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第十八話 ていうか、もぐもぐタイムならぬカリカリむぐむぐタイム。

「……おい、スワリはどこへ飛んでったんだ?」


「………………ソレイユに急遽報告することができたんだって」


 ウソは言ってない。


「?? 何があったかは知らねえが……アイツも大変だな……」


「サーチ、リルー!」


 エイミアが私を呼びに来た。入り口が見つかったかな?


「どこにあるんですか? 秘密の村の入り口って」


「……へ?」


 ……どういうこと?


「……エイミアが聞き出してくれたんじゃ……」


「え? サーチが聞き出してくれたんじゃ……」


「「………………」」


「……ソレイユに連絡してみるわ」

「……もう一回よーく探してみます」


 ……リルが「お前ら何やってたんだよ……」と呟いたのはスルーした。



「……ダメ! 話にならない……エイミア、あった?」


「いえ……何にもありません」


 ……困った……マジで困った。


「ソレイユは出ねえのか?」


「念話自体は繋がってるわよ……けどソレイユは気付きそうにないわね」


「……大声で呼んでみれば……」


「イヤよ。私はパス」


 リルとエイミアは訝しげに私を見ていたけど……。


「……ようわからんけど……なら私がやるわ」


「あ、私も。二人がかりなら声も聞こえるでしょうから」


 そう言って私の念話水晶を持っていった。


「ちょっと! 今は止めたほうが……」

「大丈夫だよ」


 ……行っちゃった。声かけることできるかな……向こうから聞こえてきたのは…………まあ…………いろんな音(・・・・・)だったから……。


 ……五分後。

 顔を見事なくらい真っ赤に染めた二人が戻ってきた。念話水晶を投げ返しながら、リルが噛みついてくる。


「……てめえ……わかってたんなら言えよ!」


「だから止めとけって言ったじゃない! 最後まで話を聞こうとしなかったのは、あんた達でしょうが!」


「……あの……どうしましょう……困りましたね」


 エイミアが眉毛を「へ」の字にしている。ソレイユがダメでスワリもいない以上は……あーもー! 頭に糖分が足りない!


「……ふう……少し休憩しながら考えましょ。腹ごしらえをすればいいアイデアが浮かぶかもしれないし」


 そう言って無限の小箱(アイテムボックス)から、お茶や茶菓子を出して地面に置いた。

 いわゆる「もぐもぐタイム」だ。



「……辺り一面荒野だから、建物があればすぐにわかると思ってたんだけど……」


 クッキーをかじる。うん、焼き加減最高。


「地下でしょうか?」


「ムリでしょ。こんな広大な荒野に地下への入り口を隠したら、見つけることはほぼ不可能よ」


 エイミア好みの甘いミルクティーを準備しながら答える。


「……確かソレイユの本拠地も旋風の荒野トルネード・ウェルデネスなんだよな? 城くらいありそうなもんだが………………おい、リジー。お前の≪化かし騙し≫(トリック)で城や村を隠すなんてできるか?」


 猫舌なリルは、ちょうどいいくらいに冷ました紅茶を啜りながら、リジーに聞く。


「カリカリむぐむぐカリカリむぐむぐ…………時間をかけて準備さえすればできる」


 ……キツネっていうよりハムスターね……。


「じゃあ魔術で隠してあるのか……?」


 魔術で隠す……か。

 ……そうか、隠すよりは……。


「……無限の小箱(アイテムボックス)と同じことはできないかな?」


無限の小箱(アイテムボックス)と同じって…………そうか、異次元に城や村を作って……」


旋風の荒野トルネード・ウェルデネスの中心に入り口を固定した……って事ですか」


「カリカリむぐむぐ……なら、入り口に≪施錠≫(ロック)がかけられてる可能性が大」


 だから何なのよ「カリカリむぐむぐ」ってのは……。


≪施錠≫(ロック)がかかってるのなら、解除するには合言葉が必要……だったわよね?」


「そうです。サーチ覚えてたんですねあいたっ」


「……必要だと思ったことはちゃんと予習復習してたわよ。毎日寝てたわけじゃないからねっ」


「しかし合言葉となると…………余計にソレイユと連絡とらないとムリだな……」


 ……そうよねえ……合言葉なんて想像がつかないし……。


「適当に言えば、そのうち当たりませんか?」


 適当に言って当たるような合言葉にしたら≪施錠≫(ロック)の意味ないでしょ!


「じゃあ適当に言ってみる……開け〜ボラ」


 それを言うならゴマだよ! ていうか、何で知ってるのよ!


 ………………ブッブーッ!


「な、何だ? 今の音?」


 こ、これは……!

 前世のクイズ番組の不正解の音……!


「……! ……リジーが危な」

 すこーんっ!

「痛っ! 何か落ちてきた……!」


「……って間に合わなかったか……ていうか、タライ?」


 何故?


「じゃあ私も…………開け〜クマ」


 だからゴマだって!


 ブッブーッ!


「またか! ……エイミア!逃げ」

 ごわあああああんっ!!

「んきゃああ! 痛い響く痛いい!」


 ……今度はデカいのが落ちてきたわね……。


「次は私か……」


 いやいや、順番とかないから!


「じゃあ……………………開け〜…………うーん……」


 ……言う前に決めときなさいよ……。


 ブッブーッ!


 あ、時間切れ。


 ごぎんっ

「んっぎゃああああ! いで! いっでええええっ!」


 すっごい鈍い音がしたけど………………うわ、トンカチ。


「……サーチ姉、私の仇を取って!」


「ええっ!? ……変なプレッシャーをかけないでよ……」


 ……間違いなく「開け〜ゴマ」ではない。うん、これは断言できる。ソレイユの性格を考えると……難しい合言葉はないだろう。村人が間違えたりしたら目も当てられない。

 ……なら……同じ合言葉を…………! そうか!


「失礼します。中に入らせてもらっていいでしょうか?」


 ぴんぽーん!


「な、何か違う音がしたぞ?」


 バキバキバキッ


 く、空間にひび割れが!?


「な、何か見えてきました…………『ようこそ! 秘密の村・入り口』…………凄いです! サーチ当たりですよ!」



 まあ……よく考えてみれば、旋風の荒野トルネード・ウェルデネスに入る時の合言葉と同じ可能性が高かったのよね。


 一。触るだけで絶命必死の不可視の風の防壁。

 二。広大な荒野の何処かにある、見えない入口。


 ……これだけでも十分な警備態勢だ。わざわざ難しい合言葉にする必要はない。スワリとかだったら合言葉を間違える可能性もあるし……。



「じゃあ片付けてから秘密の村へ行くわよ。手伝って」


「「「はーい」」」


 各自のカップとソーサーをまとめて仕舞う。旋風の荒野トルネード・ウェルデネスから出たら川で洗うかな。

 クッキーの入った入れ物も片付けて、広げていた敷布のホコリを払って。


 ばんっ!


「「「まだ入ってこないのかああっ!」」」


「うわびっくりした! いきなり何!?」


 突然秘密の村の入り口が開け放たれ、半蛇人(ナーガ)やらメデューサやらたくさんのモンスターがワラワラと出てくる。


「こっちは村をあげて歓迎の準備をしてたんだ!」


 知るかっ!


「なのにいつまで経っても入り口を見つけないし……!」


 そんなにすぐにわかるかっ!


「ようやく入り口を見つけたと思えば、グズグズとして扉を開けようとしないし!」


 だから知るかっ!


「「「待ちわびた私達のことを考えてくれ!!」」」


 ……こいつら……単なる暇人か?

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