです。乱戦の時に一人一人石化すると、あっという間に寝ちゃいますけど」


 だから一箇所に集めて一気に石化するのか……考えてるわね。

 ウチのパーティには火の魔術を使えるのがいないから、死体の処理は毎回苦労する。放置してゾンビになっちゃうと大変だから、死体の処理は冒険者の必須事項なのだ。

 今までは苦労して埋めたりしてたんだけど……。


「いきます……≪石化魔眼≫(ゴルゴン)


 かちん


 ……今は石化で処理してる。あとはヴィーが≪怪力≫で粉々に砕けば終了だ。


「ありがとね、ヴィー。今日の夕ご飯は好きな献立にしてあげる」


「え? そんな、いいですよ」


「遠慮しなくてもいいわよ……ヴィーの好きなモノって……?」


「別に好き嫌いはありませんよ」


 ……生卵の丸飲みとか? カエルとか?


「……メドゥーサだからって蛇と好みは被りませんからね?」


「あ、違うの? ……ていうか、何で私が考えてることわかったのよ!?」


「……サーチは顔に出過ぎなんですよ」


 え!? ウソ!?

 ……気をつけよ……。



 一時間後、エイミアとリジーが戻ってきた。


「どうしたんですか? 外が信じられないくらい静かになってたんですけど……」


「これから協力するかもしれない(・・・・・・)パーティが来るから、ちょっとお掃除しただけよ」


「え? 協力するって……どういう事ですか?」


「ギルド本部が何か企んでるみたいでね、A級パーティの〝下弦の弓〟が帝都に来てるのよ」


「え!? 〝下弦の弓〟が?」


「お互いの利害が一致しそうだから協力しないかってなってね……」


「サーチ姉、信用できるの?」


「ええ。ニーナさんを通じて確認してもらったけど、本部が動いているのは間違いないみたい」


「狙いは?」


「ズバリ、覇者の王冠よ」


「やっぱり……」



「わー! 何だ何だ!」

「何でこんな場所にトラップが!?」

「お、下ろして! スカートが……こら、見るなバカ!」



「……玄関が騒がしいですね」


 あ、しまった。

 罠が仕掛けてあるの伝えてなかった。



「テメエら侵入者か!? 全員ぶっ飛ばす!」

「うわあ! ちょっと待てぶごっ!」

「オラオラオラ! くたばりやがれえええ!!」

「だ、誰かああ! ぎいああああ!!」



「……タイミング悪くリルが帰ってきたみたいですね」


「止めるわよおお! みんな来てええ!」



 すぐにリルを取り押さえたものの……すでに〝下弦の弓〟のメンバーはボロボロ。

 再び謝り倒すこととなった。

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