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第四話 ていうか、久々に出会ったホネホネ男爵の協力を得て、本気で帝国に「メッ!」

「あの……昨日の夜に一体何があったんですか……?」


「酔っぱらったヴィーの艶やかな騒ぎむぐぐぐ」

「な、何にもなかったぜ? ヴィーが通行人を石化しまくったなんむぐぐぐ」

「本当に何もないですよ? くだらないダジャレ連発して失笑されむぐぐぐ」


「何なのよこのムカデ構造は!?」


 口を塞ぎにいったのがそのまま失言を繰り返して、こうなった。


「もういいです! 聞きたくありませえん!」


 そのほうが賢明かと。

 ……ヴィーが寝てる間に勝手に身体測定しました、なんて……言えないわね。


「そうでした! サーチったらヴィーが寝込んでる間に勝手にんぎいあああ!」

「だから余計なことを言うなって言ってるでしょ!」


「ちょっと、サーチ!」


「気にしないで。何もなかったのよ」


「でもエイミアが」


「何もなかったのよ」


「あ、あの……」


「何もなかったのよ」


「……はあ……」


 よし、口封じ完了。


「でも……いいんですか? ……エイミアが大変な事になってますけど……」


 へ?


「エイミア! おいしっかりしろ!」

「ぶくぶくぶく……」


 ぎゃあ! 泡吹いてるぅぅぅ!


「ごめんエイミア! 後ろ蹴りの当たった場所が悪かったのかな……」


「サーチ姉、当たった場所……」


 リジーが指差す先は……。


「しかも直撃(クリティカルヒット)


 きいああああ!


「とにかく治療院! 治療院へ運ぶわよおおおっ!」



 ……結局大したことはなかったようで、回復魔術をかけてもらったらすぐに意識が戻った。

 その直後に強烈な電撃をしこたま食らったのは、言うまでもないと思う。



「……ずいぶんこんがりと焼けましたね、サーチ」


 ほっといて。


「す、すいませんサーチ……ちょっとやり過ぎました……」


「いいのよ……私が悪かったんだし……」


 ただエイミアの三倍近く、治療に時間がかかっただけだし。


「笑い事じゃなくヤバかったぞ……命的に」


「ひえっ!? ご、ごべんばばいザーヂ……びえええええええっ!」


「ああもう、泣かない泣かない……気にしてないからヨシヨシヨシ」


 なんてことをしながら街を歩いていると。


「……おや? もしかしてサーチ殿ではありませんか?」


 不意に声をかけられた。私よりかなり高い位置からの声だったけど……。


「上ですよ、上」


 そう言われて見上げてみれば、善良そうな男性が手を振っていた。


「…………誰?」


 男性はカクンとなった。


「お前が忘れるってどういうことだよ!」


「へ……? ………………………………ダメ。わかんない。あんな特徴のないモブ顔はさすがに印象にない」


「おおい!? 久々にあった相手に、言葉の槍をグサグサ突き刺すなよ!」


 あ、ごめんなさい。

 男性は「特徴のない……」「モブ顔……」と呟きながら〇| ̄|_となっていた。


「……マジで誰?」


「闘技大会での対戦相手だよ。細剣(レイピア)使いに苦戦しただろ?」


 ……あ!


「わかった! ……えと……ホネホネ男爵だ!」


「違いますっっ!!」


 あ、全力で否定された。


「私はスケルトン伯爵です! ホネホネでも男爵でもありません!」


「伯爵でしたか。失礼しました」


「ついでに特徴のないモブ顔でもないですよ!」


 あら、しっかり気にしてたのね。


「重ね重ね失礼しました……で、何か用かしら?」


「今のあなた方に有用な情報を提供できるかと思いまして」


 っ!!


