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第一話 ていうか、力に自信がある方、緊急募集!

 ズゥン! ズゥン!


「………………」


 ズゥン! ズゥン!


「………………」


 ズゥン! 


「……何故止まる?」


「だって……ねえ……」


「……疲れました……」


「……歩いてる間ずっと『ズゥン! ズゥン!』の音と震動……正直飽きる(・・・)


「……むう……」


 リジーが頬を膨らませるが……仕方ない。だって……リルが言ったことは……おそらく私達全員が思ってることだから……。



 何故こうなったかと言うと……。

 〝死神の大鎌〟(デスサイズ)を確保した私達は、例の引き摺りから開放されて浮き足立っていた。


「しっかし何で気がつかなかったんだろうな? 呪剣士なら装備できて当然だろうし」


「まったくよ。引き摺ってるときの周りの目の痛さといったら……」


 見た目は可憐な乙女が四人係りで、変にデカい大鎌を引き摺りまわす。さぞかし奇妙な光景だったろう。


「不思議ですよね〜。あんなに重かった大鎌を、リジーは軽々と振り回せるんですから……」


 すぐ近くでブンブン大鎌を振り回すリジーは、とても幸せそうな表情を…………あれ?してない?

 さっきまであんなに嬉しそうだったのに……?


「リジーどうしたの? 憧れの〝死神の大鎌〟(デスサイズ)を手に入れたんだから、嬉しいんじゃないの?」


「……面白くない」


 は?


「これ……使いにくい(・・・・・)


「「……はあ?」」


 ……? あ、そういうことか。


〝死神の大鎌〟(デスサイズ)の問題っていうより、鎌そのモノ(・・・・・)が使いにくいってことね?」


 言われてエイミアとリルも納得したようだ。鎌ってねぇ……やっぱり草刈り用に作ってあるだけあって、戦闘には使いにくい。

 武器の基本的な動作「斬る」「突く」「叩く」のうち「突く」も「叩く」も不可能。しかも「斬る」すら特殊動作が必要。

 ……そりゃ誰も使わないって……。

 え? 改良次第じゃ使えないかって?

 改良して使うくらいなら、槍や剣使った方が早いでしょ。


「〝首狩りマチェット〟の方が使いやすいでしょ?」


 エイミアはコクりと頷く。


「じゃあ魔王様(ソレイユ)からのご褒美に期待しなさいよ……相当な秘蔵品みたいだから」


「わかった……じゅる」


 ……じゅるって……。


「……呪いを食う気?」


「………………モノによっては」


 まあ……いいけどさ。


「……〝死神の大鎌〟(デスサイズ)の呪いは食べないでね?」


 ぴきいいいいいんっ


 あれ?

 空気が凍りついた?


「………………こんな呪い食べたら…………二の腕…………」


 ………………。

 ……ごめんなさい……。



(注! リジーは食べ物を食べても太りませんが、大好物の呪いを食べ過ぎた場合は…………お察しください)



『ええ!? もう手に入ったの?』


 念話水晶でソレイユに連絡をとる。予想より早かったらしくて、結構驚いていた。


「まあ、なし崩し的な感じだったけどね。それにA級冒険者(反則的存在)もいたから……」


『……〝飛剣〟と〝竹竿〟?』


「〝飛剣〟は合ってるけど〝竹竿〟は違う。〝刃先〟(エッジ)がいた」


『うっそおおおおおおおおおっ!??』


 ソレイユが盛大に驚く。珍しいわね。


『へ、へえ〜……あの絶滅危惧種みたいなのがねえ……』


 待て。

 何で絶滅危惧種なんて言葉知ってる?


『この世界にも絶滅危惧モンスターとかいるのよ』


 だから心の中読むなっつーの! しかも遠距離で!


「ていうか、〝刃先〟(エッジ)を知ってるの?」


『うん。こてんぱんに負けた(・・・)


 負けたあっ!!?


