final battle6 補助のサーチ。
『……小癪な真似を……』
ボゥオオオッ!
再び青白い炎を放つ炎の王。
「ソース子の盾!」
「召喚主様、すみません!」
「ひ、ひいいいっ!」
「ふぇぇぇぇぇぇ!」
ドドォォン!
ど、どうにか今は防げてるけど、これは時間の問題か。
「ヴィー、ちょっといい?」
岩場に隠れていたヴィーが顔を出す。ていうか、あんたは今回活躍の場がないんだからちょうどいいわ。
「何ですか?」
「ちょっと意見を聞かせてほしいんだけどさ、あいつの炎、ソース子達にまで影響を及ぼすように、炎の王が設定を変更してくる可能性はあると思う?」
「あり得ますね。実際にサーチ達の行動の縛りを解除したのは、他ならぬ炎の王なのですから」
本来召喚獣である私達は、戦いの際は「フェイバリットを順番に打ち合って攻撃する」というゲームの設定に沿った行動しかできない。
それを炎の王は変更し、かなり自由に動けるように緩和したのだ。実際この緩和がなければ、炎の王をここまで追い詰めるには相当な時間を要しただろう。
「そうね、攻撃を受けてるタイミングで設定変更なんてされる可能性もあるのよね」
ソース子達に頼るのは危険か。
「リーフ、やっぱり回避メインで戦うわよ」
「……わかりました。話は聞こえてましたので、事情は理解してます」
リーフは何だかんだ言っても、召喚主のふぇ子を常に心配している。危険に晒すのは抵抗があるだろう。
「でも、どうすれば勝てるんでしょうか?」
「相手がゾンビだってわかってれば、方法はあるわ」
ゾンビには聖属性や火属性が効果抜群だ。
「でもサーチお姉様、あれはゾンビって言うよりは幽霊ですよ」
幽霊……ま、確かに。炎自体が不定形だもんね。
「当然ながら火属性は通用しないでしょうし、リーフには聖属性なんて使えません」
「それは私も同じよ。ていうか、魔術は一つしか使えないし」
リーフはさらに言葉を重ねる。
「さっきも言いましたけど、あれは幽霊に近い存在です。つまり、物理攻撃も無効だと思います」
「だったら何とかなるわ。私、≪竹蜻蛉・参の型≫っていう幽霊斬れるスキル持ってるから」
「斬れますか、炎の王を?」
え?
「普通の幽霊を斬るんじゃありません。即死効果のある炎を、常に纏っている相手を斬るんです」
う。
「しかも相手は形の概念が無いです。つまり、どこが頭なのか手なのかもわかりません」
「え、ええっと……?」
「そんな相手の急所がわかりますか?」
うっ! た、確かに。
「幽霊は生前の体型に影響されますから、頭や心臓がそのまま弱点となります。ただ炎の王は……」
元々炎の固まりだったんだから、急所とかいう概念はない……か。
「闇雲に斬ったところで、炎の一部が削がれるだけです。あまり効果が期待できない以上、命を危険に晒してまで斬る必要は無いかと」
むむむ……ヴィーみたいに理論武装されると、太刀打ちできない。
「な、なら何か案はあるの?」
「はい。相手は炎の固まりです。炎を相手にするんでしたら、水で消火するのが一番です」
あ、水か!
「ていうか、どうやって水を出すのよ?」
「植物の中には、水を大量に溜め込む種も居ますので」
よーし、それだ。
「リーフ、私があいつを牽制するから、隙を突いて水をバシャッといっちゃって」
「わかりました」
ミスリル製の投げナイフを作り出すと、炎の王に向かって投げる。
ズブッ
『ぬっ』
貫通したとき、反応した。やはりゾンビ、ミスリルには弱いか。
「ただ、ダメージがあるかは何とも言えないけどねっ」
ビシュビシュ!
ここは注意を引ければ十分なので、ナイフではなく針を投げる。この方が投げやすい。
ズンッ! ボシュ!
『……ミスリルか。色々と考えているようだが、これでは我を倒せぬぞ』
わかってるわよ!
「はああっ!」
ビュビュ!
連続で針を投げながら、炎の王を引きつける。
『逝くが良い』
ゴオオオオオッ!
一撃必殺の青白い炎が、私に向かって放たれる。
「即死効果があってもね、避ければいいのよ避ければ!」
内心はヒヤヒヤモノだけど、余裕ぶってステップステップ。
『……ならば広範囲に放つのみ』
即死効果の広範囲!? ゲームに実装されたら非難轟々だよ!
「ていうか、今よリーフ!」
「はい! 『深緑の葉刃』!」
そう言ってリーフが放った葉刃は…………ん?
「デ、デカい?」
葉っぱと言うよりは、玉?
ヒュウウ…………ばちゃあん!
『ぬっ?』
ジュウウウ……
炎で焼けた玉の中から液体が飛び出し、炎の王を濡らす。
『ぐおおおおおおおおおおおおっ!』
あ、効いてる効いてる!
「どうですか! 葉刃は葉刃でも、ウツボカズラの葉刃です!」
「ウツボカズラって……消化液を内部に貯め込んでるヤツ?」
「はい! 消化液だろうが何だろうが、水には代わりありません!」
た、確かに。
ばちゃあん! ばちゃばちゃあん!
『があああああああああああああっ!!』
葉刃……ていうかウツボカズラ爆弾で次々に身体を消火されていく。
「消化液で消火なんて、やったことある人はいないでしょうね」
見る見るうちに小さくなっていく炎の王。これは勝負が決する……ていうか消火作業が完了するのも時間の問題か。
「だけど手を抜いたらダメよ。もっといっぱいウツボカズラ爆弾を!」
「葉刃です、一応」
ボシュボシュボシュ!
さらに大量に放たれるウツボカズラ爆弾。それは小さくなった炎の王に大量に降りかかり。
ばしゃああああん! ジュワアアア!
……完全に鎮火した。
まあ、当然ながら、これで済むわけはないんだけどね。