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第十二話 ていうか、世界一難しいダンジョンへ挑む準備。

「さあ〜勇者一行が揃った〜帝都を攻め滅ぼし〜新大陸の覇権を我が手に〜へぶうっ!」


「阿呆なことやってないで手伝いなさい!」


「は〜い」


 ……リジーにつっこみをいれながらも、背後に来ていた警備兵を蹴り倒した。



 合流してすぐに街の中に入ったら……。


「き、貴様らは闘武大会をめちゃくちゃにした賊ではないか!」


 あっさり見つかり。


「「「待てええええええええええっ!!!」」」


「待てと言われて待つヤツはいないぞ!」


「食事前の犬」


「うっ!」


「バカなこと言ってるんじゃないの!」


「「バカじゃない! 阿呆だ!」」


「関西人かあんたらはああああっ!!」


 ……なんて言ってる間に袋小路に追い詰められ。


「へっへっへ……もう逃げられなぶほっ!」


「な!? 抵抗するのかおごっ!」


「お、お前! ソコを蹴られるとどれだけ痛いかひぎゃんっ!」


「やめてあげてよぶぎぇ!」


 ……全員がある場所(・・・・)を押さえて地に伏すまで、そんなにはかからなかった。


「サーチ……そのレッグガードとクツ、洗っといたほうが良くない?」


 …………………………そうね。



 酔ったソレイユにバラバラに転移させられてから二日。

 いろんな奇跡によってわりと早く合流できた私達は、早速秘密の村へ行こうと思ったんだけど……。


「行くんですか? 何の準備も無しに? 旋風の荒野トルネード・ウィルデネスに?」


 ……珍しいエイミアからのつっこみに、全員口をつぐんだ。


「まずはソレイユに連絡をした方がいいんじゃないですか?」


「真っ先にしたよ。ケンタウルスが出て『二日酔いと魔力切れで寝込んでる』だとさ。いま〝繁茂〟が看病してるってよ」


 ……看病以外のことをヤってそうなので放置する。


「仕方ないわね。行きたくはないけど旋風の荒野トルネード・ウィルデネスへ行く準備をしましょ」

「……しゃあねえな」

「……腹括りますか」

「……うぃ!」


 ……リジーってズレてるのよね……まあいいけど。


「じゃあ役割分担! リジーとリルは情報収集! ちゃんと≪化かし騙し≫(トリック)してね」


「わかった。リジー頼むぜ」

「うぃ!」


 ……つっこむまい、つっこむまい。


「エイミアと私で食料や消耗品の買い出し」


「わかりました……私達も変装を?」


 エイミアの質問にニンマリしてサラシを取り出す。


「……………………はあ」


 ……エイミアは憂鬱そうにため息を吐いた。



「いったああああい! サーチ、キツすぎますぅぅぅ!」


「何言ってんのよ! こういうのは徹底的にやらないとダメなの! 徹底的に!」


 小さくなりやがれ! 小さくなりやがれ!


「な、何か邪念が含まれてません?」


 ……鋭い。



 私の頑張りによって、すっかりなだらか(・・・・)になったエイミアは。


「う〜……苦しいですぅ〜……」


 ……エイミアのヤツ……さらに大きくなりやがったわね……ていうか、胸のないエイミア、ビキニアーマーを着てない私。これだけで簡単に街に溶け込める私達はお手軽でいい。

 毎回≪化かし騙し≫(トリック)に頼らないと街を歩けないリル達には、帝都はやっぱり窮屈だと思う。


「ていうか、私もエイミアも別の種族とのハーフだから排斥される側なのね」


 する側になりたいとは一切思わないけど。


「でも私達は見た目じゃわかりませんからね……」


「あんたのこのチョロッと生えた角じゃわからないわね」


「チョロッとって……! サーチだって背中にチョロッと痕があるだけじゃないですか!」


 ちょっと! そんなに服を引っ張らないでよ!


 ビリィ!


「「あ」」


 ……ちょっと……。


「あ、あ、あうう……ごめんなさい……」


「……あんた≪充力≫(パワーチャージ)使ったままなんじゃないの? この服、一応防具仕様なんだけど……」


 あーあ……ハデに破れたわね……背中丸出しじゃない……ここをこうして、こう縛ってと。


 ギュッ! ギュッ!


 ……よし。これでOK!


「どう? 変じゃないでしょ?」


「……変じゃないですけど……ビキニアーマーと大差ないですよ」


「…………あんたが破ったんでしょうが」


 新しい服を買う暇もないので、このまま買い物を続行することにした。


「う〜……」


「何? 苦しいの?」


「い、いえ。大丈夫です……だんだん楽になってきましたから」


 楽に?

 慣れてきたのかしら?


「……まあいいか。じゃあまずパンから……」


 ビリ……


「ビリ?」


「え? あ、この音さっきから聞こえてくるんです」


「え? それって……」


 サラシじゃ……。


 ビリ……ビリビリビリぶちぃ!


「あれ? すごく楽になったんですけど……」


「ええエイミア! 前前前! 早く隠しなさい!」


 しっかり見えてるから! あんた白い服だから、しっかり透けてるから!


「……きゃ、きゃあふがっ!?」


「叫ばない! 余計に注目されるわよ…………仕方ないから物陰でブラ着けなさい」


「ふがふが……はあい」


 エイミアを連れて防具屋の路地裏に入る。そこでエイミアは無限の小箱(アイテムボックス)からブラを出して着け始めた。


「サーチ、ちょっと周り見てて下さいね」


「大丈夫よ……壁の向こう側に数人いるだけだから」


 エイミアがブラを着けるためにシャツを脱ぐ。

 すると。


 どぐわあん!


「きゃっ! な、何?」


「何か飛んできたみたいです、空から」


 エイミアの≪電糸網≫(スタンネット)に何か反応したらしい。何かが落ちた地点を調べてみると。


「空から……? 何よこの男」


 そこには、見るからに「街のチンピラ」を絵に描いたような人相の男がのびていた。


「……どうですか、サーチ」


「気絶してるわ……って早く着なさい! こいつが起きたらバッチリ……」


「おお……バッチリ……」


 …………ほらあ…………起きちゃったじゃない……。


「あ……あ……あ……」


「くぅぅ……感動……」


 わからないでもないけど、逃げたほうがいいよ〜。さて、私はさっさと逃げるわよ。



 屋根に避難すると。


「ぎゃあああああああああ!!!」


 バリバリずどごおおおんっっ!!


「我が人生に悔いなしいいいいぃぃぃぃ………………」


 ……変な遺言を叫びながら男が飛んでいった。



「たーまやーってくらい飛んでったわね」


「何ですか? それ……」


「何でもないわ……って早く着ろっての! これ以上騒ぎを増やすな!」


「はーい……」


 エイミアが着替え終わるころに、二人ほど私達に向かって走ってくる気配を感じた。たぶん……リジーとリルだ。


「この辺りだな……って、サーチとエイミアじゃねえか」


「やっぱりあんた達か……どうしたの?」


「さっき重要な情報を持つ男をぶっ飛ばしちゃった……てへ」


 てへ、じゃねえよ。重要参考人を逃がすなよ。


「で、この辺りに落ちてきたはずなんだが……知らねえか?」


 ……私とエイミアの視線が重なる。あいつだ。


「あ〜……その男でしたら……」

「あっちに飛んでった(・・・・・)


「と、飛んでった……? ま、まあいいや……いくぞリジー!」


「は〜い」


 ………………。


「……買い物しよか」


「……そうですね」

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