表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
255/1883

第九話 ていうか、いよいよ改革派のトップとご対面!

 思わぬ形で手土産が役立った。スッゲえ感謝されまくりで、結構な接待を受けることになってしまった。

 めっっちゃ良心が痛む……。


「ホントにありがとうございました! あなたが助けてくれなかったら、今頃どうなっていたか……」


「ははは……」


 やべえ。本人が出てくるとは思わなかった。

 何か良心の激痛が半端ないんですけど。


「侯爵様もぜひお礼を、と仰ってますので」


 侯爵……あ、用件を思い出した。


「あの……ソサエト侯爵に急ぎで連絡をとるよう、スケルトン伯爵から頼まれて……」


「スケルトン伯爵からですか……? チェスのお誘いはしばらくお断りだと」


「そんな平和的なモノじゃありませんから!」


 えっと、合言葉は何だったっけ……。


「あー……一昨日座ったときに破れたパンツは、恥ずかしいけど今日も履いてるんです!」


「……少々お待ち下さい」


 …………スケルトン伯爵達はもう少しマシな合言葉を考え付かなかったの?


「こちらへどうぞ」


 メイドさんに新たに案内されて着いた部屋には……。


「……? ……あの……何もないんですけど……?」


「……ごめんなさい!」


 どんっ!


 え?

 メイドさんに押されて数歩下がると、床が無くなった(・・・・・・・)


「ひえっ!! な、何でよおおおおお……」


 私は暗闇へ落ちて……。


 ずしゃあ!


 ……いかなかった。


「な、何よこれえええええええ!!!」


 なだらかな坂になっている細い道を、勢いよく水が流れている。

 それを勢いよく滑り落ちていく!!


「いひゃあああああぁぁぁぁぁ…………」


 こ、これってウォータースライダーよね!? 何で私はこっちの世界来てまで、ウォータースライダー(こんなこと)やらなくちゃならないのよおおお!


「きいああ! ふみゅう!」


 今一回転したよね!?

 ムダに一回転したよね!?


「ひいえええぇぇぇ……」


 ……あ! 明るい場所が見えてきた! 長いトンネル(ウォータースライダー)を抜けると、そこは……。


「あっはっはっは! どうかね! 楽しかったかね!」


 ……ファンキーなお爺さんがめっちゃハイテンションでベイビーしていた。



「あんたはあああ! 一体何のつもりでえええ!」


「ま、待て待て! くくく首が絞まる!!」


 ファンキー爺さんの襟首を持ってガックンガックンしてたら、顔が真っ青になって極楽ベイベーになりそうだったので止めた。


「はあはあ……き、君はいきなり何だね! 失礼だろう!」


「お前が言うなあああああ!! 何で私はいきなりウォータースライダーに乗せられなきゃならないのよ!?」


「ウォーター…………? あ、水流滑り台のことかね?」


「同じだああ! 水流滑り台を英語にすればウォータースライダーなんだよおお!!」


 い、いかん。ペースを乱されっ放しだ……。


「それよりも……いいのかね? 片方……」


 ……ん? ファンキー爺さんがデレデレして私を見てるけど……? 片方……って……ああ、なるほど!

 ウォータースライダーの後でビキニのトップがズレたりするわね。ビキニアーマーでも起こるのねえ……じゃねえよ!


