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last stage14 協議のサーチ。

『か、身体が無いのならば、この状態で戦うしかあるまい!』


 この状態でって。


「ていうか、どこにいるのよ?」


『我は炎の王。つまり、炎を統べる者なり』


 炎を統べる…………って、まさか。


『そうだ。この辺り一帯を覆うマグマ、熱気、そして噴き上がる炎。その全てが我なのだ』


 つ、つまり。


「この山が、炎の王そのモノ!?」


『そう言って過言は無いな』


 や、山自体が炎の王って……。


「ど、どうやって戦うのよ?」


『む、何が言いたいのだ?』


「だから、例えば」


 ザクッ!


 短剣を作り出し、地面に突き立てる。


『……何がしたいのだ?』


「山自体があんただって言うなら、これが私達の攻撃ってことになる」


『それが? 攻撃? フハハハハハ、痛くも痒くも無いわ!』


 そうね、これで山が痛がったらおかしいもんね。


『つまり貴様等は為す術が無い訳だな!』


「ていうか、それはあんたも同じなのよ?」


『何を世迷い言を! 我にダメージを与えられない事が確定した時点で、勝敗は決したのだ!』


「なら聞くけど、どうやって私達を攻撃するの?」


『攻撃? それは炎で…………あ』


 やっと気づいたみたいだ。


「山自体があんたって事は、火口が炎を噴き出せる場所。つまり、火口からしか攻撃できない。しかも噴火、という手段でしか」


『そ、そうだ! 噴火してしまえば、攻撃はいくらでも……』


「噴火で攻撃ってことは、噴石で狙うか、マグマを流すか、火砕流を起こすか、こんなとこかな」


『フハハハハハ! どれも貴様等には致命的であろう!』


「そうね、私達を正確に、ピンポイントに狙えるならね」


『ぬ?』


「つまり、今のあんたができる攻撃は、私達が巻き込まれることを期待するしかない広範囲攻撃しかできない」


『だから何なのだ? この辺り一帯諸共、貴様等を焼き尽くしてくれる!』


「だから、私達がこの辺り一帯から離れたらどうするのよ?」


『……何?』


「もしこの山が噴火したら、当然ながら私達は避難するわ」


『ひ、避難!?』


「マーシャンもいるから、安全に海上まで逃げ切れるわね」


『か、海上!?』


「で、海まで行けば……」


 沖で待機してる幽霊クルーザーから、ゴスロリのルック船長が大きく手を振る。


「最新のクルーザーがあるから、すぐに逃げ出せるわね」


『に、逃げるとは卑怯な!』


「そんな風になったら、どうやって私達を攻撃するのよ?」


『むむむむ……な、ならば、貴様等がこの山に留まって』


「だから、ダメージも与えられない私達が、ここにいる意味がないじゃない」


『ぅぬぅ!?』


「つまり、戦いにすらならないのよ、現状は」


 それを聞いた炎の王、一発軽く噴火してから。


『貴様等が我が身体を壊すから、こうなったんだろうがあああっ!』


 それは謝る。すまなんだ。



「さてさて、どうしたもんかしらね」


 火山の頂上で野営、という貴重な体験を実施中。


「そう言われましても……私も何も浮かびません」


 マーシャンの次に長寿なヴィーでもか。


「そうじゃの、妾達が勝つには山そのモノを吹っ飛ばすくらいしないと無理じゃの」


「え、できるの?」


「できる訳無かろうが」


 ですよねー。


「仮に吹っ飛ばせるとしても、それは火系魔術じゃぞ? 炎の王に通用するはずが無かろうが」


 属性の権化に同じ属性放ったら、吸収されるのがオチだわね。


「なら、やっぱり水ですか?」


「まあねえ。だけど火山に対抗できるほどの水ってなると……」


 ……海レベルか。


「……現実的ではないわね」


「ふぇぇ…………目には目を?」


 は?


「目には目を、歯には歯を、あるいはそれ以上の……」


「ふぇ子、つまり火山以上の火属性で攻撃しろっての? どうやって?」


「ふぇぇ……い、言ってみただけです」


 言ってみただけって、テキトーなこと言わないでよね。


「む? 火属性以上の火属性じゃと?」


 お。マーシャンが何か思いついたようだ。


「ていうか、火力弱い! 炎の王、もっと強火!」

『う、うむ』


 仕方なく休戦協定を結んだ私達は、炎の王から火を借りて調理しているのだ。


「だあああ! 弱すぎよ! 中華は火力が命なのよ!」

『す、すまん』


 私の得意料理であるチャーハンには、特に火力が必要なのだ。


「はい、できたわよ。三人前ね!」

「あ、私貰います」

「多めに頂戴ね、サーチさん」

「サーチお姉様、私にも」

「ふぇぇっ」


『って、何で我の頭上で寛いでるのだ、貴様等!』


「「「食事中は静かに!」」」

『あ、はい』


 今は黙食がトレンドなのよ。


「ふむ……やはりこれしかあるまい」


 あ、マーシャンの考えがまとまったみたいだ。


「何か思いついた?」


「うむ。思いついたと言うより、これ以外に手はあるまいて」


 え? そんな妙案があるの?


「火山を超える火属性となると、考えられるのは二つじゃ。一つは嘆きの竜(ローレライ)の放つブレスじゃな」


 嘆きの竜(ローレライ)!?


「山だけじゃなく世界そのモノが吹き飛ぶわよ!?」


「それは極端じゃが、どちらにしても世界が違う以上、流石に頼めぬの」


 となると、もう一つか。


「もう一つの手ならば、まだ望みはある」


「何だ、だったら最初からそっちを言ってくれればいいのに」


「じゃが、妾でも試した事が無いのでな」


「ふうん……で、どんな手なのよ?」


「簡単じゃ。火属性に対抗するなら、更に強力な火属性。それならばいっそ火属性を統べる者に協力を仰げば良い」


 火属性を統べる者って……属性の頂点ってこと?


「属性の頂点って……」


 そこまで聞いたヴィーが、ポツリと呟く。


「……精霊」


 そう言われてハッとなった。


「……サラ・マンダ?」

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