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extra 困惑のクラ子。

 ふぇ、ふぇぇ。


『名前かあ…………まあ、何でもいいよな』

『どうせ倉庫だろ? だったら倉庫でいいじゃん』


 い、嫌ですぅ! 名前が倉庫なんて、絶対嫌ですぅ!


『あ、でも単なる倉庫じゃありふれてるよな』


 そうです、ありふれてます! だから普通の名前を!


『よし、初めての倉庫キャラだけど、何故か倉庫三号で!』

『何で三号!?』


 嫌ぁぁぁぁ! 倉庫三号だなんて嫌ぁぁぁぁ!



 ……倉庫三号となった私は、ただただ荷物を預けられるのみ。初期の装備のまま、動かされる事もありません。


「ふぇぇぇん……」


 真っ暗な待機場所で、たった一人で泣く日々が続きます……。


「ふぇぇぇん……」

『あ、お兄ちゃんたら、倉庫キャラは完全に放置プレイなんだ』


 え?


『うん、お兄ちゃんは今日は修学旅行だから、私がちょーっと弄ってもわかんないよね』


 ふぇ、ふぇぇ?


『うわああ、これがドラゴンズサーチの世界なんだぁ』


 創造主様の妹ちゃんらしき人に操られ、初めて街の中を歩きます。


『怖くて外には出れないけどぉ……お着替えくらいならいいかな?』


 ふぇ、お着替え?


『試着室に入ってと。待っててね~、三号ちゃん。今私が、まともな格好にしてあげるからね~』


 ふぇ、ふぇぇ!?



 次第にゲームに飽きてきたらしい創造主と違い、妹ちゃんはちょくちょく私を構ってくれるようになりました。


『今回はゴスロリにしようかな~♪』


 元々女性のプレイヤーが少ないゲームだったらしく、妹ちゃんみたいにファッションにこだわる人達は少数で、その洗練された見た目は次第に注目されるようになりました、ふぇ。


『あは、「いいね!」が増えてる増えてる♪』


 戦うのは怖くて出来ないみたいで、妹ちゃんは私のお着替えだけに夢中なのです。


『おい! 何勝手に構ってるんだよ!』

『え? 倉庫三号だったら勝手に弄ってもいいって言ってたじゃん』

『お前のせいで、倉庫三号ばっか注目されてんだよ!』


 前回のファッションランキングに私がランクインしたのが、創造主様は気に入らなかったみたいで。


『くそ! 元々は俺の! 倉庫なのに!』

『痛い痛い! お兄ちゃんが苛めるぅ、びええええ!』

『こら、お前達、何をやってるんだ!』


 ……そのままお父さんらしき人に見つかった創造主様と妹ちゃんは、延々と怒られ続け。


『喧嘩の原因にしかならないのなら、こんなゲームは必要無い!』

『と、父さん、何するんだよ!』


 ガチャアアアン!



 ……永い……永い……闇の中で……。


 ……ガヤガヤ……ザワザワ……


 突然、周りが騒がしくなりました。


「ふぇ?」


 え、動いた? 喋れた?


「ふぇぇぇ……」


 見える……見える……自分の手が動いてるのが見える……!


「ふぇぇ!」


 自分の声も聞こえる。


「ふ、ふぇ、ふぇぇぇ!」


 私、自分の意思で動いてるぅぅ!


「ちょっと、貴女、大丈夫?」


 ふぇ!?


「わ、私ですか!?」


「そうよ、貴女よ」


「ふぇ!? わ、私、他のプレイヤーさんと会話してる!?」


「プレイヤーさんって……ちょっと貴女、こっちに来なさい!」


 そう言われて私はビルとビルの隙間へ…………って、ふぇ?


「ここは進めないエリアじゃ……」

「プレイヤーはね。私達みたいな意思のあるキャラクターには、境界線なんて無いからね」


 い、意思のあるキャラクター?



 自由意思偶像連盟。その会員だと名乗った女の人は、私に色々な事を教えてくれた。


「ふぅん、つまり創造された時から多少は意思があったんだねえ」


「あ、あの……?」


「ああ、私もここにいる連中みーんな、放置キャラが自我に目覚めたのさ」


 ……ふぇ?


「だからね、ドラゴンズサーチ内では普通に起きてる事なのさ」


 ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?



 その女性……くらのすけさんの話だと、倉庫キャラや放棄キャラが年月が経つうちに自我に目覚め、勝手に動き出す事象が頻発してるらしい。


「そんな事が運営側にバレたら大変でしょ? だから私達偶像連盟が活躍してる訳よ」


 くらのすけさんの所属してる自由意思偶像連盟は、自我に目覚めて戸惑ってるキャラクターを保護し、今後の生活の支援を行う団体なんだそうだ。


「ほら、これが最初の召還獣の候補だよ」

「ふぇ、ありがとうございます」


 チュートリアルのクリアさえままならない私達に、最初の召還獣を斡旋してくれたのも偶像連盟。プレイヤーによって召還獣を与えられてる人は、偶像連盟内では稀らしい。


「まあ、たまにいるがね。かなりのレベルまで育てられた状態で、放置されてるのも」


「そ、そうなんですか」


「そういうのも、やっぱり偶像連盟に加盟してるよ。やっぱり一人は誰でも寂しいからね」


 ふぇ、そうですね。あの闇の中には、もう戻りたくないよね、誰でも。



「倉庫三号、緊急行くかい?」

「ふぇ、行きます!」


 初めての召還獣の操作にも慣れ、くらのすけさん達と色んなクエストに行ってお金を稼げるようにもなりました。

 そんな、ある日。


「ふぇ、卒業?」

「そうだ。あんた、もう十分一人でやってけるよ」


 ひ、一人で?


「あはは、勘違いしないでよ。偶像連盟出てけって言ってるんじゃなくて、私の指導からは卒業だって言ってるんだよ」


 ふぇ……あ、ああ、そういう事ですか。


「だから卒業の証として、次の召還獣と契約しよう」


 次の召還獣と?


「今の水獣はもうレベルカンストだろう?」


 あ、はい。もう上げられる数値が無くなるまで鍛えました。


「だったら問題無いだろ。次のステップに移りなよ」


 ふえ、そ、そうですね……。



 こうして私は偶像連盟によって一人前にしてもらい、新たな召還獣との契約を果たすまでになりました。


「さよなら、水獣……」

「キュエエ」


 水獣は自分の世界に帰っていき、そこから新たな召還獣が現れます。


「どんな召還獣だろう…………ふぇ? 人型?」


 パアアア……


「ふぇ、美人さんだぁ」

「……貴女が私の召還主様ですか?」


 ふぇぇぇ、喋ったぁ!


「は、はい、私は倉庫三号ですぅ」

「倉庫……三号。リーフはリーフと言います。よろしくお願いします」


 はわはわ、リーフさん。


「リ、リアルグ○ーン姉さんだぁ」

「○リーン姉さん呼ばないで下さい!」

明日から新章です。

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