第四話 ていうか、私の両親が判明?
背中に翼の痕って……何よ、その中二病設定は!?
「たぶん鳥系の獣人なんじゃねえか?」
「獣人…………あ、でも私魔術使えるわよ?」
「そうだな。ならエイミアと同じハーフだろ」
ハーフなら魔法が使えるってこと?
「サーチ。あなた≪魔法の素質(弱)≫よね?」
「そうよ。だから≪偽物≫限定」
「ならハーフで間違いないと思うよ〜。獣人の血が混ざることで≪魔法の素質≫が消えることはよくあることだから……たぶんサーチの両親のどちらが≪魔法の素質(強)≫を持ってたんじゃないかな? それでサーチにかろうじて≪魔法の素質(弱)≫が残ったんだと思うよー」
かろうじて……か。
今まで両親なんて考えたこともなかったわ。
「しかし≪魔法の素質(強)≫持ちってことは、相当強力な魔術士だな。絶対に名前は知れ渡ってるはずだぜ」
「……なら、魔術士で獣人と結婚した人を探せば……」
「いや、いねえだろ」
「難しいだろうね〜」
エイミアの言葉をリルとソレイユが否定した。ま、私もそう思う。
「強力な魔術士とエイミアは親交があった?」
「いえ。全くありません」
でしょうね〜……強力な魔術士ってあんまりいないし。
「……魔術士ってね、魔力が強い人ほどプライドが高いのよ……だから魔術が使えない獣人なんかを見下す傾向があってさ……」
私の説明をリルが補足してくれた。
「おまけに強力な魔術士は歴史が古い家が多いんだ。自分の跡を継ぐ子供が『魔術の才能ありません!』なんてことになったらシャレになんないからな……わざわざ≪魔法の素質≫が弱体化することが確定してる獣人と子供作ろうとは思わねえだろうさ」
「そーそー。逆も然りってヤツでさ。魔術士との子供だと、獣人の能力も格段にダウンしちゃうから、獣人サイドも嫌がるのよね〜」
「……じゃあサーチって、普通ならあり得ない組み合わせなんですね……」
……あり得ない組み合わせなんだろうけど……私ってステータスが極端に低いってことはないと思うけど……?
「サーチのステータスは低くないよ。むしろ『素早さ』はトップクラスだしね」
「え! そうなの!?」
「うん。たぶんアタシよりも上じゃないかな」
ををー! 『素早さ』だけ魔王越え!
「でもどうしてですか? サーチの『素早さ』がそこまで高いのって十分異常ですよね?」
「……エイミア……一応本人の前なんだから、『あり得ない組み合わせ』とか『異常』とか言わないでね? 地味に傷つくし」
「あ! ご、ごめんなさみょーーーんんんっっ!!」
「これで許してあげるわ」
「びえええええええっ!!」
「泣くな泣くな……エイミア、お前もリジーみたいに余計なことを言わないようにしねえと……いいお手本じゃねえか」
……リル……あんたも人の事は言えないわ……。
「リル。後ろ」
「何だよ……ひぇっ!?」
そこには〝首狩りマチェット〟をリルの首筋3㎝にピッタリ止めたリジーがいた。
「リル姉」
「な、何だよ」
「…………貧乳」
「なっ!?」
「まな板。洗濯板。平ら、平ら、平ら」
「てめえ! ぶっ殺……」
リルの頬っぺたに大鉈がピタピタ当てられる。
「なあに? リル姉」
「あ、いや……その……」
リジーは気を取り直して、リルいじめを再開した。リルは真っ赤になって震えてるけど、爆発しそうになる度に〝首狩りマチェット〟で黙らされる。
「おお! リジーもアタシの薫陶を受けて成長したわね♪」
薫陶!? 洗脳の間違いじゃないの? お願いだからリジーを汚さないで!
「……サーチ……あんたも薫陶してあげようか?
いえ結構です。遠慮しときます……。
「そうだった。サーチのステータスの話だったわね」
話が逸れるのは毎度のことです。
「リルから説明してもらおうと思ってたけど…………」
ずっと続くリジーの攻めに、若干涙目になりつつあるリル。
「…………アタシから言うわ。サーチって『素早さ』はダントツで『体力』がやや高め。『力』はからっきしだけど蹴りは強い……違う?」
「……ズバリね。当たってるわ」
「ならサーチは間違い無く、無翼の鳥獣人が親なのよ」
翼がないってことか…………で、足が速くて蹴りが強い…………って、おい!
「ダチョウかよ! 私の親はダチョウなのか!?」
「だ、だちょー?」
あ、しまった。つい声に出しちゃった。
「何でもない何でもない」
「古代語かー!?」
リルが反応した。よく聞こえたわね!
「後で教えてあげるから! あんたはリジーに集中してなさい!」
「集中したくねえよっっ!!」
「……集中してないのなら一時間延長」
「しまったああああっ!!」
またリルが地雷を踏んだ模様。
「……で、だちょーって何?」
(ダチョウってのは前世にいた飛べない鳥。代わりにめちゃくちゃ足が速いの)
(なるほどねー。外見はどんな感じ?)
(えっ!? 口で言うの!?)
(大丈夫! イメージしてくれればアタシが読み取るから)
イメージを読み取るか…………首が長くて足が長くて……黒っぽい…………こんな感じかな……。
「…………あー! キングドードーと似てるわね!」
キングドードー?
「いまサーチがイメージした感じのモンスターがいるの。飼い慣らすと快適に乗ることができるよ」
……そういえばダチョウに乗るCMもあったわね……快適そうではなかったけど。
「つまり! サーチはキングドードーとのハーフみたいなものなのだ!」
「何かイヤなハーフね……あれ? でも私は鳥の特徴は一切ないけど?」
リルの猫耳とか、リジーの狐の尻尾とか。私が鳥なら羽毛とかありそうなもんよね。
あ、クチバシはイヤだ!
「ハーフには特徴はでにくいモノなのよ。エイミアのちっさい角とかサーチの翼の痕とか」
……そうなんだ。良かったあ……ちっさいクチバシとかじゃなくて。
「……ソレイユ。まだ連絡ないのよね……遅くない?」
「あ、忘れてた。さっきから念話水晶が振動してたんだった」
振動!?
「ちょっと! 念話水晶ってマナーモードあるの!?」
「ないない。アタシのオリジナル」
そりゃそうよね!
「……今度私の念話水晶も設定して」
「ん。いいよ〜…………もっしもーし! 魔王だよ〜」
……しかし威厳のカケラもない魔王様ね……今さらだけど。
『……やっと繋がった……魔王様! 今まで何故出られなかったのですか!?』
「ごめんごめん。友達と話してたよ」
『えっ……………………魔王様、友達いたんすね』
「いるわよっ!! あんた首捻り斬るわよ!!」
『ひぇっ!? も、申し訳ありません!』
……失言はこの世界の常識なの?
「まあいいわ……で? 確保したの?」
『はい。少し前に作戦完了しました。今そちらに向かいます』
「わかったわ〜お疲れ〜……………………というわけで。もうすぐ半蛇人とご対面よ」