last stage1 緊張のサーチ。
「いよいよラスボスだね、コーミ」
「…………」
「今回だけ仲間として参加するラミってね、かなり強いんだよ。雑魚相手には特にね」
「…………」
「あとルームメイトのハクダシン! この回復魔術はマジで重宝するんだよっ」
「…………」
「ん? あれ、どうしたの、コーミ」
「…………」
「コーミ。コーミったら」
「…………」
「コーミったらコーミ。コーミ? どうしたんだよ、ちょっと」
「…………」
「コーミ………………冗談……だよね?」
「……っは!?」
「ソース子?」
「……っ……ここは……」
「ちょっと、どうしたのよ、ソース子」
「……か……サーチ?」
か?
「サーチだけど……どうしたのよ、ソース子」
「あ、え、や、いえ、な、何でも無いよ、うん」
……?
「ホントにどうしたのよ、いつものソース子らしくないわね」
「本当に大丈夫だから」
「ふぅん……ま、大丈夫ならいいんだけどね」
「…………あ! あれ、何だ!?」
えっ!? まさか、海のモンスター!?
「隙ありっ」
きゅっ
「はあああああんっ! な、何すんのよ!?」
「……やっぱり……」
「だから、何してくれてんだよっ!」
きゅっ
「はああああああんっ!」
やり返されたソース子は、そのまま畳の上にひっくり返る。
「たく、何だってのよ…………ん?」
ソース子、少し胸が大きくなったんじゃ?
私達はラスボスのいるキラキララ火山に向かって、船で出発したところだ。ヴィーがいるので、飛行機でと思っていたんだけど。
「キラキララ火山は絶海の孤島な上に、年がら年中噴火している火山です。飛行機では近付けませんよ」
……という私達にとっては最悪な通告により、こうして船に揺られることになったのだ。
「サーチ、絶対に沈まないようにしましょうっ」
いつになく力が入っているアン先輩……じゃなくてヴィー。今回のスポンサーなため、船が沈めば一番損害を受けるのはヴィー自身なのだ。
「安心するが良い。今回は妾が付いておる故、そのような展開にはさせぬのじゃ」
そしてヴィーの召還獣、マーシャン。稀代の魔術士の言葉だから、本来なら安心するべきなんだろうけど。
「……陛下の御言葉で、リーフは逆に不安が高まりました」
「ふぇぇぇん!」
普段は緑な顔色が真っ青になってるリーフと、その腰に抱き着いてガタガタ震えるクラ子。
「あらあ、ウォータみたいになっちゃったわね」
「それはそうでしょう! もう潮水は御免被りたいです!」
あ、そっか。潮水は苦手だもんね、植物は。
「ふぇふぇふぇふぇふぇふぇ」
「……ふぇ子は笑ってるの?」
「ふぇぇ!? ふぇぇぇぇぇん!」
「震えているに決まってるじゃないですか! あああ、召還主様泣かないで!」
リーフの胸に顔をうずめて泣くクラ子。ていうかさ、「ぇ」が「ぉ」になったら某有名宇宙人だよ。両手がチョキな。
「ていうか、まだ大丈夫ね、今のうちは」
「そ、そうですね、今のうちは」
「サーチさんにアン先輩、今のうちはって言い方止めて」
「も、もう萎れたくありません……」
直近で沈没経験したソース子とヴィーは、常に顔面蒼白。同じ境遇のリーフ・クラ子組は、抱き合ったまま離れようとしない。
「ていうかさ、おもいっきり周りから見られてるから、一旦船室に戻ろうよ」
「いえ、最悪のパターンを想定して、いつでも逃げられる場所に居ないと」
「そ、それは一理あるよね。私もここに居ようかな、うん」
「ふぇふぇふぇふぇふぇふぇ」
「召還主様、しっかり。リーフはここに居ますから」
縁起でもないこと言うな。
「大丈夫じゃよ。妾が付いておるのじゃ、むざむざと沈ませはせぬよ」
マーシャン、今の一言でフラグが立ったかもよ。
「あの、お客様」
「はい?」
「何も起きていない状態で、救命胴衣を着用しないで頂けませんか?」
あ。
「ガクガクブルブル、ガクガクブルブル」
「天に召されし、何処かの神よぉ……」
「なんまいだあ、なんまいだあ……」
「ピ~ヒャラリ~ラリ~」
ブルブル震えるのは仕方ないけど、信仰もしてない神様仏様に祈るのは止めなさいっ。
「ていうか、リーフ。ピーヒャラリーってのは何?」
「笛の音です」
口でピーヒャラ言うな。
「で、ふぇ子を祭壇に供えて何してんのよ」
全身を縛られたふぇ子が、「ふぇぇぇっ」と泣き叫びながらもがいている。
「それは勿論、テス○ポリトカ様に御供えした生贄」
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
「じょ、冗談。冗談ですからね、召還主様」
あのね、リーフ。具体的に怪しい神様の名前言いながらナイフ持って近寄られたら、誰だって誤解するっての。
「大丈夫です、サーチお姉様。このナイフ、オモチャですから」
だから、そういう問題じゃなくて。
「みんな、落ち着きなさいよ。まだ沈む兆候が見られるわけじゃないんだから」
「そ、それは……」
「その通りですが……」
ね。だから落ち着きなさいって。
「うわ。サーチお姉様、おっきい台風が近付いてますね」
天気予報を見ながらリーフが。
「まだ先の話よ。ていうか、進路変えれば済む話よ」
「うわ。サーチ、巨大な氷山が」
今度はヴィーか。
「大丈夫だって。タイタニックじゃあるまいし」
「うわ。超巨大なサメが近付いてるみたい」
今度はソース子か。
「大丈夫だっての。いざとなったら退治するだけよ」
「うわ。突然巨大地震が起きて、巨大な津波が」
ていうか、どんだけフラグ立ちまくるんだよ!