last stage15 鉄槌のサーチ。
「ではサーチよ、ズバババーーンと呼び出すのじゃ!」
何で未来の私を呼び出す効果音がズバババーーンなんだよ。
「ていうか、どうやって呼び出すのよ?」
それを聞いたマーシャンが、驚きの表情を浮かべる。
「な、何じゃとおおおおおお!?」
何なのよ、そのリアクションは。
「し、知らなんだのか、こんな簡単な方法を……」
簡単な方法だぁ?
「あのさあ、仮にも火属性の頂点に立つ、八大精霊の一角だよ? そんな簡単に呼び出せるはずかいじゃん」
「いや、召喚術が発達したこの世界だからこそ、できる魔術もあるのじゃよ」
そ、そうなの!?
「ならば見せてやるかの……この世界最大の召喚術をな」
え?
「Sクラスに匹敵するモンスターを呼び出せる禁忌の召喚術じゃ!」
え、それって。
「召喚獣の交代じゃ?」
「その通りじゃ! 星六である妾でも、運営側の権限を使えば使用は可能!」
ていうか、それを使うってことは、マーシャンが退場……!
「禁忌・竜喚術!」
バリバリバリッ ズドドオオオン!
「ぐぬぬぬぬぬっ!」
マーシャンに紫色の光が落ち、ドット状に身体が分解されていく。
「マーシャン!?」
「し、心配するでない。わ、妾は、先に元、の世界に、も、戻るだけ、じゃ」
「そんな、マーシャン!!」
「サ、サーチや、あとを頼……む……」
ブシュン!
紫色の光が消えると同時に、マーシャンの姿も消えていた。
が、やがて。
ブウウウ……ン
空中に巨大な魔方陣が複数展開し、それが幾重にも重なっていく。
「魔方陣が重なって、新たな魔方陣に……いや、これは!?」
魔方陣を解読していたらしいヴィーが、珍しく驚きの声をあげる。
「ヴィー、あれが何なのかわかるの?」
「あ、あれは竜喚陣……強力なドラゴンを呼び出す為の……」
強力なドラゴンって。
「真竜クラス?」
「いえ、もっと上です。こ、これは、まさか……!」
い、一体何が出てくるの?
パアアア……
魔方陣……いや、竜喚陣が地上に降りてくる。それと同時に、ドットで巨大なドラゴンが形作られていく。
「こ、この威圧感、強大な魔力……間違い無く嘆」
「はい、ダウト~」
ずびしっ!
「あきゃあ!?」
ゴロゴロゴロゴロッ、ポテン
…………え?
「そこから先は言っちゃ駄目ですよ、特にサーチの前ではね」
え? ええ?
「お久し振りですね、サーチ」
ま、まさか。
「ミ、ミスズさん?」
「はい、ミスズです。覚えていて下さったんですね」
そ、そりゃあ、ねえ。
「あれだけの強烈なインパクト」
「はい、ダウト~」
ずびしっ!
「ぐぎゃあ!」
ゴロゴロゴロゴロッ ポテン
「私を化け物扱いしては駄目ですよ?」
「あいだだだだだだ……あ、相変わらずのデコピンだわね……」
「うふふ。で、私を呼び出したのは陛下ですね」
え、わかるの?
「勿論。呼び出される直前まで、ちゃんと見てましたから」
み、見てたって。
「それはさておき、私を呼び出した理由は何なのでしょうか?」
………………あ。
「そういえばマーシャン、何でミスズさんを呼び出したのかな?」
「い、言われてみればそうよね。未来のか……サラ・マンダを呼び出すからって話になったら、急に陛下が竜喚陣ってのを使い出して……」
「はい、陛下はミスズさんを召喚された引き換えに、この世界から消えました」
ふむ…………冷静に考えてみれば。
「…………逃げたな、マーシャン」
「どう考えても、ミスズさんに全てを押しつけて逃げた、とリーフも考えます」
それを聞いたミスズさん、こめかみに血管を浮かべる。
「成程、陛下が私にねえ…………」
そう呟いたミスズさんは、いきなり右手を。
ズブゥ
空中に突き刺し……って、えええ!?
「はい、捕まえました」
ズブズブズブゥ……ズポン!
「ぶふぅあ!? な、何事じゃ、いきなり!?」
マ、マーシャン!?
「いきなり空中から手が現れて、妾の顔を掴み…………む? サーチかえ?」
「ていうか、マーシャン。何で顔だけこっちに来てるの?」
「じゃ、じゃから、正体不明の手に掴まれ」
「私の手ですよ、陛下」
「私の手って……ま、まさか、嘆」
「はい、ダウト~」
ずびしっ!
「あがああ! こ、このデコピンは……!」
冷や汗をダラダラ垂らすマーシャンの視線が、ミスズさんの姿を捉える。
「げえええっ! ま、まさか、空間を越えて妾を捕まえたのはああ!?」
「無論、私ですよ。全てを押しつけて高みの見物をしようとしていた愚か者に、鉄槌をと思いましてね」
いやいや、ミスズさんのデコピンは、鉄槌どころかトールハンマー並みの……。
「はい、ダウト~」
ずびしっ!
「ぐぎゃあ!」
ゴロゴロゴロゴロッ ポテン
「あんな雷発生するだけの槌と一緒にしないで下さい」
あぐぐ……すいません。
「さーて、それでは……お仕置きタイムですね♪」
「ま、待て、待つのじゃ。妾はサーチ達の為を思って、其方を召喚したのじゃ」
「厄介事を押しつけて逃げてきた、と向こうで会話していたじゃありませんか」
「うぐっ!?」
「はい、証拠は出ましたからお仕置き確定ですね♪」
「な!? りょ、両手でデコピンは駄目じゃ! 死ぬ! 死んでしまう!」
「はい、ダウト~」
ずびしびしっ!
「うぎゃあ!」
顔が引っ込むマーシャン。そのあとを追いかけるように、ミスズさんが再び右手を突っ込み。
「ダウトダウトダウトダウトダウトダウトダウトダウトダウトダウトダウト…………うん、この辺りで許してあげましょう」
そう言って引き抜かれた手には、ベットリと血が着いていた。
「……マーシャン、なむ……」
「死んではいませんよ、多分」
たぶん、すか。