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第五話 ていうか、スケルトン伯爵邸を新しい拠点に。

「うぅ、ひっく……」


「泣かないの……何にも悲しいことなんてなかったでしょ?」


「だって……ぐす……あんな優しい人を……ひっく……騙したんですよ……心が痛みます」


 ピュアだなおい!

 ホンッットに見た目と中身が釣り合わない典型だわ。


 うねうねうねっ


 ……頭の蛇がなければねぇ……。


「しかし革命とは血生臭いな……。確かに私達には好都合だけど、場合によっては大量の血を見るぜ?」


「いいんじゃない? その血が阿呆な貴族ばかりなら何の問題もないし」


「そ、そうか……」


「……何で引いてるのよリル。あくまで場合によるわよ。無血革命なんて例もあるんだから」


「無血革命ですか!? 凄いですね……でも、どこの国ですか?」


「えっと……イギリスね。別名で名誉革命とも言われて……」


「……いぎりす……?」


 あ、しまった。


「えっと…………古代の王国よ」


「おおっ! お前がよく口にする古代語のルーツか?」


 だああ! メモ帳持ってリルが迫ってきたああ!


「そうよそうよ! このイギリスが古代語のルーツ!! また思い出したら教えてあげるわよ!」


「わかった! ……ああ……私の憧れの国の名前がようやく……!」


 そんなトリップするほどの事かな!?


「……イ……イギリスですって?」


 ……ん?


「……名誉……革……命……?」


 ……もう一人トリップしてるかな……?


「ヴィー! どうしたの? ヴィー!」


「わひゃい!? ……な、何ですか?」


「いや、何かブツブツ呟きながら天井を見つめてたから……」


「……あ、はい……イギ……リスでしたよね? あと名誉革命…………何か聞き覚えがあって………………駄目です。思い出せませんね」


 ……まさか……。


「ヴィーって……異世界人と会話したことあったり……する?」


「………………あ! そうです! それです!! ……随分昔の書物に『異世界人との対談』というものがあって……その中に出てきたはずです」


「……その書物はどこに?」


「魔王様の書庫にあるはずですが……何故サーチがイギリスや名誉革命のことを?」


「……また今度話すわ……」


「…………わかりました」


 ……この時、ヴィーの頭の蛇達が私を凝視していたことには、全く気づかなかった。



 スケルトン伯爵に「我が家にしばらく逗留しませんか? その方が安全かと」と勧められたものの、丁重にお断りした。

 ホネホネ屋敷「スケルトン伯爵邸ですよお!」……を出て私達は旅館へ向かう。


「……何で伯爵は必死に自分の家の名前を叫んでたんだ?」


 ……たぶんエスパーなのよ。


「サーチ。どうしてスケルトン伯爵の申し出を断ったんですか? 旅館よりは安全なのは、間違い無いと思いますけど……」


「……エイミア。そっと≪電糸網≫(スタンネット)を広げてみなさい」


「……? わかりました」


 エイミアがさっそく≪電糸網≫(スタンネット)を広げる。私達の肌を微弱な静電気が駆け抜けた。


「…………え……一人……二人…………五人…………私達尾行されてるんですか!?」


「しっ。声が大きい…………たぶんスケルトン伯爵は帝国警備隊からマークされてるわね」


「そ、それじゃ……」


「あのまま私達がスケルトン伯爵の家に滞在することになったら……ニ、三日のうちに踏み込まれてたわね。罪状は『指名手配犯を匿った罪』ってとこかしら」


「ひええ……」


「スケルトン伯爵も警戒はしてるんでしょうけど……下手したら親切心が裏目に出るとこだったわね」


「いいのか、本人に伝えなくても?」


「下手に戻ったりすれば怪しまれるだけ……」


 太陽を見て。


「……まあ……あとは旅館でゆっくりしましょ」



 ……その三時間後。

 旅館でゆっくりしてるはずだった私達は、ある理由(・・・・)でどうしてもスケルトン伯爵に会わなくてはならなくなった。

 私とエイミアが屋根伝いに、リルとリジーとヴィーは地上から忍び込む。



 ひゅっ

 たん


 よし……誰もいない。


 どびゅっ!

 ずっだあん!


(うるさい! もう少し静かに来なさい!)


(だ、だって……サーチが速すぎるんですよ!)


(速い速くないは関係ないの! 要はひゅっ! といってたん! なのよ!)


(意味わかんないですよおおお!!)


「おい。何か音がしなかったか?」


(やばっ!)


「猫じゃないのか?」


(そうそう! 猫よ猫!)


「にゃ、にゃお〜ん」

(バカッ!)

 ばこん!

