play15 真相のサーチ。
「って、炎の王がこのゲームを作ったラスボスだってんなら、倒したらゲームそのモノが……」
「別にゲーム自体がどうこうなる事は無い。言ったじゃろ? 炎の王はあくまで運営委員会の一人に過ぎぬと」
「あ、そっか。でも炎の王の独断専行を許しちゃってる時点で、他の運営委員に任せても大丈夫なのかしら?」
「…………それは妾の能力に疑問を呈しておるのかの?」
え? あ、そうだったわ。
「マーシャンも運営委員会に属してたんだっけ」
「うむ、そうじゃ」
「だったら何で今まで炎の王を放っておいたのよ?」
「それは……別に実害が無かったからの」
は?
「確かに灼熱大陸では独裁政治を布いておったかもしれぬが、目に余るような虐殺行為を行っていた訳でも無く、激しい締め付けをしていた訳でも無い」
ま、まあ、そう言われればそうかも。
「しかもゲームの内容を現在の状態にするように意見し、ここまで流行させた起爆剤となったのも奴じゃ。ある程度の独断専行は目を瞑っておったのじゃよ」
「でも、今回は目を瞑るつもりはない?」
「まあの。妾の友人であるサーチ達に手を出した時点で、容赦しない理由な無いの」
友人か……マーシャンにそう言われると、ちょっとこそばゆい。
「妾は奴がこのゲームを今の形にした際、一つの条件を出した。その布石が役に立つ時が来たのじゃ」
布石?
「それこそが、奴自身がラスボスになる事なのじゃよ」
「炎の王自身が、ラスボスに?」
「うむ。そして、プレイヤーに敗れた時点で、運営委員会から身を引く事を了承させた」
それって……。
「炎の王はもうあとがないってことじゃん」
「後が無い、とな?」
「私とリーフ、あとナイアとで炎の王は倒しちゃったよ」
「は?」
「現実世界では、だけどね」
「灼熱大陸で既に炎の王が倒された……となると、このゲームでの炎の王は……」
何かブツブツ呟き始めるマーシャン。
「あ、あの」
うん? ソース子?
「サーチさんが言ってる事が本当なのなら、今の私も仮初めの存在だと!?」
「ていうか、あんたもプレイヤーなんでしょ? 現実世界の記憶はないの?」
「い、いえ、自分がプレイヤーだっていう自覚も無い」
あれ?
「マーシャン…………はシンキングタイムか。ヴィー、どういうことかわかる?」
「そうですね……ソース子、ちょっと腕に触れてもいいですか?」
「あ、はい、大丈夫です」
そう言うとヴィーは、髪の毛をソース子の腕に絡ませ……って、え!?
「髪の毛が動いた!?」
「……? 何を今更な事を言ってるんですか? 私はメドゥーサですから、頭の蛇を自在に動かすなんて訳無いですよ?」
あ、そっか。中身はヴィーでも外見はアン先輩のままだから、頭の蛇動かすと髪の毛が動く仕様になっちゃうのか。
しゅるしゅるしゅるっ
「ひ、ひいっ」
ソース子が悲鳴をあげる。ま、髪の毛が自分の腕に巻きついてきてるんだから、気持ち良くはないわな。
「蛇よ蛇よ愛しき我が子よ、事象の綻びを明らかにせよ…………蛇サーチ」
ちょっと待て。
「何で人の名前を技名にしてくれてんのよ」
「シッ、今は集中してますので」
っ…………あとで絶対に追求しちゃる。
「…………あ、ああ、何と言う事でしょう!」
へ? ビフォーアフター?
「成程、そういう事でしたか……」
「わかった?」
「これは……かなりデリケートな事情ですので……ソース子だけに話しておきましょう」
え?
「私には?」
「サーチみたいにすぐに顔に出る人は、いつバラしてしまうかわかりませんので」
ぐっ。は、反論できない。
「ソース子、ちょっと耳を貸して下さい」
「あ、はい」
二人でナイショ話を始めたので、私はプチぼっちになる。
「マーシャンは……」
「あーなる、こーなる、そーなる……」
まだ自分の世界から帰ってこない。
「ヴィーとソース子は……」
「ゴニョゴニョゴニョ」
「はい、ふんふん、はい」
……二人だけの世界に入ってやがる。
「…………」
何かおもしろくなかった私は、背後からヴィーにイタズラする。
「ふーっ」
「ゴニョゴひあああああっ!」
「ふえっ!?」
耳に息を吹きかけられたヴィーが叫び、その叫びにビックリしてソース子が叫ぶ。
「サ、サーチ! いきなり何をするんですか!」
「あはは、ごめんごめん」
「今大事なところなんですから!」
そう言って再びナイショ話再開。
「…………」
再びプチぼっち。よし、次はっと。
「えいっ」
きゅっ
「ゴニョゴニョゴはああああああああんっ!」
「うわっ!?」
先っぽを摘ままれて艶っぽい声を出すヴィーに、耳元でそれを聞いたソース子は真っ赤になってたじろぐ。
「サ、サァァァチィィィ!」
怒ったヴィーの外見が、モザイクによって包まれ。
「え、ヴィー!?」
私がよく知ってるヴィーの姿になり。
シャアアアッ! ぐるんぐるんっ
「げっ」
頭のヘビによって拘束される。
「ったく! しばらくそのままで居なさい!」
そのままヴィーはナイショ話を再開。突然見た目が変わったアン先輩に驚きつつも、ソース子はアン先輩……ヴィーに耳を貸した。
ナイショ話が終わり、衝撃を受けた様子のソース子。
「どう? 現実の自分が誰かわかった?」
「え? あ、うん。少しずつリンクしてきてる」
ソース子は笑顔を浮かべる。うん、うまくいってるみたいで良かった良かった。
ぎゅっ
「うぐっ……ヴィ、ヴィー、ちょっと苦しいんだけど?」
………ヴィーの髪の毛がユラユラ……いや、あれはヘビだからニョロニョロ……。
「サーチ……私にセクハラめいた事をしたという事は、自身がそうされたいという表れですか?」
「え? いえ、違う。ちがいます。全然されたくありません」
「いえいえ、遠慮せずに、さあ」
「いやいやいや、遠慮します」
「遠慮しないで、さあさあさあ」
「いえいえいえいえ、全力で遠慮させていただきます」
「なら私が遠慮しません」
って、ちょっと待って!
「あああああれえええええ!!」