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第九話 ていうか、いよいよ帝国へ進撃?

「帝国を叩くにしろ秘密の村に向かうにしろ、また新大陸へ行くしかないわね……」


 ……あとでニーナさんに断りをいれとこう。もう向かってるだろうな……。


「となると、ソレイユの転移頼りね……ソレイユ?」


 あれ? いない。


「魔王様でしたら転移魔術の準備に向かわれました」


 準備?


「通常の方法ですとMPの消費が激しすぎるので、魔方陣を描くそうです」


「……魔方陣でそんなことできるの?」


「「「……え?」」」


 ……また私の知らないヤツっすか。


「魔方陣で転移できるわけねえだろ……足りないMPを魔方陣で魔力集めて補うんだよ」


 ナルホド……。


「……お前、そういや学校の授業で魔方陣関連はサボってたな」


「うう……まさか役に立つとは思わなかったのよ」


 リルもエイミアも真面目に勉強してたのね……。


「サーチ姉、サーチ姉」


「……何よ」


学校行ってない私でも(・・・・・・・・・・)知ってるよ?」


 うるさいっ!



「結構バタバタしてたから汗っぽいわね」


「ホコリもひでえからな……ケホケホ」


「ソレイユに協力するのなら一致団結しないと! それにはやっぱり温泉ですよね!」


「温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉(以下略)」


 ……という私達からのお願い(おどし)に屈したデュラハーンが、暴風回廊(ゲイルストーム)の温泉に案内してくれた。


「こちらになります」


 ……す、すっっっげええええええええっ!! 何という大パノラマ……!


「この温泉は魔王様の好みで作りました」


「ソレイユ偉い!」

「ソレイユ最高!」

「ソレイユ美人!」

「……魔王様微乳……」


 ぴきいいいいんっ


 ……え?


「い、今の気のせいかな?なんか『微乳』って聞こえたんだけど……?」


「いやいや! 聞き間違いだ聞き間違い! 『微乳』じゃなくて『美乳』だよ!」


「そ、そうですよ! 『美乳』です『美乳』! 確かにちょっと『微』ですけどごふぅっ!」


「「余計なこと言うな!!」」


「……なんでサーチ姉達は『微乳』『微乳』騒ぐ? 私は『美乳』と言った」


「「ウソつけえええっ!!」」



「はっくしゅん!」


 ……あれ? 何でくしゃみが?


「……ああっ! 今のくしゃみで魔方陣が……! 最初からやり直しだあああああっ!!」



「? ……今ソレイユが叫んでなかった?」


「気のせいだよ……でも気持ち良いな〜!!」


 ……そう言えば……最近温泉に入ってなかったわね……え? ちょっと前にハピーノで温泉浸かってただろって?

 三日入ってなければ十分よ!


「ん〜……ぶくぶく」


「リジーは……また潜ってるの?」


 最近リジーは温泉で何秒息を止めてられるかがマイブームらしい。けどそのおかげで財政難が一気に解決したっていう経緯があるので、リジーの潜水は放置されている。行儀悪いけどね。


「………………」


 ……エイミアは浮かんでいる。思ってたより鳩尾にキレイに極って気絶したエイミアは、服を剥いで湯槽に放り込んだんだけど……まだ目覚めない。ま、そのうちに気づくでしょ……。


 パリ……パリパリ……


「……ん? なんか肌にピリピリこない?」


「……そういやそうだな……こんな温泉の効能聞いたことねえけど……」


 炭酸泉ってわけでもないし……。


 ザバア


「あれ? リジーもう出るの?」


 するとリジーが私達の背後を指差した。


「? 何なのよ……げ」

「げってなんだよ……げ」


 ……そこには恨めしそうに私達を睨むエイミアがいた。


「……サーチ……リル……」


「あ、あらエイミア? 全身真っ赤になっちゃって。どうしたの?」


 ……今は関係ない事だけど……真っ赤になって逆上せた感じがめちゃくちゃ艶っぽいわ……。


「サーチ……何気に声出して誉めてるつもりかもしれませんけど……」


 や、やぶ蛇!?


「そんな見え見えのお世辞なんか通じませえええええんっっ!!」


 バリバリバリバリずどおおおんっっ!!


