final battle5 連戦のサーチ。
ガチャン!
赤い玉が砕け散る。それと同時に、身体を構成していたガラクタがバラバラと落ち始める。
ガラガラ……ガタタタタタッ!
「……勝った……んですか?」
腕を痛々しいまでにボロボロにしたリーフが戻ってくる。急いでポーションをかけてやってから、ギュッと抱きしめる。
「サ、サーチお姉様?」
「ごめん。こんなになるまで、ムチャさせちゃって」
私の背中にリーフの腕が回ってくる。
「いえ。サーチお姉様に任された使命、まっとうできて良かったです」
リーフ……。
「サーチお姉様……」
背中に回っていた腕の力が強くなり、肩に乗っていた顔が首筋に流れてくる。
「ちょっと、くすぐったいんだけど」
「サーチお姉様……」
ペロッ
「ふあっ!? ちょっ、首筋は弱……ひあああああっ!?」
抱きしめ合ったまま、体勢が崩れていき、そのままリーフは……。
「おほんっ!」
「「ひえっ!?」」
ヴィーの咳払いでパッと離れる私達。あ、危なかった……。
「……リーフ、でしたか。今後の事は正妻である私と、後からゆっくりじっくり話し合いましょう」
「は、はいいっ!」
まさにヘビに睨まれたカエル。ヴィーはリアルにヘビだし、リーフは緑色だし。
「サーチ」
「んー?」
「私の見ている前で堂々と浮気ですか?」
いや、そのつもりは一切なかったんだけど……まあ、あのままだったら危なかったのは事実。
「気をつけるわよ」
「……女性関係については、サーチの『気を付ける』は当てになりませんよ?」
「え、そんなことないよ」
「……伴侶は何人ですか?」
え、ヴィーとエイミアだから、二人。
「ですが候補となりますと、なかなかの数ですよ」
え、そうかな。ナイア……くらいじゃない?
「リジーも怪しいですね」
え、リジーが?
「それにイエローも怪しいですね」
イエローが? まっさかあ。
「そして何より、実力行使に打って出たリーフ」
リーフも?
「リーフも、という事は、フレア・ウォータ・スカイもそうですよ」
何でリーフは肯定した上に、他の精霊シスターズまで巻き込むのかな!?
「……つまりリーフは、伴侶になりたいと?」
「はい。勿論、正妻の座を争うつもりはありません」
「……わかりました。この戦いが終わってから、エイミアやナイアを交えて相談しましょう」
待て待て待て。何で私のプライベートなことが、ヴィーとリーフとの間で決められてるのよ。
「……ん? ていうか、この戦いが終わってからって、もう終わったんじゃね?」
それを聞いたヴィーが、大きくため息を吐いた。な、何よ。
「サーチ、油断しすぎです。敵が完全に滅んだか、きちんと見届けましたか?」
きちんとって……ま、まさか。
……メラメラッ
振り返ってみると、崩れたガラクタの中から、青白い炎が立ち上っていた。
「青白い……って、まさか?」
「青白い炎はゴーストの証。滅んだ炎の王が、ゾンビ化したのでしょうね」
はあああっ!?
「リーフ、まだ終わりじゃないわ!」
「わかってます!」
再び身構える私達の前で、青白い炎はだんだんと形になっていく。
『……我は一度敗れた者である……だかこのままでは終われぬ』
だ、第二形態で終わりじゃないのかよ。
『我に土を着けた者、全てに滅びを与えんが為、我は恥を忍んでここに在る』
青白い炎は人型になり、ついに顔も現れる。
『我は炎の王……貴様等を……憎む』
ゴオオオッ!
燃え上がる炎は熱さを感じない。逆に寒さを感じるかのように、全身に悪寒が走る。
「…………これは……反則だわ」
「な、何がですか?」
「あの炎、たぶんだけど肉体を燃やさない。作用するのは、魂に直接だと思う」
「え!?」
「しかもこれだけの不気味さとなると……触れた瞬間に魂燃やされちゃうかもね」
「それって……触れた瞬間にあの世行きってことですか!?」
うん、そう思っといて構わない。
「攻撃、防御しちゃダメよ。全て避けて」
「ひええ……」
攻撃の全てが、当たれば即死判定。ゲームバランス崩壊もいいとこじゃないの!
「マーシャンも運営委員会なら、ちゃんと見張っときなさいよ……行くわよ、リーフ!」
「はい!」
先手必勝。フェイバリットで一気に攻める。
「『鉄クズの流星雨』!」
『『深緑の葉刃』!』
無論、対ゴースト仕様のミスリルクズだ。
ザシュザシュザシュ!
私の鉄……ミスリルクズだけじゃなく、リーフの葉刃もクリーンヒットする。
『……我が身体に刃は通じず』
ていうか、身体に刺さったと同時に溶かされたか。葉っぱはともかく、ミスリルまで一瞬に溶かしたのかよ。
『大人しく我が炎で燃え尽きるが良い。「狐火」』
ボッ ボッ ボッ
本来なら幻惑効果しかないはずの狐火が、即死効果を纏って漂う。
「リーフ、退くわよ!」
「あ、はい!」
『……逝け』
ボボボボボボボボボボッ!
狐火が弾丸のように打ち出され、私達の背中に迫る。
「ソース子、お願い!」
「召喚主様、どうかお力を!」
「「えっ」」
私達に背中を押されて、召喚主の二人が前へ。
「「ぎゃ、ぎゃあああああああああ!!」」
ボフボフボフボフボフボフッ!
ソース子とふぇ子に着弾した狐火は、二人に届くことなく消滅していく。
「…………っ」
「……ふぇ」
キッと私を睨むソース子。白目を剥いて気絶するふぇ子。
「サーチさん、一言は言ってって言ったよね!?」
「ごめんごめん、緊急避難よ……ていうか、今回は間違いなく頼りまくるから」
そう言われて大きくため息を吐くソース子。
「……わかったわ。今回は私がサーチさんの盾になるから!」
オッケー、お願いね!