final battle10 発表のコーミ。
「え、怨嗟の竜とのゲームだああっ!?」
私が気絶してる間に語られた真相を聞き、唖然とするしかなかった。
「そう。だから最終決戦延長戦はサーチと怨嗟との一騎打ち」
「殺す気ですかっ!」
「冗談よ冗談、クスクスクス」
ニッコニコのミスズさん、心底楽しそうに笑う。いやいや、戦う前に心臓病むって。
「それよりミスズさん」
「はい?」
「一つ、確認したいんですが」
「はい」
「私が灼熱大陸に落っこちたの、怨嗟の竜の仕業じゃありませんか?」
「……何故そうだと思うんですか?」
「だって、あまりにもタイミングが……」
「でも、どうやってサーチを落としたと言うんですか?」
「簡単です。怨嗟の竜はドラゴンの頂点ですから、ドラゴンの眷属に干渉するのは朝飯前でしょう?」
モナ・リーゼは竜騎士である以上、ドラゴンとの繋がりは当然深い。
「ならエイミアちゃんは? あの娘はドラゴンに関わりは無いでしょう?」
「いえ、エイミアは元勇者です。だから≪竜の絆≫持ちですよ」
「勇者…………それに竜騎士……確かにそれなら、干渉はできるかもしれませんね」
「ミスズさんはどう思います?」
アゴに手を当てて考え込むミスズさん。
「…………そうですね、本人に聞いてみるのが一番でしょう」
え、本人?
「居るのでしょう、怨嗟」
ミスズさんの呼びかけに応えて、怨嗟の竜が現れるっての!?
「え、怨嗟の竜って嘆きの竜に並ぶくらいのバケモノでしょう!? いくら何でも勝てないって!」
「「「……え?」」」
ヴィーとリーフ、さらにソース子の驚きの声が重なる。
「ていうか、ちょっと待ってよ。何で驚いてるのよ?」
「え……サーチ、まだ気付いてないんですか?」
「サ、サーチお姉様、冗談ですよね?」
「か……サーチさんだから、あり得なくはないかも」
だから、何がよ!?
「……ミスズさん、言っちゃっていいですか?」
ヴィーが確認をとる。ていうか、ミスズさんに関することなの?
「ん~……まだ早いですね。今は内緒です」
「ええええええっ!? 何で私だけ除け者にすんのよ!」
「それは…………聞いたらダウト~♪」
ずびしっ!
「んぐはあっ!?」
ゴロゴロゴロズシャーーッ!!
ま、またかよ……がくっ。
「……気絶しましたね」
「そうですか。さて、皆さん。私とサーチには前世からの因縁がありますので、私の正体は決して明かさないで下さいね」
「「「わ、わかりました……」」」
「ちなみにですが、何だかわかっていらっしゃいますよね?」
「私は元々知ってますから……リーフは?」
「あ、あの、言っちゃっていいんですか?」
「はい、どうぞ」
「あの、怨嗟の竜様……ですよね?」
「はい、ダウト~」
ずびしっ!
「びぎゃあ!」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロズシンドタンズシャシャシャシャーーッ!!
「怨嗟なんかと間違えるなんて、本来でしたら脳みそバァァァン並みにダウトですからね」
「ず、ずびばぜん……」
「全く……さて、次はソース子さん、とお呼びすればいいんですか?」
「あ、はい」
「貴女の答えは何ですか?」
「えっと……嘆きの竜様……ですよね?」
「はい、正解です」
「うぐぐ……ミ、ミスズさんが、怨嗟の竜様と互角の力を持つと言われる……四柱竜の?」
「あら、四柱竜なんて古い言葉、よく知ってましたね」
「あ、はい。私達木の一族には、古い伝承が幾つか伝わってましたので」
「成程……その古い伝承とやら、後から聞かせてもらえません?」
「あ、はい。嘆きの竜様のお心のままに」
「そんなに畏まらなくても……」
「怨嗟に嘆き、それに四柱竜……ファンタジー感ありありだわ……」
「そう言えば、貴女は宜しいんですか?」
「はい?」
「ソース子さん、言わなくていいんですの、サーチに」
「…………ミスズさん、気付いてたんですか?」
「いや、気付いてないのはサーチくらいですよ」
「え? ヴィーはともかく、リーフも?」
「ええ、まあ。多分サーチお姉様の関係者かな、とは薄々」
「つまり、詳しくはわかってないんですね?」
「はい。血縁関係者かな、とは思いますけど」
「……もうミスズさんにもヴィーにもバレてるんだからいいかな……では改めてご挨拶を。ソース子こと紅美です」
「あ、はい」
「サーチは私の母さんです」
「…………………………は?」
「とは言っても、前世の時の娘ですけどね」
「ぜ、前世って……サーチお姉様は転生者なんですか!?」
「そういう事ですね」
「…………ま、まさか、召喚主に娘さんがなったのも、怨嗟の竜様の?」
「それはわかりません。ただ、血の繋がりによって引っ張られたのかもしれませんね」
……う……ううん……。
「あ、気が付きましたね」
ん……あ、ミスズさん?
「大丈夫ですか?」
「いつつ……大丈夫ではないです」
二発も気絶するくらいのデコピン食らったんだから、大丈夫なわけがない。
「それは失礼致しました、ウフフフ」
……は~あ。
「それよりサーチ、ソース子から重大発表があるそうよ」
ん?
「何よ、ソース子」
「あの……か……サーチさん」
「はい?」
「私、紅美です」
「ええ、コーミよね。知ってるわよ?」
「いや、だから、紅美で」
「だからコーミでしょ? 娘と同じ名前だから、あえてソース子って呼んでるのよ」
「だから、紅美だって」
「だから、娘と同じ……え?」
「だから、私だって。娘の紅美だって、母さん」
「……………………………………え?」
「本当の本当に、娘の紅美なんだって、母さん」
……………………………………は?