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第六話 ていうか、無防備なスケルトン伯爵邸を強固な要塞に。第一段、罠!

「伯爵、はっきりと言わせていただきます」


「と、突然、何かね?」


「この屋敷の警備は甘過ぎます! ザルです! スッカスカです! こんなんじゃ二流三流のコソドロだって鼻歌を歌いながらパーフェクトにスチールしますよ!?」


「ぱ、ぱへ……? すちる……?」


 しまった。勢い余ってルー語が混ざった。


「細かい点は気にしない! いいですか? この屋敷の警備兵は数が少なすぎ!」


「いや、そこは予算的な事で……」


「予算と命とどっちが大事なんですか! ムダな予算を削って何とかしなさい!」


「は、はい……」


「そして何より! この屋敷の警備兵、弱すぎ!」


 ……屋敷のどこかで「ぐさあ!」だの「ぐふうっ!」だの聞こえたけど無視。


「何なの、あの武器のミスセレクト! 一人の長剣は……まあ……まだ許容範囲。だけどもう一人のポールウェポンはダメでしょう!」


「……そういえばハルバードを使ってたのがいたな。あれだけ室内では使うなと……」


 ばああんっ!


 テーブルをおもいっきり叩く。


「そ・こ・が! 甘いっつってんのよ!!」


「うわビックリした……それより手は大丈夫かい、君?」


 そこ突っ込まないでくれるかな!? 確かに痛かったけど!


「話が逸れた……とにかく! 個人の意向を警備(しごと)に持ち込ませてる時点でアウト! 大体が得意武器でもあのザマじゃ警備兵としては失格! 落第! 下の下の下よっ!!!」


 ……途中で「警備兵の容態が急変!」「心臓マッサージを!」「ああ! 脈が! 脈がああ!」とか言う声が聞こえたけど無視。


「警備兵の代わりがいないのなら、警備体制を見直すとか罠を仕掛けるとか、何らかの対策をすべきです!」


「……そこまで言うのなら、君にはできるのかい?」


「無論!」


 それなりにある胸を張る。


「……わかったよ。ここに滞在する間は君に警備の全般をお願いしよう。罠を作るのなら、ある程度はお金も出すよ」


「……わかったわ」


 よおおおし!

 これで高額な料金を請求できる!

 え? ぼったくり?

 ちゃんとやることはやるわよ!


「それで報酬のことなんだけど……」


「はいはい♪」


「窓の補修と警備兵の治療代でチャラだから」


 ぐふうっ!



「……お前が警備兵を容赦なく手加減なくシバくから……」


「うううるさいわね! あんただって窓叩き割ったじゃないの!」


「……流石に治療代とガラス代じゃ、額が違いすぎますよ?」


「エイミアもうるさい! 口を動かすヒマがあるんなら早く溶接して!」


「はーい……≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)


 エイミアがスキルの応用で、アーク溶接する。


「ヴィー! 次の資材を搬入して!」


「はーい。わかりました」


 ヴィーは種族スキルの≪怪力≫を活かしての力仕事だ。


「ありがと。助かるわー! さすがフォークリフト(ヴィー)ね!」


「……? 何故でしょうか、無性にサーチを石化したくてたまらないのですが……?」


「ちょっとマジでシャレになんないわよ!?」


「あはは、冗談ですよ」


 ……何で私が考えたことってバレバレなのかしら?


