第二十四話 ていうか、出発しようとしたら……新たな仲間が。
次の日の朝。
村の出口まで着てみると。
「あ、おはようございます」
朝から頭の蛇がウネウネ元気な、メドゥーサのへヴィーナと。
「さあ、朝の訓練! 岩に向かって、つっこみ百発!」
「うしっ! 何でやねん! 何でやねん! 何でやねんって、何で岩に何でやねんせなあかんねん!」
「一念岩をも通すって言うのよ! 何回も何回も念を込めれば、究極のつっこみが完成するのよ!」
「つっこみのどこに念がこもってるのよ!?」
「ずっと『何でや念!』て言ってたでしょ!」
「それ『念』じゃありませんから! ひらがなの『ねん』ですから!」
……朝からネタの打ち合わせ? みたいなことをやってるクルクとル・マキ。
「……何やってるんだか……」
「あ、この二人はいつもこんな感じですので」
ニコッと笑顔が眩しいへヴィーナ。頭がウネウネしてなければモテそうなのに。
あ、よく見てみればスタイルもいいな。胸もなかなか大きいし。
「……あの……?」
お腹もちゃんと締まってるし……あ、筋肉もなかなか。
胸のやわらかさも……。
「あひゃあ!? ちょっとサーチさん!?」
お、悪くない。かなりの美乳っぽい。
形はどうかな?
がばっ
「んぎゃあああああ! セクハラ許すまじぃぃぃ!!」
ごめしっ!
「あきゃあああああ!」
ああああ頭が割れる!
めっちゃくちゃ痛いいいいいっ!!
「あ、すいません……だ、大丈夫ですか?」
「ううい……頭がガンガンするぅ……」
ひ、久々に涙が出た……。
「で、でもサーチさんが悪いんですよ! いきなり人の胸をまさぐったりするから……!」
はだけた胸元を直しながら、私に抗議してくるへヴィーナ。
「ごめん……昨日の流れで、つい……」
「昨日の流れ?」
「あ、あれか…………昨日このメンツで『誰が一番ビキニアーマーが似合うか!?』みたいなことをやってたんでな……」
へヴィーナは合点がいった顔をして。
「ははあ……魔王様ですね?」
「……まさかソレイユ……へヴィーナ達にもビキニアーマーを?」
へヴィーナは苦笑いをして。
「はい……私もクルクルマキの二人も……というより村人全員、被害に遭いましたから……」
「……御愁傷様です」
「へ? 何でですか? ビキニアーマーってなかなか機能的ですよ?」
……へ?
意外と好評価?
「軽いですから動き易いですし、この辺りは暑いのでちょうどいいですし……『狩りに出る!』って言って出掛けていった人達は全員ビキニアーマーを装備して行きましたよ」
「ホ、ホ、ホントにぃぃぃぃ!?」
がしっ!
「きゃあ! こ、今度のセクハラは熱烈なハグですか!?」
「聞いた!? あんた達聞いたよね!? やっぱりわかってくれる人達はいるのよ! ……ああ……ここは天国? 極楽浄土? パラダイス? ……もしかしたら理想郷なの?」
「……何をブツブツ言ってるんだか……セクハラ言われてたぞ〜!? おーい? サーチぃ? …………こら! おい!」
「んん〜……ティル・ナ・ノーグ……桃源郷……」
「………………………………ダメだ、こりゃ」
「あの……本当にビキニアーマーを着たんですか?」
「はい。私は好きですね〜……ね、クルク」
「はい。私も好きですね〜……ね、ル・マキ」
「「そんな私達は! 二人あわせて……クルクルマキで〜す!!」」
「……? ……あの……リル、どうしたらいいんでしょうか……」
「…………笑ってやれ……笑ってもらえることで、あの二人は救われるんだ……」
「「お願いですから可哀想な人認定しないでください!」」
「もしもーし? サーチさあん?」
……うーん……人類みんなビキニアーマー……エヘヘ。
「……ごめん。ちょっとトリップしてたわ」
何だろう……世界の全人種がビキニアーマーで統一されて、男までビキニアーマー!? ……て辺りで現実に戻った。
「それよりサーチ……この三人もついていくって言うんだが……」
へ!?
