第七話 ていうか、革命に関する会議を始めます!
「それでは『帝国なんかぶっ潰せ! スーパー革命同盟』の第一回対策会議を行いまーす!」
「「「「わー……」」」」
パチパチパチ……
……うん。何かが違うと思う。
「あのー……伯爵……」
「待ってください。発言は議長を選出してから」
そんなとこ拘らなくてもいいんだよ! こんなちっちゃな会議で議長もクソもないわよ!
「いえ、それ以前の問題なので…………あの、革命の組織の名前をつけたのは……」
「……私だが……」
この人のネーミングセンス、まるでダメダメだよ!
「流石にこれは……『帝国をぶっ潰せ!』 とか『スーパー云々』なんてのはあまりにも……」
「うぬぅ……確かに妻にもダメ出しされたが……」
その時点で新しい名前を考えようよ……。
「一応お聞きしますけど……お子さんの名前を考えたのは……?」
「妻だよ。私の意見はことごとく却下された」
「例えば?」
「確か……ヘベレケ……ベロベロ……はまりん……ヤナクロー……」
「……奥さんが良識な方で良かったですね……」
もし自分の名前に「はまりん」なんてつけられたら、完全に人生詰むな……。
「ならば君達の意見を聞きたい。どのような名前が相応しいか、考えてくれたまえ」
私達に丸投げしてきやがったよ!
……でも仕方ない……か。言い出しっぺは私だし……。
「……わかりました。なら、まずはこの議案を……」
「待ちたまえ。まずは議長を」
それはいいから!
議題、一。
革命組織の名前決め。
……小学校の係決めに劣るレベルね……。
あ、まずはエイミアが手をあげた。
「はい。『対帝国革命戦線』とかどうでしょう!」
「適当に見映えの良い言葉を並べた感ありありだけど……まあマシね。他には?」
次はリル。
「『皆で皇帝ボコボコ連盟』とか」
「却下! 伯爵とレベルが変わらないわよ!」
「は、伯爵と一緒にするな!」
「ふーん。じゃあマシなのを考えてみなさいよ」
「え゛っ……」
……リル、動作停止。やっぱり伯爵と同レベルだった。
今度はリジーが挙手。
「ピッタリの名前がある」
「……イヤな予感しかしないけど……何?」
「『救国軍事会議』」
「却下却下却下! 不吉過ぎるわよ! ていうか何で知ってるのよ!」
「……天啓?」
どういうお告げだよ!!
「とにかく却下!! 縁起でもない名前は、出鼻を挫くだけ!」
「……ちぇ」
……何で残念そうなのよ……。
するとヴィーが手を挙げた。
「こういう場合は、多少見映えが良ければ、何でも良いと思います」
あら……? ヴィーにしては投げ遣りな提案……。
「例えばエイミアの提案を略してみるんです。『対帝国革命戦線』ですから……頭文字を並べて『対革戦』とか」
あー……なるほど。そういうのもありか……。
「なら『皆皇ボコ連』ならいいのか?」
「いいわけないでしょ! 略してもセンス皆無よ!」
「じゃあ『救軍会』」
「リジーは『救国軍事会議』から離れなさあああい!!」
……結局無難に『対革戦』に決まった。ていうか『対角線』と間違えられる可能性が大。
議題、二。
仲間への連絡方法。
「……ていうか、今さらそれ!?」
「仕方無いだろう! 帝国にマークされていて接触できないんだ」
あー……はいはい。
「……名簿さえ貸してもらえれば、私とリルで連絡とりますよ?」
「な、何で私が……」
「私達の中で敵に見つからずに行動できるのは私とリルくらいよ?」
見た目でヴィーはアウト。
性格的にリジーもアウト。
エイミアは問題外っていうか対象外。
「私が不向きなのはわかりますけど……リジーもですか?」
「リジー。こっそり敵を尾行したり、屋根裏に何時間も滞在したり、床下をズリズリほふく前進したり」
「無理」
「……というわけよ。性格的に不向きね」
「ならエイミアは……」
「想像してみましょう……。エイミアが尾行します……すると?」
「うーん……くしゃみしてバレますね」
「想像してみましょう……エイミアが屋根裏に潜り込んだら?」
「うーん……胸がつっかえて動けなくなったり、頭をぶつけてバレたり……」
「想像してみましょう……エイミアが床下をズリズリ……」
「間違いなく胸がつっかえます。それに頭をぶつけてバレますね」
……奥でエイミアが泣いてるのはスルーします。
「ね? リルなら胸がつっかえる不安はないへぶうっ!」
……結局無難に私の案が採用された。
議題、三。
新規の仲間集めについて。
「あえてもう一度言うわ。今さらそれ!?」
「な、仲間は多い方がいいだろう!」
「ダメ! 絶対NG! こんな重要な時に新規の仲間を募集だなんて、スパイが入り放題じゃない!」
「……そ、そうか……しまった……」
ちょっと……もう何かやらかしてる……とか言わないでね?
「……街に『革命要員募集!』の貼り紙を……」
「今すぐ剥がしてこおいいっっ!!」
早く回収するに越したことはないため、結局足が速い私とリルが走り回るハメになった。
「はあ……はあ……これだけですね?」
「う、うむ……申し訳無かった……」
「これに関しては別途報酬をいただきますからね!」
……とはいえ……誰も見てない、なんてことはあり得ないから……マジで頭痛い。
「新規で仲間を集めるよりは、市民の一斉蜂起を促す方が早いのでは?」
ああ……ヴィーが輝いて見える……。
「市民を巻き込むのか……」
「伯爵に賛同なさる方がどれだけいらっしゃるか、私は把握していませんから……そうなると市民を自発的に蜂起させるのが一番手っ取り早いかと思いまして」
「……そうね……私でもそうするわね」
要は伯爵の仲間がどれだけ扇動できるか、だ。
人数さえ集まれば、帝国側が恐れを抱いて自然に瓦解することもあり得る。
「成程……実際に戦わせるのではなく、脅しの材料として利用すると……」
「上手くいけば、無血革命も夢ではありませんね」
おおっ! ヴィーの頭脳が冴え渡る!
「おお……! この方法ならば無駄な血が流れる事も無い……!」
お、伯爵は乗り気ね。
「じゃあこの方向で」
「ま、待て! もっと綿密な計画を立てないと」
「そんなことはわかってますよ。ただ伯爵を見ていると計画が駄々漏れになりそうなので、私達だけで決めます」
「な、なんだと!? 新参者が私を差し置いて!?」
「どうせ伯爵のことだから『皆で革命しよう!』とか書いたポスター貼り出す気だったんでしょ!?」
「う゛っ!」
マジでやる気だったのかよ!
「そういうわけで私達が綿密な計画を立てます。わかりましたか?」
「………………」
「返事はっ!?」
「……わかった。わかりました……」
「返事は『はい!』です!」
「……はいはい」
「『はい!』は十回!」
「はいはいはいはいはい……っておかしいだろ! 普通『はい!』 は一回ではないか!?」
「……いえ……まさかホントにやるとは思わなかっただけです……」
……スケルトン伯爵……不安だ。
救国軍事会議はポーランドのほうではありません。
気になる方はググってみてください。