「そのまま上げてー……リル、そっち固定して」


「わかった」


 身軽な私とリルが高所作業。

 リルは高い場所は苦手なんだけど「これくらいなら……何とか……」と言って頑張ってくれてる。

 ……よく見ると足が震えてるけど、そこはスルー。


「サーチ姉、釘とトンカチ。リル姉も」


「あ、ありがと」


 意外と小回りが利くリジーが、雑用全般を引き受けてくれた。必要なものを先読みして用意してくれたりするので、かなり作業が捗っている。

 その他にも、飲み物やちょっと摘まめるような食べ物を持ってきてくれたり、タオルを冷やしてきてくれたり……。かなり女子力も高い。

 以前にヴィーが「私の所に嫁に来ませんか?」と誘ってたりしてたぐらいだから、相当な優良物件なのだろう。

 ただ「……子供は三人くらいで」と、本気なのかよくわからない返答をするところが残念なんだよなあ……。


「じょ、冗談ですからね! 私にはそういう趣味はありませんからね!」


「うん。私もだから安心して」


 ……結局リジーの方が一枚上手だったけどね。ヴィーはからかったつもりが、しっかりやり込められたわけだ。

 ていうか、それはさておき。

 私達が何をしているか、と言うと……。


「これで本当に罠になるんですか?」


「ん? 十分なるわよ」


 そう。早速罠を作っているのだ。


「へ〜……もっと複雑なモノなのかと思ってました」


「エイミアはどういう罠を想像してたの?」


「そうですね……床が開いて落ちた先はトゲトゲとか」


 うん、一番ベタなヤツね。


「効果は高いけど、工事費がバカにならないでしょ?」


 床ぶち抜いて地面掘って……結構手間よ。


「……天井が下がってきたり?」


「だから工事費」


「いきなり外へ転移させられる!」


「魔方陣があれば何とかなりそうだけど……魔力はどうするのよ?」


「……うーん…………あ! いきなり魔王様(ソレイユ)登場とか!?」


「いきなりラスボスが出てくるような罠、すでに罠じゃないわよ!」


 はあ……疲れる。


「いい? 罠ってのは『相手に手傷を負わせればラッキー』くらいのモノでいいのよ」


「……でも……戦闘不能にできれば一番よくないですか?」


「まあ理想はね。ただ本気で戦闘不能(それ)を目指すと……お金と技術と大規模な構造が必要なのよ」


「ああ、そうか……スポンサーがおーけーしないわな……」


 両手で×を作るスケルトン伯爵が浮かぶ。


「そういうこと。だからアレでいいのよ」


 あとは上手く作動するかどうか……ね。


「そうだわ……実験してみないと何とも言えないわ……」


「え? 実験?」


「うん……罠が起動するタイミングとか、角度とか。結構微調整がいるのよね……」


「……てことは……何だ? 誰かが罠に引っ掛かる(・・・・・・・・・・)必要があるってことか?」


「そうなるわね……」


「わざとですか? もし宜しければ私が挑戦しましょうか?」


 へ!? ヴィーが!?


「私でしたら万が一の事があっても大丈夫ですよ。身体の丈夫さはパーティで一番ですから」


 そりゃ現役モンスター(メドゥーサ)だしね。


「わかったわ……お願い」



「じゃあ行きますよ」


 ガチャ

 ………………………………びいん!


「ぅわひゃああああああっ!!」


「おっ!? 成功じゃないか!?」


 ……起動するタイミングはドンピシャだけど……。


「……ダメね。この角度だと頭打つかもしれないから……」


「ヴィー! 少し微調整するそうですから、降ろしますよー!」


「わ、わかりました! 早くしてくださあい!」


 ヴィーは必死にスカートを抑えて叫んだ。

 あ……淡いブルーだ。


「早く降ろしてえ! 早くしないと≪石化魔眼≫(ゴルゴン)乱れ撃ちしますよ!」


 顔を真っ赤に染めて叫ぶヴィー。私達は大急ぎで降ろした。


「……流石に次は違う人で」


「じゃあ私逝く」


「リジー! 逝くじゃなくて行く!」


「え? イク?」


 カタカナにしないの!



「じゃあ、ていくつー、行きます」


 何でTake2とか知ってるのよ……。


 ガチャ

 ……………………………………びいん!


「うひょおおおぉぉぉ……」


 どごおっ!

 パラパラ……


「………………失敗ね」


「おいっ! リジー大丈夫か!?」


「た、大変! 完全にめり込んで……!」


 う〜ん……今度は威力が強すぎたか……。



 十分ほどでリジーは掘り出され、奇跡的にケガはなかったけど……。


「………………殺」


 ぶんぶんぶんっ!


「わっ! 悪かったから! ひえ! ちょっ! ごめんなさいいい!」


 ……しばらく〝首狩りマチェット〟を振り回されて、命の危機を体験した。



「はあ、はあ、はあ……これで、カンペキだと思う……」


「……ほんっとに大丈夫なのか?」


「今度は私が実験台になるわよ……」



「じゃあいっきまーす!」


 ガチャ

 ………………………………びいん!


「あきゃああああ……ってあれ?」


 罠は作動したけど……私がぶら下がってないから……。


「……失敗かあ……おかしいな……」


 ……ヒラヒラ……


 ん? 天井から何か降ってきた……?


「……あれ? これって私のブラ……? ……て、何で私裸なのよ!?」


「あー……サーチ……その罠のヒモが……何とも絶妙なタイミングでお前のブラだけ(・・)引っ掻けてった」


 スゲえタイミングだな!


「とりあえずまた微調整を……」


 ガチャ


「君達は一体何をしてる…………これは失礼しました」


 ……バタン


「………………」


「おい、今のスケルトン伯爵のラッキースケベも……罠の一環?」


「んなわけあるかあああ!!」



 ……半日で罠は完成し。

 次の日から数々の侵入者を生け捕りすることに成功した。


「ふぎゃああああ!!」

「……今日は何?」

「野良猫だよ」


 ……九割は猫、犬、ネズミ等の動物だったけど。

 え? 一割は何かって?


「おはようございます〜……」

 びいん!

「また忘れてたああああぁぁぁぁ…………」


 ……エイミアよ。

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