「……あんた達が?」
「はい。私は魔王様から『サーチ達を助けてあげて』と頼まれまして」
「私達は!」
「単なる!」
「「好・奇・心!!」」
「「あはははははは」……って、あれ? ここ笑うとこですよー? さあ、笑って笑ってあははははー!」
……どこに笑う要素があるの?
「笑わないの? サーチさん笑わないの? ……おっかしいなー?」
「違う違う! 私達がおかしいんじゃなくて、これで笑わないサーチさんが変なのよ!」
「あ、なーる……」
ぶちぃ!
「ぶっ殺すっっ!! 骨と皮だけ残して、お化け屋敷に飾ってやるぅぅっ!!」
「ちょっと落ち着け、サーチ」
「落ち着きたいけど! あの二人を木っ端微塵にしてから落ち着くわ!」
≪偽物≫でミスリル製のトゲハンマーを作って振り回す。
「おい! エイミア、リジー! サーチを取り押さえるの手伝ってくれ!」
「あ、はい! ……リジーは右足を!」
「らじゃあ!」
「はああなああせええっ!」
私を見て、そろーりそろーりと逃げ始めていたクルクルマキの二人は。
「あ、足が……!」
「動かない……!」
「……騒ぎの原因が逃げちゃ駄目ですよ? ちゃんと謝りましょうね?」
……へヴィーナの≪石化魔眼≫で足を石にされ、逃げられなくなっていた。
「ナアアアイス!! へヴィーナ!! うりゃあああっ!!」
「「ひっ!! ひええええ!!」」
力ずくでリル達を振りほどいて攻撃ぃ!!
すぱーん! すぱーん!
「いひゃ!」「あひゃ!」
「……ハリセンで勘弁してあげるわ」
トゲハンマーはヤバいか……と思い直して、ハリセンにチェンジしたけど……。
「クルク!? クルク!! ……ああ、ル・マキまで!? しっかりして! ちょっとー!」
あれ……? 完全に目を回してる……?
「あれ……? ハリセンだから、そんなにダメージはないはずなんだけど……?」
「お前バカか! いくらペラペラの紙みたいなモノでも、ミスリル製だろ!!」
あ、そうだった!
モンスターはミスリルが苦手だったんだ!
「ご、ごめんなさい! ミスリル製だから、モンスターにはキツかったわね……」
「え゛!? ミスリル!? ……い、いや……きいあああああ!!!」
……へヴィーナは一目散に逃げていった……。
「ぴーぽーぴーぽー」
リジーとエイミアがクルクを運んでくれてる。
「……何なんだよ、あれ……」
「…………気にしないで」
……なぜリジーが救急車を知ってるのか……謎だ。
「まあいいけど……モンスターがいる間は、ミスリル出すなよ?」
はい。すいません。
て、この辺りよね?
「へヴィーナ! 治療所ってもうすぐー?」
「…………そこを曲がってすぐの家ですー!…………」
「……だそうよ」
「あそこまで離れなくても……よっぽどミスリルが苦手なんだな」
……ただいまへヴィーナは豆粒並みに見えるほど離れています。
……ホントにごめんなさい……。
「すいませ〜ん……二人ほど治療をお願いしま〜す」
そのままクルクルマキの二人を治療所に預ける。
「……ただ気絶してるだけだな。大したことはないよ」
……とのことだった。
マジでホッとした……。
「……何かいろいろあって遅れたけど……今度こそ出発するわよ……」
……あの二人が来れなくなったのは、正解だったのかもしれない……。
「…………私もついていきますからー!…………」
「もうミスリル出さないから! お願いだから近くに来てー!」
……こうして。
出発予定時間を四時間ほどオーバーしてから、ようやく村を出た。
へヴィーナが合流してくれたのは……約二時間後でした。
……マジですいませんでした……。
あと一話と閑話で新章です。