「「いぎゃああああああああ!!!」」


 ……私とリルも湯槽に浮かぶことになった……がくっ。



「……ん……」


「おー、気がついたね」


 ……温泉から……出てるみたいね……でも、何かあったかい……?


「どお? 魔王(アタシ)オリジナルの砂風呂!」


 へえ……それであったかいのか……って、砂風呂!?


「何で砂風呂っぶっ!!」


 う、動けない!?

 これ砂風呂って言うよりコンクリート風呂じゃないの!?


「こんくり?」


「ええっと……ガチガチに固まる砂みたいなヤツ。ていうか、動けないんだけど!!」


「えー。動くと砂が落ちちゃうじゃん」


「イヤイヤ、砂が落ちても別にいいのよ! ソレイユなんか砂風呂を誤解してないかな?」


「あれと違うの? 肉や魚を塩で固めて焼くヤツ」


 塩釜焼きだよそれ!

 ていうか、温泉とかじゃなくて調理法じゃない!


「そうかー。こんがり焼けると思ったんだけど」


 こんがり焼くなあ!


「あの〜……それってサウナですよね?」


 ……言われてみればそうね。寝袋式サウナという感じか。


「サウナか〜! それも良いわね…………デュラハーン!」


 突然デュラハーンを呼び出したけど……まさかこの中に入ってきたり……。


「もしそんなことしたら、今度は頭がないデュラハーンになるわね」


 ……流石に止めてあげてよ。


『……はい。なんでしょうか』


「……見・た・い?」


「ぶふっ!」


 ソレイユ! 何を言い出すのよ!!


『お断り致します。頭を木っ端微塵にされたくありませんので』


 おお! 変なところで以心伝心!


「あはは、冗談よ……十八階の倉庫って空いてたわよね?」


『少しお待ちください………………はい、今は空室です。当分何か入る予定もありません』


「わかったわー♪ サーチ達は少し待っててね」


 そう言ってからソレイユは足取り軽くそのまま出ていった。


「………………」


 ……て、全裸で(そのまま)!?


『な! 魔王様! なんて破廉恥な……!』


『なあに〜? アタシの見たくないの〜?』


『毎回同じことをしないで下さい! 見るんでしたらエイミア殿の方がぐしゃあっ!』


 ……多分木っ端微塵にされたのね。


「……私、しばらくデュラハーンさんには近づかないようにします」


 完全にエイミアに嫌われたわね……。



 十分後。


「できたよーん♪ ちょっと来て来て」


「ていうか服着なさい!」


「……まさかサーチに言われるとは思わなかったよ……」


 うるさいわねっ!


「まあいいや。こっちこっち……あ、足元に転がってるのは気にしないでね」


 ……あれって……デュラハーン……よね……? ()デュラハーンが落ちている先に、目的の部屋があった。ソレイユがドアを開ける。

 すると、とってもいいハーブの香りが漂ってきた。


「……じゃ〜ん! どですか!」


 ……てサウナ?


「今作ったの!」


 今?

 ビフォーアフターのアフターしか見てないからわかんないけど……早すぎない!?



 ……なんて言いつつも。


「「「「……良いわ〜」」」」


 温泉もいいけど、サウナもなかなか……。


「うん。アタシは砂風呂よりもこっちがいいかな」


 だからソレイユは砂風呂を誤解してるって!


「……今度本場の砂風呂に一緒に行きましょ」


 誤解を解くために。


「え! いいの!? やた♪」


 ……ホントに魔王らしくない魔王ね。


「それにしてもいい香り……何でしょうか?」


「ん? ローズマリーとか色々だよ〜」


 へえ……サウナといい組み合わせね。


「あれよ、あれ。魚とかと香草を焼くヤツ」


 今度は香草焼きかよ!


「あ、肝心なこと忘れてた。魔方陣できたから、いつでも帝国に行けるよ」


「……おい! めちゃめちゃ重要なこと忘れるなよ!」


 温泉とかサウナで結局帝国へ行くのが遅れた!

 え? 帝国より温泉の方がいい?

 ……確かに。

デュラハーンは2時間後に復活しました。

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