final battle2 番外のリーフ。
「いたた……」
「信じらんない!」
激怒なソース子を宥めつつ、再び身構える。
「ソース子、また盾役お願いするかも」
「っ……じ、事前に言ってよね!」
悪かったって。
「さあて、これであんたの炎は通じないわよ」
『く……卑怯な!』
「卑怯? 鋼鉄のボディを持って、しかも炎という高い攻撃能力を持ったあんたが言うセリフ?」
『炎はともかく、鋼鉄のボディとやらは我が物とは言えぬが?』
う、確かに。
「めんどくさい状態にしてくれたわよね、ミスズさん……ぽげぎゃ!?」
『面倒くさいなんて悪い事を言う娘は、ダウトですよダウト』
……きゅう。
「あ、あれ、か……サーチさん?」
サーチさんが急に倒れて動かなくなった?
『……どうしたのだ?』
さ、さあ。私にもさっぱり……。
「死んだのでしたら、霧散して消えるはずです。なので気絶してるのでしょうね」
あー、そう言えばそういう状態異常があったなあ。確か何ターンか行動不能になるヤツ。
「気絶している相手と戦いますか、炎の王さん?」
『……いや、それは我が矜持を汚す事にしかならぬ。よって、目を覚ますまでは手は出さぬ』
おお。なら、何とかなるかも。
「なら私達にも手を出さない?」
『せぬよ。大体、召喚術士に手を出せぬ設定である以上、我にはどうする事もできぬ』
あ、確かに。
「つまり、か……サーチさんが戦線復帰するまで、休戦するしかない、と」
「そのようですね」
一応召喚術士は三人居るけど、私はサーチさんが気絶中。
「私も陛下が消えてしまいましたから……」
アン先輩……中の人はヴィー……も召喚獣の陛下が居ない。
「ふぇぇぇ!」
「召喚主様、落ち着いて下さい、どうどう」
クラ子にはリーフが…………あ、まだ召喚獣が居た。
『…………そこの葉っぱ娘』
「誰が葉っぱ娘ですか!?」
『ではグリーン姉』
「それは絶っ対に駄目ですからね」
検索しちゃ駄目だからね!
『……で、貴様はどうするのだ?』
「リーフが、ですか? と言うより、何をしろと?」
『お前も戦いに来たのでは無いか?』
「いえ。召喚主様を遺す訳にはいきませんので」
そう言ってからふぇふぇ叫ぶクラ子を抱き締める。うん、本当にどっちが主人なんだか。
『そうか…………ならば番外戦をしようではないか』
「は?」
『ぶっちゃけ、暇なのだ』
「はい…………それは暇つぶしにリーフと戦いたいと?」
『まあ、そうなるな』
「お断りします。炎の王にリーフが勝てるはずがありませんし、暇つぶしで殺されてはたまったもんじゃありません」
それはそうだよね。
『だから、番外戦なのだ。我は絶対に貴様を死なせないと誓約しよう』
それを聞いたリーフが、スッと顔をあげる。
「……リーフは……死ななくて済むのですか?」
『言い方を変えよう。我の胸を貸してやるから、腕試しをせぬか?』
「それは……召喚獣としての行動制限も外してもらえるんですか?」
『貴様が望むのならば、我が権限を以て許可しよう』
それを聞いた途端に、リーフの周りに樹木が展開して……え?
「申し訳ありません、召喚主様。リーフは少しの間だけ、ただのリーフに戻ります」
「ふぇ!?」
「では炎の王……いえ、炎の長老様、よろしくお願いします」
『うむ、久々に若い精霊族に手解きしてやるか』
な、何か急展開。
「しかし炎の長老様」
『む?』
「訓練とはいえ、貴方様を倒してしまっても、構わないのでしょうか?」
うわ。どこかで聞いた事がある台詞。
『ふ、ふふ、ふはははは! 良い気概だ……来い!』
「はあああっ!」
リーフの周りに生えた樹木から、蔦や葉っぱが 伸びていく。
『木切れや枯れ葉が我に通用すると思うたか!』
身体に触れる前に、全ての攻撃が焼き払われる。
「く……全力の攻撃でも、届きもしませんか!」
リーフは葉っぱを掴み、魔力を送り込む。
「硬化葉槍! たああっ!」
緑色の槍が、炎の王の身体に刺さる。
ボフッ!
……事は無く、燃え尽きて粉々に……。
グンッ!
『なっ!?』
「硬化したのは周りだけ! メインは内側の花粉よ!」
炎の王が、花粉によって包まれる。
「食らえ奥の手、激烈花粉症!」
『くっ……!』
アナフィラキシーショックか。狙いは良いと思う。だけどリーフ、決定的なミスを冒してる。
「リーフ、そのロボットの身体、呼吸してると思う?」
「呼吸…………ああああっ! 息してないなら意味が無いいいっ!」
『確かに狙いは良かったが……無生物である我には効果が無いな』
本当に奥の手だったのだろう。リーフは緑色の瞳に涙を溜めて、ガックリとうなだれた。
『ふむ、まだまだだな』
そう言われたリーフはカッと目を見開き。
「うああああああああああっ!」
木の枝を剣に作り変えて斬りかかる。
『自暴自棄は最も愚かなり』
ブォンッ!
「きゃ!?」
機械の脚に払われて、うつ伏せに倒れる。
「く…………っ!?」
仰向けになって起き上がろうとした先には、炎の王の拳があった。
「……ま、参りました」
『まだまだ強くなれる。精進するが良い』
その一言を聞いてリーフが俯きかけた時。
ボッ
「え……あつあつっ!」
『む、済まぬ。我が熱が衣服を焼いたか』
ちょうど拳の下にあったリーフの服が熱で燃えたのだ。
「あ、あつ、熱かった……」
それでちょうど胸の谷間があらわになり。
「……う~ん……あれ、私、寝てた?」
ちょうどか……サーチさんが目覚め。
「ん?」
「ん?」
『ん?』
リーフと炎の王と目が合う。
「な…………な、何やってんのよ、あんたは!?」
胸をはだけたリーフの上に跨がる炎の王。その絵はまさに。
「この、チカンヘンタイゴーカンマアアアアアアアアアアッ!!」
『ち、違う、濡れ衣だああっ!』
こうして、戦いはまた再開されました。