「魔王様が!?」

「魔王様がですか!?」

「魔王様が……」

魔王様(バケモノ)に勝つA級冒険者(バケモノ)がいるんだな……」


「「「あ……」」」


「? 何だよ……」


『ヒドい! 乙女をバケモノ扱いした……!』


「げっ! ち、違うんだよ! 目の錯覚……」


『それを言うなら空耳だよっ!! 聖術≪地獄への入口≫(ヘルズホール)!』


「え? え、ひあああぁぁぁ……」


 ……リルが突然落ちてった……あ、この場合は堕ちたか。


「……ソレイユ、リルは大丈夫なの?」


『命は大丈夫。ただ小一時間ほど必死に戦ってもらうだけ』


 うわ……地味にツラいわね……。


「でもいい鍛練になるんじゃないですか?」


 あ、バカ!


『そう? もう一名様ご案内〜』


「え? え、うひょおおおぉぉぉ……」


「まったく……余計なこと言うから……」


『懲りない勇者だよねー』


「あんたが言うな!」



 それから二時間ほどして、空に穴が開いて、そこから二人が降ってきた。


「はあはあ……魔王様……すいませんでした……バタッ」

「た、鍛練には……なりませんでした……バタッ」


 ……これで学習してくれたならいいけど。



 ちなみに。

 魔王様が負けた理由は「闇討ちされたから」とのこと。

 まあ……〝刃先〟(エッジ)はアサシンだからね……でも何だかなあ……。



「さーて、行きましょうか」


 いよいよ出発だ。

 行程としては「元来た道を戻る」これに尽きる。

 もっと近いところに港はあるんだけど……。


「あーあ。誰かさんが港警備隊とケンカしてなければなー」


 ……私とリジーとで警備隊をシバき倒したのが原因で行き辛いのだ。大丈夫だとは思うけど……念のため。


「悪かったわよ……けど良い馬車が借りられたんだから勘弁してよ」


 実は院長先生に口を利いてもらって(脅してもらって)、上等な馬車を格安で貸してもらったのだ。


「ま、馬車さえあれば大丈夫か。さすがに歩いて大陸横断は嫌だしな」


 帝都に来るときでも、歩きより乗合馬車が多かったからね……。


「じゃあ出発するわよー!」


 御者席に座って手綱を握る。後ろにエイミア、リルが乗り込み、最後にリジーが〝死神の大鎌〟(デスサイズ)の向きを考えながら乗り込ん……。


 バキバキッ! 

 めきゃあ!


「きゃあ!」

「何だ!?」


 びっくりして思わず悲鳴をあげてしまう。


「な、何事よ……ああっ!?」


 馬車から飛び降りて見てみると……。


「どうしたんですか……あ、車輪が……!」


 なんと、車輪が完全に潰れていたのだ。


「お、おいおいおい! こんな簡単に潰れる馬車が、本当に上等なのかよ!?」

「わ、私に聞かれても……!」


 院長先生の口利き(脅し)が空振りするとは思えないし……!


「たまたまかも」

 ズゥン!

「「「わっ!」」」


 今度は何!? モンスターなの?


「モンスター?」

 ズズン!


 ん?

 今リジーの動きにあわせて音が?


「……リジー、ちょっとジャンプしてみて?」


「? わかった」


 リジーが軽くジャンプし、そして着地。


 ドズン!


「……あんたか!」



 ……原因は〝死神の大鎌〟(デスサイズ)だった。

 よくよく考えればわかることだった……いくら呪剣士のリジーが装備したからって、実際の重さは(・・・・・・)変わらない(・・・・・)のだ。

 リジーが軽々と扱うのを見て、〝死神の大鎌〟(デスサイズ)も軽くなったと錯覚しちゃったのだ。



 で……乗合馬車に乗ろうにも。


「いいぜ! 乗りな!」


 ズゥン!


「……やっぱ止めてくれ」


 ……となる。



 ちなみに。

 川を下る船に乗る、という手も試したが……。


 バキバキッ

 どぼーん!


「がぼがぼがぼー!」


 ……危うくリジーが溺死しかけただけだった。



 で、冒頭のように「歩いて大陸横断」となったのだ……。


「リル……町までどれくらい?」


「………………聞きてえか?」


 いえ、いいです……。



 一番近い港まで、歩いて(・・・)二ヶ月。

 ……馬車の弁償もイタかったし……。

 恐るべし、“死神の大鎌”(デスサイズ)の呪い……。

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