「あにゃあ!」


(下手なモノマネなんてしないの! 余計にバレるじゃない!)


「猫同士のケンカじゃねえかよ。人騒がせな……」

「最近盛ってるからな……」


(へ?)


「それよりも北側だろ。あっちは裏通りだから、侵入される確率も高いからな」


「わかったわかった……さっさと交代時間になってほしいもんだ……」


「……交代したばっかだろ……」


 ……エイミアが意外なお手柄……。


(………………)


(悪かったわよ……まさかアレで誤魔化せるとは思わなかったのよ……)


(………………)


(だから! 悪かったって)「うぼおっ!」


(……ふんっ!)


 ぐふ……いいパンチだわ……。


(さっきの一発で舌噛んだんですけど! 痛いんですけど!)


(なら薬草でも噛みなさい)


(ひど!?)


 傷には抜群に効くわよ……苦いけど。



 カチャカチャ

 ギイ……


(よし、侵入成功……)


 カチャカチャ


(サーチ、リル達も来たみたいですよ)


(いいタイミングだわ)


 カチャカチャ

 カチャカチャカチャカチャ

 ガチャガチャガチャン!


(……開かないみたいですね……)

(……下手に音をたてられたら厄介だから、内側から開けましょ)

(はーい……今開けまーす)

(あ、ちょい待ち! こういうときは開けた途端に)


 ガラッ


(みんな、開きま)「ひぎゃ!」


「あ、あれ? 窓が……ってエイミア!?」


「何でエイミアが内側に!?」


「そ、それより……顔面に蹴りが極ったぞ……」


(バカッ! 声が大きい!)



「おいっ! 今物音がしたぞ!」


「まさか侵入者か!?」



 ぎゃあああ! 中の警備兵に見つかったじゃないのおおお!


(早く入って入って!)

(エイミアが完全にのびてるぞ!)

(ヴィーお願い!)

(わかりました!)

(早く行って! この先のはずだから!)


 ダダダダ……


(………………)


「…………おい! 窓が破られてるぞ!」


「侵入者だ! 探せ!」


 ダダダダ


「……よっと」

 ガッ!

「がふっ!?」


 ドサッ


「なっ!? 貴様あ!」

「おっと……ほい」

 ずむっ!

「ぐふうっ!」


 バギィ! ドガ!


「…………ぁっ…………」


 ドタ……


「……よし」


 追っ手は片付けたから……合流しますか。



「……あった」


 開きっ放しのドアから明かりが見える。家族は地方へ避難させてるって話だから……あそこがスケルトン伯爵の部屋かな。


「……みんな、無事?」


「……サーチですね。ええ、皆大丈夫です……一応(・・)


 ……一応?

 気になって部屋に入ると……。


「エイミア……リル……リジー……ヴィー。なんだ、みんな無事じゃない」


「ええ。私達は(・・・)無事なんですが……」


 私達は……? 私達以外が無事じゃないの……って!


「スケルトン伯爵!? な、何で石化してるのよおおお!!」


「……私達が部屋に入ったら……剣抜いて攻撃してきまして……」


 そりゃ覆面被った四人組が押し入ってきたら、誰だって必死に抵抗するわな!


「……私達じゃ防ぐので精一杯で……やむを得ず、ヴィーに石化してもらった」


 ………………。

 後でスケルトン伯爵に謝り倒そう。



「「「「「申し訳ありませんでした!」」」」」


 ……スケルトン伯爵の石化が解けると同時に、私達はジャンピング土下座をした。


「!?……な、何で君達がここに? って何故土下座を?」


 私が事のあらましを説明した。


「あ、あなた方が侵入者だったのですか!?」


「「「「「申し訳ありませんでした!」」」」」


「私を石化したのもあなた方なのですか!?」


「「「「「申し訳ありませんでした!」」」」」


「うちの警備兵に重傷を負わせたのも!?」


「「「「サーチです!」」」」

「って、そこだけ強調するなあ!」


 ……等のやり取りの末、何とか許してもらえた。


「……そういえば……何故我が家に侵入を?」


「スケルトン伯爵の家の周りは、完全に見張られてますよ」


「……やはり……ですか」


 しばらく頭を抱えて。


「そうだ、肝心なことを忘れていた…………で、何の用でしょうか?」


「……じ、実は……」

「私達の泊まっていた旅館が……」

「警備隊に見つかってしまいまして……」

「危うく捕縛されかけまして……」

「……ですから……」

「「「「「やっぱり泊めてください!」」」」」


「……そ、そんなくだらない用件の為に私は石化されたのですかっ!!」


「「「「「申し訳ありませんでした!」」」」」


 ……今日だけで何回ジャンピング土下座したかしら……。

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