final battle1 開始のサーチ。
身構える私に対して、余裕な態度を見せる炎の王。
「構えないの? 私の踏み込みは早いわよ」
『ふん、所詮は人間。上位種である炎の一族に敵うとでも思っているのか?』
あっそ。
ギギィン!
『ぬっ!?』
「ちぃ、流石に硬いな」
左腕の付け根にリングブレードを食い込まされた炎の王が、驚きの声をあげる。
『ふ、ふふふ。やるではないか、娘』
「あのね、あんたは灼熱大陸で一度負けてるんだってわかってるの?」
『ほぉう? 負けた? 我が?』
「実際に同じような状況で追い詰められたの、忘れたとは言わせないわよ」
『我が負けたと主張するのならば、何故貴様はここに居るのだ?』
は?
『貴様が確実に勝利していれば、今頃貴様は向こうの世界で幸せな日々を過ごしていたのではないか?』
待って。それって。
「私をこの世界に引きずり込んだのって……!」
『ふふふふ、わはははははははは! そうだ。あの時、火口近くでユルユルと休んでいた貴様を、こっちの世界に引きずり込んでやったのは、この我だ』
……っ!
ギギギィィン!
『な、速い!?』
一気に首を狙うけど、やっぱりこっちも硬い。
『しかし通じんな。無駄だ無駄だ!』
ズドムッ!
「くふぅ!」
鳩尾を蹴られて、そのまま吹き飛ばされる。
クルッ ズザザザザッ
空中で体勢を立て直し、どうにか着地する。
「ケホ、き、効いたぁ……」
『ふふふ、よく我が一撃を受けてその程度で済んだものだ』
「……ていうか、あんた気づかなかったの?」
『何がだ?』
「私はその蹴りが読めたから、受ける寸前にリングブレードで防御しながら後ろに飛んだのよ」
『ぬっ!?』
「そうやって勢いを殺したからこそ、私はこの程度で済んでるのよ」
勢いを殺しきれなくてダメージを受けたのはご愛嬌ってことで。
『……つまり、そこまでギリギリのタイミングでないと、我が攻撃を受けきれなかったと?』
ま、そうとも言える。
『つまり、体術においても我と貴様は拮抗しているのだ』
「……だったら何?」
『つまり炎を自在に操れる分、我が有利だという事だ!』
ブオオオッ!
頭……赤い玉から強烈な炎が放たれる。
「ちぃぃ!」
必死に回避するけど、広範囲に広がってくるため、次第に追い詰められていく。
『ほうら、もう逃げ場は無いぞ?』
くっ! いつの間にか周りを炎で囲まれてる!
『素早い相手は、炎で囲って逃げられなくしてしまえばいい。我を玉座にふんぞり返るだけの王と思うな!』
一気に炎の壁が狭められ、中央に追いやられ。
ゴオオオッ!
「きゃああああああっ!」
『ふはははは、燃え尽きてしまえ!』
「きゃああああ…………なーんちゃって♪」
ドゴォ!
『ぐっはあああっ!?』
「ちっ、グラビティコアのハンマーでも、ちょっとヘコんだだけか」
一番重い金属であるグラビティコア製ハンマーでの不意打ちも、決定打にはならないみたいだ。
『ぐ……い、いつの間に!?』
「あのね、周りを囲まれてるなら上に逃げればいいだけでしょ。あれだけ不必要に炎を発生させてるんだから、あんたの目を誤魔化すのも簡単だったし」
炎の壁を逆に利用して、死角を作り出したのだ。
『ぐ、くくく……そうだな。こうでなければ、最終決戦に相応しく無いな』
「ていうか、ホントにラストなの?」
『む? 何がだ?』
「いやさ、ラスボス名乗るヤツを倒したとたんに、真のラスボスが現れるって、よくあるパターンだから」
それを聞いた炎の王の動きが止まる。
『……何が言いたい?』
「いやね、あんたも例に洩れず、誰かのパシりなのかなーって」
ゴオオオッ!
「うひゃあ!」
急に火の玉を投げつけられ、マ○リッ○ス並みの体勢で避ける。
「あ、危ないわね!」
『……誰がパシりだと?』
へ?
『誰がパシりだと言っているのだ?』
「だ、だから、あんたが」
『誰が誰のパシりだと聞いているのだ、小娘があああああああっ!』
あ、怒っちゃった?
『ぬぅぅぅああああああああっ!』
超巨大な火の玉を作る炎の王。ちょ、ちょっと待ってよ。
「そ、それは強烈すぎる気が……」
『何を言うか。ラスボスの強烈な全体攻撃も、よくあるパターンの一つではないか?』
そ、そんな嫌なパターンは再現しなくていいから!
『ついでだ、その技に相応しい名前を付けようか………………よし、「炎で骨まで愛して」でどうだ?』
「そんな名前の技、死んでも受けたくないわよ!」
『ならば、死ね』
そう言って振り下ろされる腕。それと同時に、迫り来る火の玉……って、マジでヤバいって!
「に、逃げ場がない……!」
「か……サーチさん、逃げてぇ!」
「ん?」
不意に聞こえる叫び声。ああ、そう言えばソース子が近くにいたっけ…………って!
「そうか! ソース子!」
「え?」
急いでソース子の後ろに隠れる。
「え? えええっ!?」
そのまま、火の玉が地面に着弾して。
ゴオオオオオッ!
「うきゃあああああああああっ!」
私はソース子ごと炎に飲み込まれた。
『ふはははははは! どうだ、我が炎の威力は!?』
凄まじい熱気が消えていくと同時に、だんだんと姿が見えてきただろう。
『……な、何ぃ!?』
白目を剥いたソース子と、それを支える私の姿が。
『な、何故……』
「ダメージがないかって? だって、この世界はゲームなんでしょ?」
『だ、だから何だ!?』
「戦いに直接関係ない召喚術士に、ダメージを与えられるはずないでしょうが」
それが可能なら、プレイヤーキルがまかり通ってるわよ。
「さあ、こっちにはイージス以上の盾があるわよ。どこからでもかかってらっしゃいてええええっ!?」
目を覚ましたソース子におもいっきり足を踏まれ、ダメージを負った。