last stage7 断熱のサーチ。
「ここがキラキララ火山……」
ついに最終ダンジョンに着いた。勿論、観光地ハワワに向かうなんてことはない。
「アロハ~……ぐすっ」
「ふぇぇ……アロハ~」
……いい加減に諦めなさいっての。
「ま、でも気持ちはわからなくはないけどね」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「はあ……何が悲しくて、こんなクソ暑い場所で、クソ熱い溶岩の近くを歩かなきゃなんないのやら……」
最終ダンジョンとは言っても、ひたすらキラキララ火山の火口まで歩くだけなのだが。
「ふう、ふう、あっつい……」
ソース子も相当暑そうで、汗だくで息絶え絶えだ。
「か……サーチさん、その格好羨ましいかも」
やかましい。ていうか、剥き出しの皮膚にジリジリとくる熱さが堪える。
「いや、これは砂漠と同じで、全身を何かで覆った方がいいわ」
くそ、魔法の袋さえあれば、暑さ除けの外套があるのに。
「仕方ない、とりあえずこれで代用するか……≪偽物≫」
ファサッ
アルミ箔を二重にしたようなモノを作り出し、頭から羽織る。
「サ、サーチ、それは何ですか?」
「暑さ除けよ。あ、これはいいわ」
意外と涼しい。
「ふぅ、ふぅ、はあ、はあ」
「はああ、はああ、はああ」
……気のせいか、激しい息づかいが私に集中されてるような。
「「「はあはあはあはあはあはあ」」」
気のせいじゃないい!
「な、何なのよ、あんた達!」
「サーチ、私も暑いです」
「サーチお姉様、私も」
「わ、妾もじゃ」
「ふぇぇぇ」
……あれ。もう一人、グダグダと絡んできそうなのがいるはずなんだけど……?
「ふう、涼しい」
「ていうか、いつの間にかアルミ箔の中に!?」
「え、いいじゃない。召喚主なんだし」
そ、それを言われちゃうと……。
「あ、ソース子、それは狡いです」
「そうですよ、リーフも入れて下さい」
「妾もじゃ、妾もじゃ」
「ふぇぇぇ!」
強引にアルミ箔の中に潜り込んでくる四人。あ、こら、止めなさい!
ビリリッ
「「「ああっ」」」
ほらあああ、破れちゃったじゃないのおおお!
「サ、サーチお姉様、ごめんなさい」
「ふぇぇぇ、ふぇふぇふぇぇぇ!」
ペコペコと頭を下げるリーフとふぇ子。
「あっつ! 暑いですね!」
「サーチ、早く直すのじゃ! 耐えられん!」
全く反省しないヴィーとマーシャン。
「はい、リーフ達には特別に作ってあげる。ヴィー達は自分で何とかしろ」
「「やったああ!」」
「「ええええ!?」」
歓声と悲鳴が同時にキラキララ火山にこだました。
「ふぅ、ふぅ、やっぱり暑いわね」
「か……サーチさんのアルミ箔でも、そろそろ熱を遮断できないわね」
そりゃそうだ。アルミ箔の二層だけじゃ、時間稼ぎがせいぜいだ。
「他に手は無いですか?」
うーん…………あ。
「リーフ、葉っぱをたくさん出してくれない?」
「葉っぱを、ですか?」
「そう。アルミ箔の二層の間に、断熱材代わりに葉っぱを詰めれば、あるいは……」
「成程、試してみてもいいですね……えいっ」
バササッ
そう言ってからリーフは大量の葉っぱを出現させた。
「オッケー。これをアルミ箔に」
ビリッ
わざと破って穴を空けると、そこに葉っぱを詰め込んでいく。
「私も手伝う」
「ふぇ、私も」
ガサガサッ
四人でやればあっという間、かなりパンパンに葉っぱを詰め込む。
「これを四人分に切り離して、さらに加工して……」
久々に≪偽物≫フル回転。
「……っ……よし、できた」
一人一人羽織れるように、コートにして手渡す。
「うわあ、ギンギラギン」
言うな。アルミ箔なんだから仕方ない。
「着てみなさい。まだ不具合があるんだったら言ってね」
ガサガサガサガサッ
……音がするのは仕方ないな、うん。
「あら、意外と悪くないかも」
「はい、ガサガサ感が気にはなりますが、暑くありませんね」
「ふぇぇ、ガサガサ、ふぇぇ、暑くない」
ま、応急処置だから。
「「はあはあはあはあはあはあはあはあはあ」」
……後ろから約二名の熱気が伝わってくるけど、サクッとスルー。
「はあ、はあ」
かなり登ってきたけど、火口はまだまだ先だ。
「か……サーチさん、後ろの二人、いいの?」
「何が?」
「アルミ箔着てるよ」
へ?
「……あ、ホントだ」
いつの間にかヴィーとマーシャン、アルミ箔のコートを作って着込んでいる。
しかも。
「はああ……アルミ箔の中を循環する水が冷え冷えです」
「水系魔術を使える妾のお陰じゃぞ、感謝するのじゃ!」
どうやらマーシャン、私のを見て自分で≪偽物≫を使い、アルミ箔コートを作った模様。
「か……サーチさん以外に使えるんだ、あの魔術」
「まあね。使い勝手が悪いだけで、誰でも使える基本的な魔術だし」
私は≪偽物≫しか使えないので、いろいろ試行錯誤してるに過ぎない。
「どうじゃ、サーチ? 妾の方が一段も二段も上じゃろ?」
はいはいはい、そうねそうね。
「だけどマーシャン、あんまり溶岩に近寄っちゃダメだからね」
「何を言うか。この高性能アルミ箔コートなら、これくらいの暑さは無問題じゃ」
調子に乗ってマグマに近づくマーシャン。
「ヴィーはダメだからね?」
「わかってますよ」
あ、ヴィーはちゃんと理解してたか。
「ほーれほれ、涼しいぞ涼しいぞ…………む?」
ほら、言わんこっちゃない。
「な、何じゃ、暑いぞ……いや、暑いのではなく熱い……あっつあっつあっつ熱い熱い熱い熱いあっちいいいいっ!」
急いで脱ぎ捨てたアルミ箔コートからは、大量のお湯が流れ出していた。
「葉っぱと違って水は熱を伝えやすいから、あっという間にお湯になっちゃうでしょうが」
……結局ヴィーのも次第にお湯になってしまい、二人は私に謝ることで、ようやく葉っぱアルミ箔コートをゲットしたのだった。