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第八話 ていうか、改革派の偉い人に連絡しに行ったんですけど……。

「連絡つけるんなら……有力な人からですよね」


「そうね……」


 改革派のトップって……?


「伯爵さーん、改革派で一番偉い人は誰ー?」


「……ソサエト侯爵だ」


 ソサエト? 何か追加情報があったような……?


「非常に優秀で人格者なのだが……それを差し引いてマイナスになるほど女好きでな……」


 あ、それだ。

 少し前に侯爵邸の門番と会話したんだけど……ソサエト侯爵の影響うけまくりのスケベだったからねえ……。


「うえ……あんまり会いたくないな……」


「いいわ。侯爵は私が話をつける」


「え? いいのか?」


「別にいいわよ」


 前世じゃあ、その手の変態が標的(ターゲット)になることもよくあったし。扱いに関しては、リルよりは慣れている。

 ……ていうか、リルは免疫なさそうだからね。


「あ、ありがとうサーチ!」


「リルは二番目に影響力がある人をお願いするわ。伯爵、次に偉い人は?」


「……リフター伯爵だろうな……」


 リフター? そいつは知らないわね。


「おーけー! リフター伯爵だな……どんなヤツだ?」


「そうだな……容姿端麗、才色兼備、そして抜群の政治的センス。性格も申し分ない」


「……そのパターンだと……とんでもない欠点があるんじゃねえか……?」


「そうでもない。単なる同性愛者(・・・・)なだけだ。少しだけ節操が無いのがたまに傷だがな」


「ど、同性愛者…………なら問題ないな。女の私がどうこうされることもないし……」


「いや、しかし」


「じゃあ私、先に行くぜ!」


 しゅたっ


 ……あいつ……私が「代わって?」って言う前に逃げたわね……。

 ていうか、代わるつもりはなかったけど。


「ああ……行ってしまった……」


 ……そういえば……伯爵、何か言いかけてたわね。


「どうしたんです?」


「あ、ああ……最後まで聞かずに行ってしまったので……」


 最後までって……。


「……重要なことなんですか?」


「ああ……リフター伯爵は語尾に夫人がつく(・・・・・)


 へ!?


「それって……女性の伯爵(・・・・・)ってことですよね!?」


「……無論」


 あ〜あ……同性愛者で節操なし(・・・・・・・・・)のとこへ行っちゃったのか、リルは……。


「……リル……自分で選んだ道なんだから…………成仏しなさいよ」


 ……合掌、礼拝。



「じゃあ私も行くから、留守中の警備よろしく」


「はい。お気を付けて」

「お土産はいらないですからね」

「ふぁいと一発!」


 ……何か緊張感のカケラもない見送りをされつつ、私もスケルトン伯爵の家を飛び出した。

 屋根伝いに移動しつつ下を見ると。


「……大会の時より治安が悪化してるわね……」


 裏通りや細い路地には、見た感じが怪しさ満点の人達がたむろしている。しかも大会開催中にはウジャウジャいた警備隊が、全く見当たらない。


「……警備隊の予算をケチってるのかな……」


 スケルトン伯爵の話だと、相変わらず増税される一方らしい。


「……それでこの治安じゃあ……帝国も末期よね……」


 皇帝の誕生日なんて祝ってる場合じゃないでしょうに……。



 ……なんて考えながら移動していると、ソサエト侯爵の屋敷が見えてきた。


「……あのスケベな門番は健在か……」


 そのまま屋敷の周辺をぐるりと一周し、監視の有無を確かめる。結果はやっぱり……と言うしかないくらい、ウジャウジャ密偵がいる。


「……何か統一感が無いわね……」


 見事なくらい存在を悟らせないのから、「やる気あるのかよ……」とつっこみをいれたくなるくらいのまで。ここは慎重にいかないとマズいな。



 約二時間。

 周りの密偵達を注視し続けたら、どうやら複数の勢力が絡んでいるみたいだった。

 やはり多少なりは連絡を取り合っているみたいなので、連絡員を追ってみると……。


「少なくとも三つぐらいは関係してるか……」


 ていうか密偵達も、あまりの過密状態に辟易してるみいだし……。


「……じゃあ……監視の交代の時間を狙いますか……」


 ついでに手土産(・・・)も調達してこ。



 さらに二時間後。

 辺りが暗くなって来た頃、密かに屋敷に近づく気配を感じた。

 明らかに訓練された足取りだったので。


 ドカッ! ゴスッ! バキバキバキィ!


