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第二十二話 ていうか、私達の夕ご飯とシャワーを邪魔するヤツは許さん!

 ザアアア……


 う〜、気持ちいい。

 みんなと酒場でパーッと盛り上がろう……ということなので、とりあえずシャワーだけ浴びている。ホントは温泉にゆっくりゆったりまったり浸かりたいんだけど、みんなと飲みに行くのはもっと楽しい。


「ん〜♪ ふふ〜ん♪」


 上機嫌で鼻歌を歌ってた私は……。


「……やれやれ……」


 楽しみに水を差す野郎どもをどう処理するか(・・・・・・・)考える。



(おい、女は?)

(一人は外出、一人は浴室で鼻歌だよ。いい気なもんだ)

(どうするんだ? 少しは楽しんで(・・・・)いいのか?)

(要は決勝に出られないようにしちまえばいいんだ。たっぷり可愛がってやろうぜ)

(やる気が出てきたぜ? ひひ)


「はろー♪」

「え? あがっ」


 ドサッ


「何をしているのかしら。女の子しか泊まってない部屋に男が押し入るって、目的は一つよね?」


「てめえ! 相棒に何をしやがった!?」


「ご心配なく。今頃違う世界の扉の前に立ってるわよ」


「くそっ!」


「あなたのことを待ってるでしょうから……さっさと逝きなさいな」

 ドシュッ!

「ぎゃ! あ……」


 ……バタッ


「あーあ……またシャワー浴びないと」


 こうなると思って、何も着ずに出てきて正解だったわ。まあこいつらも別世界(あの世)に逝く前に良いモノ見れたんだから……とっとと成仏しなさいよ?



 結局、旅館と警備隊に事情を説明しなければならなくなり、一時間ほど予定が狂うこととなった。やっぱ成仏せずに地獄に堕ちちゃえ、あのバカども!



「……おっせえ〜な」

「遅いです」

「もう食って飲んでる」


 リルを始め全員に怒られる。私だって好きで遅れたんじゃないわよ!


「ごめんごめん……やっぱ刺客が来たわ」


「え? じゃあ返り討ちにしちゃったんですか?」


「当たり前よ。人のシャワー中に襲ってきたのよ! 乙女の身繕いを邪魔するなんて、万死に値するわ!」


 リジー以外は深く頷く。基本的に色気より食い気のリジーにはわかんないかな。


「……呪われアイテムを観賞中に襲ってきた感じ」

「万々々々死に値する」


 あんた何桁になるかわからずに言ってるわね。


「サーチ、何か食うか?」


「あ、砂肝と焼き鳥の皮、あと麦芽酒ね」


 こっちの世界では「ビール」とは言わないのよね。


「で? 襲ってきたのはどんな連中だった?」


「典型的な冒険者くずれだったわ。警備隊の人の話だと、結構な額の懸賞金がかかってたみたい」


 無論、いただきました。


「たぶん『何をしてもいいから、決勝に出られないようにしろ』とか言われて『ひゃっほー! ついでに女を襲っちまおうぜー!』ってノリだったんでしょうね。すんなり部屋に入れたってことは……旅館もグルか」


「え!? 旅館もなんですか?」


「旅館はセキュリティが命よ? どちらに転んでも、すんなり賊が侵入できちゃう旅館なんか願い下げだわ」


「じゃあ旅館代えるのか?」


「そのつもりだったんだけどね〜……別の部屋を用意するだの、宿泊費は割り引くだの、やたらゴネるのよ」


 普通ゴネるのはお客様(わたしたち)なんだろうけど。


「……? 普通そこまでしますか?」


 しないわね。


「ま、それは旅館ごとの対応の違いもあるだろうから、一概には言えないけど」


「でもタイミングがタイミングだからな……ほぼ黒とみていいだろ」


「じゃあ、そう見込んで同じ旅館でお世話になりますか」


「え!? 危なくないですか!?」


 当然警戒度MAXでいくわよ。



「先程は本当に申し訳ありませんでした……こちらの料理は我々からのお詫びでもあります。どうかお召し上がり下さい」


 という謝罪とともに置いてった()豪華料理。これはスゴい。


「ふわあ……凄いですね。美味しそう」


「あんた、さっきまで酒場でがばがば食べてたでしょ? まだ入るの?」


「大丈夫です! 私は食べたぶん栄養がまわる場所は決まってますので」


 ムカッ。


「あー……二の腕」


「ちち違います!」


 何気に胸の自慢するからよ。ふん。


「リジーは……どこに栄養がいくのよ」


「私は必要以上の栄養を摂取しても、体内に蓄積しないので太らない(・・・・)