「何のことかしら。私達は観光に来てるだけだから……美味しい店でも紹介していただけるの?」


「そうですね。主に蛇料理などを(・・・・・・)


 ……こいつ……。


「わわわ私達に有用な情報!? 私達指名手配なんかされてませんよ!!」

「蛇料……! いやあ! 私は共食いなんてできません……!」


「……早く我が家に入られたほうが良いかと。ボロを出すとかいう騒ぎでは済みませんよ?」


「はいぃ! リル、リジー! その二人をスケルトン伯爵の家まで引っ張り込むわよ!」


「らじゃ!」「急ぐぞ!」



 ……騒ぎを聞きつけて警備隊がやってくる寸前に、何とか撤収できた。



「指名手配なんて知りませんん! 知らないったら知りません!」

「エイミア! もう大丈夫だから落ち着け!」

「蛇を食べるんですか!? 私も餌なんですかあ!?」

「誰もヴィー姉を食べたりしないから」


「……騒がしくてすいません……」


「いやいや、相変わらず仲が良ろしいようで」


 仲が良いのとリルのバストは不変「ギロッ」……すいません。


「で? 何か事情がおありのようですが……」


 ここまで来て、しらばっくれても仕方ないし。


「そちらも事情がおありのようですね?」


「そうね……ちょっと待って」


 一応周りの気配を確認する。


「大丈夫ですよ。この部屋は人為的にも、魔術的にも、盗聴できない仕組みになってますから」


「あ、そですか」


 早く言ってよね。


「まずはこちらから話しましょう。私……いや、我々改革派は現在の帝国を見限っています」


 あらら。こりゃまた予想を超える過激発言で。


「以前にエイミア殿が使用してみえた〝知識の聖剣〟(アカデミア)が本物であることは明白」

「ぶふっ!」


 エイミアが飲んでいた紅茶を吹き出す。バレバレじゃないの!

 咳き込むエイミアをヴィーが介抱してくれる。ていうか、そのまま連れ出してほしいんだけど!


「……まあ〝知識の豆剣〟(マカデミア)の辺りですでにバレバレでしたが」


 ……あれで誤魔化せるわけないか。


「この件により、現皇帝が勇者の子孫で無いことは決定的となり、もはや皇帝が皇帝たる理由は名実共に無くなりました」


「……要は改革派が革命起こして、皇帝をぶっ倒すってことでいいかな?」


「…………………………まあ、概ねその通りです」


 ……こんだけ内政が荒れてれば革命の一つや二つ、起きても不思議じゃないわね。


「そちらが腹を割って話してくれた以上……私達は何も言わずサヨナラ「止めてください本気で洒落になりませんので」……冗談ですから」


 スケルトン伯爵が涙声だったので、さすがにマジメな話を。


「じゃあ私からは旋風の荒野トルネード・ウェルデネスでの話を……」



 流石に魔王(ソレイユ)やモンスターが絡んでる、とは言えないために「稀少種の獣人達が帝国によって迫害されている」ということにした。



「ということは、先日捕まった半蛇人(ナーガ)も……」


「はい、モンスターではありません。私と同じように稀少種の獣人です……」


 ヴィーは「獣の血が強く出てしまい、半身が蛇のようになった娘」と説明した。


「成程……あなた方は人目を忍んで、細々ではあっても幸せに暮らしていたのですね……」


 細々とではなく、相当お気楽な暮らしだったと思う。


「私達は以前の暮らしを続けたいだけなんです! そこへ帝国軍が……」


 泣き崩れるヴィー。演技でも何でもなく「以前のようにお気楽に暮らしたい!」という主張のため、ウソではない。

 ただ帝国軍がまだ(・・)来てないだけで。


「……何という事だ……」


 スケルトン伯爵は深い深いため息を吐いて、頭を抱え込んだ。めっちゃ騙してごめんなさい。


「やはり、帝国をこのままにはしておけない……! わかりました、私達が全面的にヴィー殿を支援いたします」


「ありがとうございます……うぅ……」


 涙を流すヴィー。

 たぶんスケルトン伯爵は「辛い思いをしてきたのだな……」てか考えてるんだろうけど。

 たぶん「こんな良い人を騙してごめんなさい!」ていう懺悔の涙だと思う。

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