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last stage4 取憑のサーチ。

 ザアアア……

 幽霊船改め幽霊クルーザー、メチャクチャ快調です。


「ここまで順調だと、気味が悪いくらいね」


「あのボロボロでいつ沈むかわからない幽霊船が、こんな最新の船になれるんですね」


 パーティには大好評なんだけど、幽霊クルーザーの持ち主であるルック船長は不満タラタラっぽい。


『恨めしい! 実に恨めしい!』

「ゴスロリ船長、お酒のつまみないかな?」

『知らないよ! 自分で探してきなよ!』


 ゴスロリで眼帯な趣味丸出しファッションのルック船長、すこぶる機嫌が悪いのだ。


『ったく、カルパスならあったから、これで我慢して!』

「ロリロリ船長、何か軽い飲み物が欲しいのじゃが」

『だから、自分で探せっつってんでしょ! ほら、カクテルの甘いのならあるから!』


 ……機嫌が悪いんだけど、フットワークが軽くなったなあ。


「あ、あの、船長さん」

『何だよ!?』

「ふぇ!? な、何でもありません、ふぇぇっ」

「召還主様を泣かせたわね、悪霊さん!」


 刃物……じゃなく葉物をもったリーフが凄む。


『あのね、私は自分の持ち物を勝手に弄くられた挙げ句、自分のポリシーとも言えるファッションを否定され、意に添わない格好させられるわけ! それで愛想良く応対しろっての!?』


 うん、一字一句に至るまでルック船長正しい。


「ロリータ船長、リーフが問い質しているのはふぇ子への態度の話であって、あんたの境遇については何も触れてないわよ?」


 そう言われたルック船長、さらに表情を歪める。


『なら何で私の事をゴスロリだとかロリロリだとかロリータとか呼ぶんだよ!』


 そう言われたリーフが明後日の方向を向いた。どうやら思わず口にしてしまったようだ。



 幽霊クルーザーの甲板でひなたぼっこをしていると、ルック船長が私に噛みついてきた。


 ガブッ

「あいたっ!?」

『取り憑き主、あんたのせいだからね!』


 ていうか、よく霊体で私に噛みつけたわね。


『一年分の霊力を込めた噛み付きだよ!』


 んなくだらないことで霊力のムダ使いすんな。


「で、何で噛みついのよ」

『呼んでも呼んでも反応しないからだろが!』


 ああ、夢現の状態で何か雑音がすると思ってたのよ。


「で、何か用なの?」


『あのさ、取り憑き主はともかく、他は何様なのさ?』


「何様って……ソース子とふぇ子は一般生徒、リーフは普通の召還獣」


『そんなのはわかってるよ!』


「マーシャンはハイエルフの女王様で、ヴィー……アン先輩はヘビの女王様」


『何でそんな超VIPが乗ってるんだよ!』


 いや、それを私に言われても。


「で、何が言いたいわけ?」


『だからあ……私が船長なんだよ! 船で一番偉いんだよ! その私が何で給仕しなくちゃなんないんだよ!』


 ああ、そういうことか。


「ていうかさ、あんたの船長としての仕事は何?」


『そ、それは、船を安全に航行する為に、必要な判断をしたり』


「なら操船は誰がやってるの?」


『そ、それは……部下のスケルトンが舵を取っていて、それの判断で』


「なら機関長は?」


『そ、それも部下のスケルトンが』


「船医は?」


『い、医者は居ないけど、救急処置の心得があるスケルトンが』


「調理師は?」


『け、経験のあるスケルトンが』


「なら、緊急時の最終判断は?」


『それこそ私の仕事なのさっ!』


「なら、緊急時じゃないときは?」


『へ…………?』


 うん、返答に困ったようだ。


「ヒマだってんなら、給仕の仕事くらい引き受けてくれたっていいんじゃない?」


『ひ、暇と言われる程に暇では無い!』


「でも、ヒマなんでしょ? 一年分の霊力を込めて、私に噛みつける程度には」

『うっ!』


 図星だったらしく、胸を押さえてうずくまるルック船長。


『ぐぬぬぬ……お、おのれ、取り憑き主めぇ、裏切りおったなあ!』


 裏切る以前に、そこまで関係深かったかな、私達。


『許さぬ。祟り殺してくれる!』


「祟る。ふうん。私を?」

『そうだ!』

「だってさ……モノズキ面、ルーデル、ヴィー、どうする?」


 私がそう言うと、頭の面が、頭のヘビが、腕の刺青狼が一斉にルック船長を睨む。


『え?』


『ほう。ほうほほう。我が主を祟ろうとは、いい度胸してるじゃねえか』

『私の伴侶に手を出すなら、私を敵に回すと思いなさい』

『我の番を奪うと言うなら、我が牙に貫かれると覚悟せよ』


 おうおう、久々のルーデルもちゃんと三冠の魔狼(ケルベロス)してるわね。


『ひいいいいいいいいっ!!』


 格上も格上、それも三体も。単なる幽霊でしかないルック船長にとってはビビるどころではない。


『も、も、申し訳ありませんでしたああっ!』


 泣きながら平謝りするルック船長に、それぞれが冷たい視線を送る。


『ふん、信用ならんな』

『同感ですね』

『ならば、この場で始末するか?』


 どうやら滅殺の方向に話が……って、ちょっと待て。


「ここでルック船長が消滅したら、船まで消えちゃうんじゃ?」


『そう……なります』


 それを聞いた三体は、振り下ろす予定だった力の片鱗を引っ込める。


『それは不味いな』

『伴侶を溺れさせる訳には』

『番を冷たい水に浸けるのは酷だな』


 ていうか、ヴィー。あんたはここにいるんだから、わざわざヘビを通してしゃべらなくてもいいんじゃね?


『ならば仕方無い。我が眷属として、常に見張ろう』

『そうですね、私の配下に貴女を監視させます』

『常に我が牙がお前の喉元に在ると思え』



 ……で。


「ルック船長、水汲んできて」

『は、はい』

「ロリロリ船長、酒を所望するのじゃ」

『た、ただいま』

「ゴスロリ船長、つまみ追加ね」

『よ、喜んで』


 ルック船長兼小間使い、毎日忙しく働いております。


「ルック船長、頭の面と蛇、腕の刺青はイメチェン?」

『っ……聞かないで!』


 常に三体の監視下に置かれながら。

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