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第十九話 ていうか、大歓迎ムードの最中、エロジジイ成敗成敗♪

 ワイワイ、ガヤガヤ


 ………………。

 ……ヒジョ〜に居心地が悪い……何なんだろう、この光景。

 隣を見れば……。


「私だってさあ、好きで頭から蛇を生やしてる訳じゃないのよ!? 私だってさあ、ポニーテールとか! ドレッドヘアーとか! 憧れるわけよ!? だけどよ? だけどよ? 実行したら頭の蛇が『殺す気か!』 って言ってハンスト始めたりするのよ……」


 ……完全に出来上がってくだを巻くメデューサに辟易してるリル。

 その隣では……。


「何よこれ!? 反則よね! 反則じゃない! どうやったら、こんなにでっかくなるわけ!?」

「あの……揉まないで下さい……」

「なーに言ってんのよ! これだけの兵器(・・)を二つぶら下げてるんだから、男を引っ掛けまくってんでしょ!?」

「引っ掛……! わ、私そんな淫らな事してません!」

「淫らだって! 結構ウブなのね……ウフフフ」

「だから掴まないで下さあい!!」


 ……左右に陣取った半蛇人(ナーガ)とろくろ首に(物理的にも会話でも)胸を弄ばれて、悲鳴をあげるエイミア。

 ……そして私の正面では……。


「この錆具合に、全身に降りかかった血飛沫。何よりも……年代を重ねてしかなり得ない、この全身の色。これこそが呪われた武具の美というもの」

『こふーっ』

『ガチャガチャ』

『ぎーい、ぎーい』

「わかる? あなた達はまだ意思を持って日が浅い。だけど戦歴と年代と血飛沫を重ねることによって、この領域までたどり着けるのだ!」

『こふーっ! こふっ!』

『ガチャガッチャ、ガチャ!』

『ぎぎぎぎーい!』

「わかる? わかる? 呪われた同志達よ!」


 ……どうやら意思を持ってるらしい……サビサビの鎧と、刃こぼれしまくってる剣、凹みだらけの盾。そんな不気味なモノが浮遊してる真ん中で「呪われアイテムの美」について語るリジー。


「………………」


 そして、見上げてみれば……。


『二十三年ぶりの冒険者を歓迎します!』

『友好! 平和! 魔王様バンザイ!』

『秘密の村に幸あれ!』


 ……たくさんの横断幕。

 もう一回言おう。

 何なんだろう、この光景。



 秘密の村の住人に捕まって……もとい案内されてる私達は、あちこちで歓迎された。

 紙吹雪を撒きまくる有翼人(ハーピー)、涙を流して喜ぶゾンビのお婆さん、意味があるかはわからないけど規則正しく跳び跳ねるスライムの群れ。

 そんなぐちゃぐちゃな状態のまま『歓迎会々場』とデカデカと看板が掲げられた建物に連行……もとい案内され。

 なし崩し的に現在に至る。

 何回でも言おう。

 何なんだろう、この光景。



「ふぉっふぉっふぉっ…………どうじゃな、お客人。楽しんでおられるかな?」


 いかにも「わし長老」みたいな声が私にかけられた。


「ええまあ………………って、どこ?」


「ここじゃよ」


「………………???」


 声しか聞こえないんだけど……?


「ここじゃよ、ここ」


 さわさわ


「きゃっ! ど、どこ触っとるんじゃああああっ!!」

 どごっ!!

「へぐぅ!!」


 え? あれ?

 何にもいないのに手応えがあった……?


 ばきゃ! メキメキ


「ちょ、長老おおおっ!」


 壁が……人型にめり込んだ。

 ……まさか……。


「あの……長老さんって……種族は何ですか?」


「長老ですか? 透明人間ですよ」


 そんなのあり!?



「ふぉっふぉっふぉっ! 良い蹴りとケツじゃったわうひぃっ!」

「………………」

「ワシが悪かった! じゃからナイフを仕舞ってくれえええ!」


 ……たく。透明人間でエロジジイって最悪じゃないの。


「じっとしてなさいよ! それそれそれ!」


「な、何じゃ! 何をするんじゃ!」


 ちゃんと姿がわかるように、包帯をぐるぐる巻きにしてやる!


「……よし……私達が滞在してる間は取っちゃダメよ!!」


「……できれば、ずーっとそのままがいいかな……」

「あ、私も賛成」

「私も」

「私も」


 ……ていうか、住人の女性の過半数、軽く越えてるじゃないの!


