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play12 決勝のサーチ。

「あと一試合か……」


 何だかんだ言って、この世界に来てからも戦ってばかりだ。ま、今回のは試合だから命のやり取り……ってほど激しいわけじゃないけど。

 え? もう何匹も召還獣を殺してるじゃないかって? 召還獣は殺しても復活するからいいのよ。


「何を黄昏てるのよ。明日の決勝戦の対策、何か考えついたの?」


 いえ、全く。



 前回の戦いから得た情報を整理すると。


 召還主・ラミ

 召還獣・赤い絨毯のハキリアリ(女王)

 フェイバリット・赤い絨毯の防衛陣

 効果・最強の兵隊アリの無限召還


 ……となる。


「どないせいちゅうねん、これ」


 軍隊アリすらも倒してしまう、ハキリアリの兵隊アリ。もしかして最強なんじゃね?


「あ、いや、アリはアリか。攻撃魔術を持ってれば、ほぼ一撃なんだから」


 この黒や赤の絨毯に対する一番の対抗策は、ズバリ広範囲攻撃だ。その中でも一番有効なのが、火系の魔術。どんなに強力なアリだろうと、魔術の炎で焼かれてしまえば一溜まりもない。


「あーあ、何で魔術士系の召還獣と対戦しなかったんだろ」


 マーシャン辺りが相手だったら、ジャミだろうがラミだろうが瞬殺だったろうに。


「ねえ、サーチさん。何か対策は思いついたー?」


 うっさいわねえ、そんな簡単に思い浮かぶわけないじゃない。


「アリの弱点って言えば……やっぱ天敵か」


 アリの天敵って言えば、やっぱアリクイか。


「ていうか、アリクイ大量に連れてくるわけにもいかないし……」


 そんなことしたら、戦う前に反則負けを言い渡されるだけだ。


「自分が作り出せるモノ以外は使用禁止だから、殺虫剤の持ち込みもできない」


 私自身が作り出せるモノで、虫に特効薬になり得るモノなんてないよね。


「虫が嫌う金属なんて聞いたことないし、あったとしても知識がないし」


 私が作り出せる金属は、あくまで見て触ったことがあるモノに限られる。そんな虫を殺せるような金属、見たことも聞いたこともない以上、作り出せるわけがない。


「全く、殺虫剤があれば一発なのにね」


「え、殺虫剤? 出来るんじゃないの、サーチさんなら」


 え、私なら?


「だって、殺虫剤って虫にとっては、猛毒中の猛毒じゃない」


 猛毒…………あ、そうか。



「いよいよ決勝戦当日! その顔触れは実に意外な組み合わせとなりました!」


 決勝戦ともなると、魔術放送で全国に放送されるらしい。実況やら解説がしゃべり続けていた。


「かたや前回の優勝者の娘、かたや星一の人型召還獣を使う学生。誰がこのような決勝戦を予想していたでしょうか!」


 確かに、賭けで当てたのはほんの一握りだったらしい。ていうか、よく私に賭ける気になったな。


「しかし今回の決勝戦、蟻を使うラミ選手が圧倒的に有利と言われてますね」


「はい、どのような展開になろうと、ラミ選手の優位は揺るがないでしょう。ここまで相手選手の召還獣が見せている攻撃は、武器を用いた近接攻撃と金属片の大量放出のみ。赤い絨毯と称される蟻の大群に対抗できる手段は持ち合わせていませんからね」


「となると、早々と降参する可能性が高いという予測も頷けますね」


「はい。人型召還獣は意志の疎通ができる場合が多く、召還主との絆も深くなります。大切な召還獣が蟻に食い殺されるのを見るくらいなら、降参してしまう可能性は大でしょう」


 降参かー、それもありっちゃありだったかー。


「では、その人型召還獣の詳しいデータも見てみましょう…………名前は鉄クズのサーチ、となってますね」


「何試合か拝見させてもらいましたが、なかなか素早い召還獣でしたね」


「しかし蟻の大群の前では、その素早さも意味がありません」


「その通りです。フェイバリットは一応広範囲攻撃できますが、鉄の欠片を放出するのでは蟻への対抗手段にはなり得ません」


「当てる対象が多すぎますからね。そうなると武器による攻撃も効果は薄いですから、やはり手も足も出ないでしょうか……あ、選手が入場してきました。もうすぐ試合開始です!」



 前評判は、やっぱ私の圧倒的不利ってなってるわね。


「おい、ソース子! 早く降参しろよ!」

「サーチさんを惨い目に遭わせるなよ!」


 観客からは早めの降参を促すヤジが飛ぶ。変に私が人気になっちゃったから、召還主のソース子も大変だ。


「ふぇぇ、か、観客の皆さんの言う通りだと思いますぅぅ」

「サーチお姉様、命を投げ出してまで戦う価値はありませんわ。お早く降参を!」


 リーフ達まで、か。


「ありがとう、心配してくれて。でも大丈夫よ。私には必勝法があるんだから」


 自信満々に笑う私に、不安な表情しか見せないリーフ達。


「ホントに大丈夫なんだから。安心して見てなさいって」



「さあ、試合開始となります。ソース子選手は降参を申し入れませんでしたね」


「何か策があるのかもしれませんが、無謀としか言い様がありませんね」


 カーン!


「さあ、試合開始のゴングが鳴った! ラミ選手は早速赤い絨毯を発動だあ!」


「まあ、一時間もしないうちに骨だけになるでしょうね」


≪偽物≫(イミテーション)!」


 ガキィン! ガキィン!


「おーっと、召還獣のサーチは……鉄の箱を作り出し、中に籠もりましたね」

「防御に徹して隙を窺うのでしょうか。あれでは強力なハキリアリの顎も歯が立ちません」


 ……ぶしゅあっ


「おや、箱の小さな穴から……煙が?」


 ……パタッ パタパタッ


「おーっと、どうした事か? 突然ハキリアリ達が苦しみ始めたぞ?」


「……クンクン……あの煙、殺虫剤じゃないですか?」


「あーっと、召還獣のサーチは殺虫剤を持ち込んだようだ。これは反則…………あ、いや、今情報が入りました。召還獣のサーチは毒を生成する能力があるようです」


「成程。でしたらこの戦法は決定打ですね」



 結局、箱に籠もって毒を垂れ流す、という極悪非道な戦法で私は優勝した。


「「「ブーッ、ブーッ」」」


 るさい。勝てば官軍だっての。

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