「何を見とんじゃあああ! こんのエロジジイイイイ!!」

「ぎいああああ! だ、誰かこの娘を止めてくれ! うが! ぐご! げええええ!!」


 ……しばらくして、駆けつけた警備隊に引き剥がされるまで……ファンキー爺さんは私のスーパーコンボの餌食となり続けた。



「……申し訳ありませんでした! まさかソサエト侯爵本人だとはカケラも(・・・・)思えなくて……」


「まあ、良い良い。儂もお主に酷い事をしてしまったからのう」


 ……包帯とギブスだらけでベッドに横たわるファンキー爺さんこそ、ソサエト侯爵ご本人でした。

 警備隊ならびに執事さんやメイドさん達からも、こっぴどく叱られるハメになった。

 ……まあ侯爵を半死半生の目にあわせて、叱られるだけで済んだんだからラッキーなんだけど。


「あの……スゴく気になるんですけど……」


「何かね?」


「……何で侯爵ともあろう方が……ウォータースライダーの出口でアロハシャツとサングラス姿で、ウクレレをジャカジャカしてたんですか?」


「……愚問じゃな」


 ソサエト侯爵はギブスで固定された右手を持ち上げた。たぶん拳をぐっ! と握りたかったんだと思う。


「水流滑り台のゴールなら、びしょ濡れの女の子を見放題じゃろぐぼお!」

「……このエロジジイをあの世へベイベーしたいんだけどいいかしら?」


 執事さんにNGを出された。ちえ。


「ごほごほ……き、黄色いお花畑が見えたわい……」


 そのまま逝ってしまえ。


「おほん! ……それよりもじゃ。お主はスケルトンめの部下か?」


「いえ。雇われただけの冒険者です。あまりにも頼りなかっゲフンゲフン……お、お忙しそうでしたので、連絡役を引き受けました」


「はっはっは! 頼りないか! スケルトンは剣の腕こそ帝国一じゃが、他はからっきしじゃからな……」


 ……やっぱり剣術バカか。


「じゃが今時の若者にしては珍しく、真っ直ぐに一本芯が通った若者じゃ。例え短い間であっても支えてやってくれ」


 へえ……この爺さんて意外と。


「……元よりそのつもりよ。雇われたからには全力を尽くすわ」


 警備兵の治療代を払わなくちゃならないし。


「それだけでは無かろうが。夜の仕事ふぐぉ!」


 やっぱりただのエロジジイじゃないの!


「お、お主がそのような格好(ビキニアーマー)をしておるから……」


 ……誤解したわけね。


「ビキニアーマーは単なる趣味です! いかがわしい理由は一切ありませんから!」


「そ、そうか……」


 ……我ながら説得力がないな……たぶんソサエト侯爵も納得してないし……。


「とにかく! 私は諜報の方面で全面的にサポートしますし、仲間が伯爵邸を警備してますから万全です!」


「……わかった。これは儂からの依頼だと受け取ってもらっても構わん」


 依頼!?


「でしたら依頼料は……」

「言うと思っておったわい。働き具合によっては奮発するから頼むぞ」


 いよおおおしっ!


「まっかせなさい!! 大サービスで皇帝を暗殺してあげても」

「止めてくれええええっ!! 頼むから止めてくれえええぇぇぇ!!」


 ……そう? せっかくの出血大サービスだったのに。



「……というわけです。スケルトン伯爵からの伝言は以上です」


「ふむ……民を利用しようとするのは気が引けるのう……」


「利用すると言っても実質は集まってもらうだけ。矢面に立つのはやっぱり改革派の皆さんになります」


「……成程、考えたのはお主だな。スケルトンが考えつくような事では無いしな」


「私というより私の仲間ですけど……これだけあっさりと見破られるとは思いませんでした」


「儂はスケルトンとの付き合いが長いのでな。あやつの考えることは大体わかるよ」


 ……まるっきり孫ね。


「まあよい……スケルトンに『わかった。儂から全員に連絡を入れておく』と伝えてくれい」


「……いいんですか? お願いしても……」


「儂も伊達に歳をとっておらん。方法ならいくらでもあるよ」


 そんなに方法があるのなら……ぜひ教えてもらいたいわ……。


「わかりました。よろしくお願いいたします」


 ペコリと頭を下げる。


「そう堅苦しい挨拶は無しじゃ。我らは同志なんじゃから……な!」


 さわっ


「きゃあああああ!」


「良い尻をしておるの……ではスケルトンによろしくな」


「あ、あのエロジジイ……!」


 ていうか、いつの間に私の後ろにまわったのよ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