「あがっ! うぐ! ぐ! ぐ! ふぐぅっ! ……っ……」


 交代要員らしい女性の口を塞ぎ、五、六発殴って気絶させる。別に私より胸がデカいから余分に殴ったんじゃない。目の錯覚か空耳か気のせいだろう。

 グッタリとした女性を縛って植え込みに放り込む。


「……さて……監視がいない間に入り込んで……と」


 少しだけ窓が開けてあったベランダから侵入した。


「…………誰もいないわね」


 ……警備兵の気配がない。


「おかしいわね……これだけの屋敷なのに、人の気配がない……」


 まるで……誰もいないみたい……。イヤな予感MAXになりながらも、少しずつ進んで……。


「!!」


 私の前を何か(・・)が通り過ぎた!


「うりゃあ!」


 おもいっきり蹴りあげる!


 ガチン!


 剣が空中を舞う!

 素早くリングブレードを作り、斬りつけ……。


「ちょっと待て待て待て!!」


「ん……何よ?」


「危ないだろ!」


「お前が言うなあ! 物陰から斬りつけてきといて『危ないだろ!』はないでしょ!」


「はあ!? 意味わかんねえよ! 俺はただ剣の素振り(・・・・・)してただけうごおっ!」


「ウソつけぇぇぇ!!」



「……マジですか?」


「「「マジです」」」


 ……廊下で言い争いをしていた私と警備兵は、突然現れた警備兵の団体さん(・・・・)に連行された。

 かなり広い豪華な部屋に連れ込まれ、周りを男に囲まれた私。

 貞操の危機(身の危険)を感じた私は「ぎゃああああ! 痴漢んんんん!!」と声の限り叫んだ。

 そしたら、ホウキやらモップやら握ったメイドさん達が「痴漢ですって!? 女の敵よ!」 とか言いながら乱入。

 もう何がなんやら……。

 で、代表者? を集めて話し合って、現状が把握できたのだ。


「……じゃあ……侵入者の気配だけ丸わかりになる魔術がかかっていると?」


「はい……何せ屋敷の周りが不審者だらけですので……」


 まあ……確かにそんな魔術がかけられてれば、絶対安全だわね……。


「……で、あなたはホントに素振りしてただけ?」


「はい……見回り中にやってはいけないとわかってたんですが……試合が近くて……」


「……私が近くに来てるってわからなかったんですか?」


「素振りに熱中してました……。ああ、こんな近くの気配に気づかないなんて……! これじゃあ勝てない……!」


 ……すいません。ムダに自信を削ぎ落としてしまったみたいで……。


「それと〜……メイドさん達は?」


「「「私達は痴漢やセクハラを絶対許しません!」」」


「……この屋敷はメイドの権力(ちから)が強力でして……」


 ……さいですか。


「ただでさえメイドの一人が行方不明で、心配したメイドが全員詰めていたので」


 へ? 行方不明?


「母親が倒れた、ということで急遽実家に戻ったっきり……」


 ……まさか。


「あの……特徴は?」


「はい? ……小柄で……可愛い顔つきで……」


 やべえ。合致する。


「何か武術を習ってたり……?」


 あの足取りは……相当訓練されたモノだった。


「……何故ご存知なんですか? 確かにそのメイドは元諜報員(・・・・)ですが……あの、ちょっと?」


 全速力で植え込みに向かった。



 やっぱり行方不明のメイドさんでした。

「途中で連行されていたから助けた」と言ったら信じてもらえたので助かった……。



 ……良心がちょっぴり痛む。

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