「このエロジジイ、あなた達にも何かしてるの?」


 ……女性陣は声を合わせて。


「「「「ほぼ毎日」」」」

「………………よし、殺そう」


「待て! 待ってくれええ! 『そこまで散歩しよ♪』並みに気軽に殺そうとするでない!」


「……は? 散歩? 『呼吸しよ♪』並みよ」


「……ワシはそこまで殺意を抱かれるほど、憎まれることはしとらん」


「毎日覗きにセクハラしてりゃあ、殺意抱かれても文句言えないわよ!」


 パチパチパチパチ!


 女性陣の拍手喝采。

 ……こんだけ恨まれてても、長老ってできるのね……。


「……うぬう……悔しければワシから一本取ってみい!」


 ………………。

 あ、一気に静かになった。


「……もしかして……一番強い人が長老になるの?」


 近くにいたゾンビ美人に聞いてみる。


「……ええ……魔王様が『一番強いヤツが長老になれば文句ないでしょ♪』と仰られて……」


「………………ソレイユも余計なことを………………」


 いや……待てよ。


「……じゃあ……誰でもいいから勝てばいいのね?」


「え? は、はい……理屈では」



「……準備できそう?」


「大丈夫ですが……これで勝てるんですか?」


「ええ。簡単にね♪」


 ニッコリと微笑んでみせる。あとは……タイミングよね。



「温泉〜♪ 温泉〜♪ 温泉へレッツゴ〜♪」


 会場を出て温泉に向かった。ソレイユのことだから、温泉作ってないかな……と思って聞いてみたら、案の定。


「温泉ですか? ここを出てすぐの建物ですよ」


 やた♪

 温泉があれば全て解決なのだ♪


「温泉〜♪ 温泉……(来てるわね)」


 ……よし、順調順調。


「ふんふんふ〜ん♪」


 ビキニアーマーを脱ぎ捨てて下着も脱いで♪


 ガラッ


「……ふわあああ♪」


 すげー!

 純日本式! これぞ露天風呂!


「イヤッホウウウッ!」


 ざっぱあああん!


 普通なら絶対に叱られる、温泉飛び込み敢行!


「はあああ♪ 気持ち良い〜……」


 ……少しだけしか開けてなかった扉が動いた。

 確実に来てるわね……!


「ふうう……」


 肩までどっぷり浸かる。しばらく温泉を堪能しながら、最大限の警戒態勢を維持。

 徐々に近づいて来てる。あと三歩前なんだけど…………仕方ない。姿勢を変えて見えやすくする(・・・・・・・)

 あ、また進み出した。

 一歩……二歩……三歩!

 

「今よ!」


「えい!」「そりゃ!」「たー」


 ≪化かし騙し≫(トリック)で姿を隠していたエイミア、リル、リジーがバケツの液体をぶっかける!


 バシャバシャア!


「うぬ!? ……な、何じゃこれは!?」


「引っ掛かったわね! 私が温泉に行くって言えば、絶対についてくると思ってたわよ!」


「な、何故じゃ! と、とれん!」


「当たり前よ! そのインクは魔術用の特別製。一年は落ちないわよ」


 主に屋外の結界を書く為のインクだそうだ。


「な、何という事をしてくれるのじゃ!」


 エロジジイの抗議は全部スルー。


「さあ皆さん! お待ちかねの下剋上ターイム!!」


 インクにまみれて丸見えの透明人間なんて、怖くとも何ともない。


「今までの恨み……」

「ついに晴らす時が……」


 いろんな武器を携えた女性陣がエロジジイを囲む。


「ま、待て! 待つのじゃ! この事を魔王様が知ったら……」


『無問題〜! やっちゃえやっちゃえ♪』


 私の念話水晶から聞こえてきた魔王様(ソレイユ)の声。

 この瞬間、エロジジイを守るモノはなくなった。


「レッツおしおきタイム!」

「「「わあああああっ!!!」」」


「ま、待て! 落ち着けぶごっ! げふっ! うぐぐぐ……! ぎいああああああああああああ!!!」


 ……よし。解決ね。


「おいサーチ」


「ん? 何?」


「お前、結局あのジジイに裸見られたんだぜ? いいのかよ?」


「よくはないけど……温泉の誘惑には負けるのだ♪」


「…………お前の貞操概念が分からん」

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