 ぴきいいいいんっ


「リジー……今何て言った?」


「え? 太らないって」


「リジー……ちょっとあっちへ行こうか?」


「リル姉何でフィンガーリングはめてる?」


「リジー……ちょっとあっちへ行きましょうか?」


「エイミア姉何で≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)フルパワー?」


 ズルズルズル


「何? 何? 一体何? あーれー」


 リジー……言ってはいけない言葉ってのをちゃんと覚えることね……今回は私も看過できないので、失礼します。



 夜。

 天井からぐるぐる巻きでぶら下がるリジーを月明かりが照らす。しくしく泣くリジーは幻想的な光景の一部となった……わけないわね。


「サーチ姉ええ……下ろしてええ……」


 左目に青タン作ったリジーが私を呼ぶ。知りません!


「サーチ姉ええ……」


 ていうか、うるさくて警戒できない……やっぱ下ろそうかな。


「……!!」


 何? このイヤな気配? 人間でもモンスターでもない。だけどイヤな予感がする!


「リル! エイミア! 早く起きて!」


 呼び掛けにリルはすぐに飛び起きた。


「来やがったか……って、うわ、何だこの寒気!?」


 リルの尻尾が逆立ってる。これは相当ヤバいわね。


「ん〜……むにゃむにゃ」


「……リル、エイミアお願い。私はリジーを下ろすわ」


「わかった……オラ起きろエイミア!」


「ふにゅ……にゅーん」

 

「リジー、下ろすわよ!」


「サーチ姉ええ……下ろしてええ……ぐう」


 こいつ寝てるし!

 私を呼んでたのは寝言かよ!


 スパッ

 ひゅー……ごんっ


「ふああああああっ!? 痛い痛い痛い……あ、あれ??」


「目覚めた?」


「……あれ? サーチ姉? 何事?」


 ……今回は使えないかも。


「変な気配が近づいてるから戦闘態勢よ」


「……! わかった、すぐに準備する」


 前言撤回。リジーは戦力になります。


「起きろ! 起きろよコラ!」


「うーん……うふふ」


 ……エイミアに比べれば。


「たぶん貴族側が何かしてきたんだと思う。とりあえず私が偵察を」


「必要ない。私にはわかる」


「え? 何がわかるの?」


「ここに向かってるのは強烈な呪詛の固まり」


 呪詛の固まり!!?


「ウソでしょ……私達じゃ対処のしようがないじゃない」


 呪詛が固まりになって集まってるってことは……貴族の連中、金をばら蒔きまくって魔術士を集めたのね。


「逃げるしかないか……大会も諦めるしかないかな」


「問題ない。私がいれば大丈夫」


「「え?」」


 リジー? 何言ってんの?


「下手したら街中の人が死ぬくらいのヤツよ。どうしようも……」


「サーチ姉。呪詛だよ、呪詛(・・)。呪いなんだよ」


「「……あ」」


「……来るよ……サーチ姉達は下がってて」


 そう言って私を下がらせたリジーは、両手を合わせ。


「……この世界の全ての呪いに感謝を込めて」


 似たような決め台詞聞いたことがあるような……。


「……いただきます!」


 リジーは何もない空中に飛び出す。するとリジーを黒い影のようなものが包み……。

 ……五分後。

 キレイにリジーの口の中に吸い込まれていった。


「ごちそうさまでした」


 お……お粗末様でした?



 何はともあれ。

 リジーのおかげで私達は助かった。

 ただ……。


「二の腕が……二の腕が……」


 どうやらリジーは食べ物では太らないみたいだけど、呪いの食べすぎで太るらしい。


「二の腕が……二の腕が……」


 これ以降、リジーは「太る、太らない」という話題に注意を払うようになった。

 よかったよかった。

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