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第五話 ていうか、有翼人の皆様が出てきて微妙にトラブる。

「……来た」


 ソレイユが急に立ち上がって隅に寄った。


「…………?」


 何かイヤな予感がした私も、ソレイユと同様に隅に退避した。


「どうしたんだ、二人とも……」


 …………ィィィイイイ


「っ!? やべっ、エイミア逃げろ!」


 何かが飛んでくる音に気づいたリルも、急いで逃げ出す。


「……ほえ?」


 ……半分寝ていたエイミアだけが残り……。


 イイイイイイン!!

 ずっごおんんっ!!


「ふみゃああああっ!!」


 ……エイミアだけが巻き込まれた。

 え? リジー?

 気がついてたのかは知らないけど、いつの間にかいなくなってた。


「……あ、魔王様。こちらでしたか」

 ごんっ!

「ぐあっ!」

「こちらでしたか、じゃないわよ! あんた何回同じ事を言わせる気なの!? 速度と着地地点をよーく考えてから飛んできなさい!」

「も、もうしばけあびばせん……」


 ソレイユの一撃で歯が何本か吹き飛んだ部下らしき人が平謝りしている。


「それと、足元。早く逃げないと危ないよ〜」

「え……?」

 バリバリバリ!

「んぎょえええええええええええっっ!!」

 バタ……


「いったあい……何なんですか、これ……」


 おもいっきり踏まれて地下室に落とされたエイミアが、≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)を放ってから這って出てきた。ていうか、あの速度で踏まれて「いったあい」で済むってのもスゴいな。さすが半鬼。


「おーい。報告できるぅ?」

 バッサバッサバッサ

「魔王様、その馬鹿は放っておきましょう。我々が報告致します」


 うお、スゲエ。

 たぶん六十人はいるかな。たくさんの有翼人(ハーピー)達が飛んでいる。手の代わりに翼があって、足は完全に鳥のそれで、他はすべて人間の姿。前世の伝承どおりだ。


「あ、来たわね。いい加減にスワリの教育を徹底してね。じゃないとリーダーであるあなたにも、ごっついお仕置きしちゃうぞ?」


「ももも申し訳ありません!!」


 おお! ジャンピング土下座ならぬフライング土下座!


「……それで魔王様、この者達は?」


「アタシの友達」


 どよっ


「………………何なのよ、その『どよっ』は………………」


 ソレイユって、よっぽと友達いなかったのね……。


「「「申し訳ありません!」」」


 あ、有翼人(ハーピー)部隊揃ってのフライング土下座だ。


「…………聖術≪下降気流≫」

 びゅごおおお!!

「わっ!」「きゃあ!」「ひいぃっ!」


 ソレイユの聖術で強烈なダウンバーストが有翼人(ハーピー)達を襲い。


 びたーん! ずごっ! ずぼずぼずぼ! どかーん!


 ……全員が頭から墜落した。い、生きてるよね……?



「ソレイユ。エイミアを踏んじゃった高速鳥人だけど」


「高速鳥人って……ああ、スワリのことか。あの子がどうかした?」


「もしかしてツバメ?」


「あら、よくわかったわね。翼に特徴が出てるの知ってたの?」


 え? そうだったの?


「……翼云々言う前に……あんだけ高速で飛んでたら、ツバメとかハヤブサを疑うわよ」


「そりゃそうか……でもハヤブサの可能性は?」


 まだ気絶してるスワリを見て。


「………………ハヤブサってイメージじゃないでしょ」


 かといってツバメとも違うような……。


「……まあ……アタシの配下では一番早いのよ…………本当にそれだけ(・・・・)なんだけどね……」


 ……何か秀でたモノが一つでもあることは良いことだ、うん。


「あの……報告……」


 あ、すいません。


「どうぞどうぞ」


「あ、えーと……どうぞ」


「あ、はい……魔王様より保護するように言われておりました半蛇人(ナーガ)なのですが、かなり疲労が蓄積している様子でしたので、暴風回廊(ゲイルストーム)で治療しております」


「そっか〜……怪我は?」


「それなりに。切り傷ではなく打撲がほとんどでした」


 打撲……。


「最初から捕獲するつもりだったのね」


「あの……」


「あ、私はサーチと言います。パーティの竜の牙折り(ドラゴンブレイカー)のリーダーです」


竜の牙折り(ドラゴンブレイカー)!! ……史上最年少で竜殺し(ドラゴンキラー)を達成したパーティか!」


 えっ!? 私達最年少だったんだ!

