play16 繰返のサーチ。
「は、はあ、はあ……」
ヴィーから解放されたのは、丸一日経ってからだった。こ、腰が……。
「な、何はともあれ、せっかく帰れるチャンスを掴んだんだ。退くつもりはないわよ…………ん?」
ま、待って。よくよく考えたら、私のパーティメンバーが三人もこの世界に来ている。それって普通に考えたら、モノスゴい確率じゃね?
「そうよ。それを可能にしてるのはマーシャンだわ……!」
リーフは私と一緒に来ちゃったんだから除外だけど、マーシャンは自らの意思でここにいて、しかもヴィーを連れてくるくらいだ。私やリーフを連れて帰るくらいは余裕なんじゃないの?
「私ったら、何でそれに早く気づかなかったんだろ……」
ここで炎の王を倒すよりも、マーシャンに送り帰してもらった方が絶対に早い。
「よし、マーシャンを捕まえて締め上げて……!」
しゅるしゅるっ くるんっ
「へ? 何で私が締め上げられて……?」
「サーチ、もう少し付き合って下さい」
「へ!? ちょ、ちょっと待って」
「良いではないか、良いではないか♪」
「良くない良くない! ていうか、そのフレーズを何で知ってるのよ!?」
「それは……えへ♪」
「あ、あんた、マーシャンに化けて、私をベッドに引っ張り込んでたわね!?」
「しまった、バレましたか……」
そこまで言われればわかって当然だわよ!
「バレてしまったものは仕方ありません。ならばっ」
しゅるしゅるっ ぐいぐいっ
「ちょっ!?」
「いつもみたいに、無理矢理」
「ムリヤリすんな! いくら同性だからって犯罪でしょ、それは!」
「大丈夫です、伴侶ですから」
「だったらDVだよ!」
「そ、それは……サーチも次第にノリノリに」
よ、余計なことは言わなくていい!
「まあ、何はともあれ、戴きます♪」
ま、待って待って! あああああれえええええ!!
……バタン
ガチャッ
「は、はあ、ひい、ふう」
さ、流石に連戦は堪える……。
「ていうか、早くマーシャンを探さないと」
ウカウカしてると、またヴィーに捕まっちゃう。
「マーシャンがいるとしたら……召還主からはあまり離れられないんだから……」
召還主はアン先輩だから、つまりはヴィー。
「つまりこの辺りにいるってことよね?」
空室があれば、そこが怪しい。
「って、どの部屋も埋まってるじゃないの」
在室を示す表示が、どの部屋のドアにもついている。中に気配も感じるから、間違いないだろう。
「他の階に行くのは、離れすぎちゃうからムリだろうし…………ん?」
この部屋、空室表示なのに、中に気配を感じる。
「この気配……女性が二人だわ。つまり、マーシャンが女の子を連れ込んでる!?」
よし、ここで現場を押さえちゃえば、有無を言わさずに身柄を確保できる!
「よっし! たのもおおおっ!」
バアン!
「ではな、また後に」
シュンッ
へ?
「あら、サーチ。また来たんですか?」
「へ? な、何でヴィーが?」
「何でって……この部屋は私の部屋ですよ?」
しまったあああ! 元の部屋に戻ってきちゃったんだああ!
「で、でも、表示が空室に……」
「ああ、直すのを忘れてました」
そ、そんなんありかあああ!
「そ、そう、だったら失礼する」
しゅるしゅるっ
「わって、ちょっと!?」
「サーチ……訪ねてきてくれたのは、また【いやん】なことをしたいからですね?」
「違います」
「そう言わずに。久し振りの再会ですよ」
いやいや、もう十分に会ってますからっ。いや、遭ってますからっ。
「私はマーシャンを探さなくちゃならないのっ。だから【いやん】してるヒマないのっ」
「あら、でしたらマーシャンを呼び出しましょうか?」
へ?
「で、できるの?」
「当たり前です。私がマーシャンの召還主なんですよ……無理矢理そうさせたのですが」
それは……ご愁傷様です。
「でもヴィーが呼び出しできるんなら好都合だわ。早速お願いできない?」
「生憎なんですが、マーシャンは運営委員会の会合に出席していますので……」
えええ!?
「な、何でこのタイミングで……」
「ご愁傷様です」
あはは、ご愁傷様返しされたわ。
「ていうか、マーシャンはヴィーから離れられるの?」
「はい?」
「だって、召還獣は召還主から一定の距離から離れられない括りが」
「ああ、マーシャンは対象外です」
何でよ!?
「≪転移≫ができますから、距離が離れていても、すぐに召還主の元へ戻れるんですよ」
な、なるほど。それは確かにそうだわ。
「ですからサーチ」
しゅるしゅるっ
「ひいっ」
「戻ってくるまで三回戦しましょ」
「ま、待って待って! もうムリ! ムリだって!」
だ、誰か助けて! あああああれえええええ!
「…………」
「ふう、スッキリしました」
……た……立てない……。
「サーチに逢えない寂しさと、仕事のストレスでどうにかなりそうでした」
……答える……気力もない……。
ブゥンッ
「ただいまなのじゃ」
マーシャンみいいいつけたあああ!
「む? 何でサーチが素っ裸で寝ておるのじゃ?」
逃がさん!
ひゅん! しゅるしゅるっ
「な、何じゃ!?」
「ふっふっふ、そのワイヤーからは逃げられないわよ」
「な、何をするのじゃ!」
「何もされたくなかったら、私とリーフを速やかに元の世界に帰しなさい!」
「…………ふぇ?」
マーシャンは「何故?」という表情。
「ヴィーをこの世界に呼び出せるくらいだから、逆もできるでしょ?」
「…………ああ、そういう……つまりヘヴィーナを呼び出した妾なら、サーチ達を送り帰すくらい訳無い、と思うておるのじゃな?」
「そうよ」
「ならば無理じゃ。妾が呼び出したのはヴィーの魂のみであって、肉体は向こうの世界じゃからの」
……は?
「肉体ごとこちらに来ているサーチ達は、戻す事は出来ぬよ」
「だから私はアンチテーゼという仮初めの身体に宿っているんです」
そ、そんなあああ。
「急がば回れ、という事じゃようぼごふぃ!?」
やかましい!