final battle5 作戦のサーチ。
「葉刃!」
「はああっ!」
ザンッ! ザクッ!
次々に襲ってくる炎の触手を、リーフと一緒に斬り落としていく。
「……ど、どれだけあるんですか、あれ!?」
無限に湧いて出てくるコード。斬られて落ちるたびにガラクタ内から新しいコードが出てきて、炎を纏って攻撃してくる。
「まあ、仮にも最新のロボットらしいからね。そりゃ体内には無尽蔵にコードがあるでしょうよ」
「む、無尽蔵ですか!?」
「人間の体内だって、血管やら神経やら全身に張り巡らしてるでしょ? 要はそれと似たようなもんよ」
「わ、わかったようなわからないような……」
「確か……体内の血管を一本に繋げて伸ばすと、100,000㎞になるんじゃなかったかな」
「え゛」
地球を二周半いけます。
「それ並みにあるって事ですか!?」
「いや、流石にそこまではない……と思う」
ヒュンヒュヒュン!
「あ、あわわわ! 数が増えて!?」
『我をマエにお喋りとは、ズイブンと余裕があるヨウダナ!』
機械音が混じったような声は直ってない、か。
「今の状態で身体が安定してるとは思えない。だったらどこかでバランスを崩してやれば……」
「サ、サーチお姉様! 考えるより先に、手を動かしてもらえませんか!?」
「待って。今考え中だから、ちょっと頑張ってて」
それを聞いたリーフさん、この世の終わりみたいな表情になる。
「そ、な、む、無理に決まってるじゃないですかあああっ!」
ヒュン!
バシィ!
「あ、あぶ!?」
元々は人型のロボットだから、やっぱり人間の構造を元に作られてるはず。だったら背骨的なモノが中心にある……はず。
「リーフ、もう少し粘ってて…………ここか!?」
ビシュ!
構造的に背骨と思われる場所にナイフを投げてみたけど、何も変化はない。
「あれ? もしかして背骨の位置がズレてる?」
ブゥン!
「え…………ウ、ウワサをすれば、あれって背骨よね……」
人間の背骨によく似た形の鉄柱が、私達に向かって振り下ろされる。
ズズゥン!
「「うひゃあ!」」
こ、これは防げるレベルじゃないいっ!
「サ、サーチお姉様、これはリーフでも流石に……」
「わかってる! ていうか、さっきの金剛樹とかってので防げそう?」
「打撃自体は防げても、衝撃で身体がバラバラになります!」
でしょうね! あんだけ重量があるんだから、受け止めて裁くなんて芸当も絶対ムリ!
「つまり避けるしかないってことか……リーフ、細いのは任せたわ」
「細いのって……はわわわわわ!?」
ヒュヒュン! ビシビシィ!
怒涛の勢いで繰り出される炎の触手を、リーフは葉っぱで作った盾で防ぐ。
「い、いくら大魔神の護符があったって、これは流石に……!」
炎は無効にできても、打撃はどうしようもできない。葉っぱの盾やツタで必死にガードする。
「あんなぶっとい背骨、傷つけるのも難しいわよね。だったら」
背骨以上の急所、頭を狙う。今回は頭に該当するであろう、赤い玉がターゲットだ。
「とは言っても、赤い玉を守るバリア、ぶ厚そうだしなあ……」
相当な貫通力がないと、赤い玉までは届かないだろう。
「だったら衝撃で脳震とうを……いや、あんな赤い玉に脳という概念は通じない……」
普通の生物に使えそうな戦法は一切使えない。
「……待って、相手は機械なんだから、電磁波には弱いんじゃ…………ああダメだ、電磁波を発生させる手段がない」
必死で攻撃をいなすリーフを思うと、焦りばかりが募る。ここは冷静に、冷静に……。
「ふぅぅ……やっぱり赤い玉への直接攻撃が一番現実的か。なら……」
狙うはバリアの薄い部分。
「とは言っても、どこが薄いかなんてわかるはずが…………ん?」
そうだ。一箇所だけ、確実にバリアが張ってない場所がある。
「バラバラで不安定な状態の今なら、付け入る隙はある……!」
問題は全身を覆う炎。あれじゃ近づくこともできない。
「サーチお姉様、もう限界です!」
「ああ、ごめんごめん。すっかり忘れ…………って、そうか、あんたがいた」
「はい?」
「いい、タイミングよ。タイミングさえ間違わなければ、炎が無効なあんたなら潜り込める」
「は、はい!」
防御担当を交代して、私が攻撃を受け続ける……ていうか、マジであっつい!
「これじゃ体力的に長くは保たないわ。決めるなら一発勝負よ」
「ひ、ひええ……」
緊張するリーフが心配だけど、あまり時間はない。
「なら作戦開始! 『鉄クズの流星雨』!」
防御体勢からムリヤリフェイバリットを発動する。
ガンガガンギンギンゴンガン!
鉄クズと炎の触手がぶつかり合って、一瞬だけど何もない空間ができる。今だ!
「リーフ!」
「はい!」
自分自身を乗せたツタを伸ばして、リーフが炎の王に迫る。
『させるカァ!』
ゴオオオッ!
察知した炎の王が強烈な炎を浴びせるものの、リーフには通用しない。
「やあああっ!」
燃えたツタから飛んで炎の王の頭部……赤い玉に迫る。
『馬鹿メ! そのバリアを破れるモノか!』
無論、狙うのはバリアではなく……。
「葉刃!」
バラバラになって隙間だらけになった、胸部。
ガギガギ!
脆くなっていた胸部の装甲が崩れ、穴が空く。
「届けええええええええっ!!」
そこに手を突っ込み、首の装甲内部に達すれば!
『グガガッ!?』
「そんな強力なバリア、身体の中には展開できないでしょ!」
リーフの指が奥深く突き刺さったところで。
「『深緑の葉刃』!」
ズガガガ!
『グギゃアあアアアアあアアあっ!!』
リーフのフェイバリットが炸裂。
ザクザクッ!
首の装甲を食い破った葉刃が、赤い玉を貫通した。