 ……ま、今は関係ないか。


「問題は半蛇人(ナーガ)を捕獲した連中がどうして殺さなかったのか、生け捕りに執着したのか……ていうことなのよ」


 有翼人(ハーピー)のリーダーは不思議そうに。


「どうしてって……珍しいから生かしたんじゃないのか?」


 と聞いてきた。

 チッチッチッ……甘い甘い。


「言っちゃあ悪いけどさ、モンスターを生け捕りしたってメリットなんてないのよ。危険だし」


「メリットねえ……確かに暴れるしか脳がないからね、ダンジョン産は……」


 ソレイユはしみじみと呟いているけど、有翼人(ハーピー)のリーダーは難しい顔をしている。やっぱり複雑な心境なんだろうね。


「ごめん、ヒドいこと言うよ…………モンスターはね、死んでなきゃ(・・・・・・)価値がないのよ」


「っ……!!! 貴様あ!!」


 有翼人(ハーピー)のリーダーが突然斬りかかってきた。うお、足で剣を掴んでるよ……って関心してる場合じゃないわね。すぐに≪偽物≫(イミテーション)で盾を作り出して。


 がぎいんっ!


「な……!?」


 私が防ぐ前に。


「……誰の許可を得てサーチに攻撃した?」


 黒鉄の翼を広げたソレイユが、有翼人(ハーピー)のリーダー……めんどくさいから省略しよ……ハピリーの攻撃を止めた。


「もう一度問う。誰の許可を得て攻撃した?」


「う…………申し訳ありませんでした……」


 ソレイユは私が出した盾を見て「……割り込まなくてもよかったかな……」と呟いた。


「お前の気持ちもわかる。後で何かしら考えておく」


 だから今は聞け……ということらしい。


「御意……」


 ハピリーさんが納得したところで、話を続ける。


「モンスターは『素材』じゃないと人間には価値がないのよ。だから半蛇人(ナーガ)を剣で攻撃してないのは不自然だわ」


「それは……意思があると知っていたから…………あっ!」


 やっと理解した?


「そういうこと。半蛇人(ナーガ)を生け捕りにする理由……それは予め意思があると(・・・・・・・・)わかっていた(・・・・・・)と考えるのが自然だわ」


 有翼人(ハーピー)達がざわめいた。


「つまり…………裏切り者がいるっぽいのよね」


 ソレイユは再び黒鉄の翼を広げた。


「……あんた達の中にいない事を願うわ……」


 有翼人(ハーピー)達は一斉に跪いて。


「「「絶対ありません!!」」」


 と絶叫した。

 すごい忠誠心だこと。


「ソレイユ。もし裏切り者が暴風回廊(ゲイルストーム)にいると……」


半蛇人(ナーガ)が危ないね…………仕方ない。サーチ、申し訳ないんだけど、スワリと一緒に暴風回廊(ゲイルストーム)に先行してくれない?」


「え? スワリと? みんな一緒に転移すれば……」


「そんなに気軽に転移できれば、苦労は無いわよ! いろいろ制限があるの!」


 ……ま、そんなもんよね……。


「スワリ! 行っちゃって!」


「御意っす!」


 え? え?


「て、ちょっと!? 今からなの!?」


「ごめんねサーチ! 準備できたらみんなですぐ転移する(跳ぶ)から!」


「じゃあいきなり最高速で行きます!」


「ちょっと待っ……速すぎ……ぎゃあああああああああっ!!」


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