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第十六話 ていうか、エイミアはどこまで勝ち残れるのか?

 エイミアのクソおやじに、早々にゴーアウェイしてもらったと同時に、エイミアが戻ってきた。


「ん? クンクン、クンクン……何かアブラギッシュな中年の匂いが……?」


 何それ怖い。


「い、今ね、私達への嫌がらせをしに、中年貴族が来てたのよ」


 リルが「おいっ!」と非難的な視線を送ってくる。構うもんか。


「中年……貴族ですか?」


「うん。とんだセクハラ野郎でさ、私の胸を触っていったのよ!?」


「うわあ……命知らずですね」


「まあね。ちょっぴり(・・・・・)痛めつけてから、会場から放り出したのよ」


「そうだったんですか……本当にこの国にはろくな貴族がいませんね!」


 ぷんすかと怒りながらエイミアは控え室へ向かった。ただ怒っただけでもかわいいって、反則よね……。


「……おい、サーチ。あんなギリギリでバレないようなこと言うなよ。こっちの心臓がもたねえよ……」


「ま、いいじゃない」


 何一つウソは言ってない。中年貴族だったのも、胸を触ったのも、会場から放り出したのも……れっきとした事実なんだから。



「……流石に準々決勝はバトルロイヤルにはしなかったのね。今さらだけど」


「一応賭けの対象になってるからな……やり過ぎると上から何か言われるんだろ」


 ちなみに、この大会の賭け事は公営です。


「でもズルいよな〜。バトルロイヤルぶっ込んだ後の組み合わせって、わざと倍率の高いヤツを優勝候補なんかにぶつけてるし」


 そうやって倍率の高い選手を潰していくのか。確かにベスト8に残った選手は倍率が一桁台だ……エイミアを除いて。


「参ったわね……私の倍率がかなり低く設定されちゃってるから」


 ヒルダさんの「私の弟子はサーチ」発言があってから、私の倍率は下がる一方だ。そんな中で、唯一二桁の倍率を維持していたリジーとエイミアのうち、リジーは私に負けた。


「……となると……エイミアには必ず仕掛けてくるわね」


 私は試合が終わったばっかだから、しばらくはフリーだ。


「リル、リジー。最高レベルで警戒するわよ。どんな状況でも必ず一人はエイミアと一緒にいてね」


「「……わかった」」



 それから二時間。エイミアの試合まで……いろいろあった。ほんっとにいろいろ。


 一、私の場合。


 リジーとリルが「用事がある」ということだったので、私がしばらくエイミアをガードしていた。


「……? どうしたんですか、サーチ」


「どうしたんですかって……何が?」


「だって……さっきから私の後ろを等間隔でついてくるじゃないですか」


 あれ? そう言われてみれば……。


「そういえば暗殺対象を等間隔で追跡する癖が……」


「止めてくださいっっ!! 怖すぎます!!」


 そりゃそうよね。気をつける…………「カサッ」!!??


「きいいああああああああああああっ!!」


「ひえっ!? ど、どうしたんですかサーチ……な、何ですか、このデカい蜘蛛!」


「いやあああ! 来るな見るな息するなああ!」


「い、息するなは流石に可哀想ですよ……私が逃がしてきます」


 ぎゃあああ!

 手! 手でエイミアが蜘蛛掴んでるうううっ!!


「サーチが蜘蛛を苦手になってから、私は苦手じゃなくなってきました……」


 何か怖がってたのがバカバカしくなってきたってこと?


「ふう……もう大丈夫ですよ」


「あ、あ、ありがとおおおおおお! さすが便利屋(こころのとも)!」


「……今度から蜘蛛が出ても助けてあげませんよ?」


 冗談よ冗談。


 カサッ


「ん? カサッって……きいいああああああああっ!!!」


「へ? また蜘蛛ですか?」


「エイミア頭頭頭ー!!!」


「え!? 嘘、やだやだ取ってください!」


「ぎゃあああ! ムリムリムリー!」


「嫌です! イヤイヤイヤー!」


「ダメダメ近づくなああ!!」

 べしっ!

「いたっ!」

 べしっ! べしっ! べしっ!

「ちょっと痛いですよサーチ! 止めてくだ」

 ぴょんっ

 ……ぽと


 んぎぃああああああああっ!!! 私の手に蜘蛛がああああっ!!!


「やだやだやだやだーっ!!!」

 べしべしべしべしべしべしべしべしべし!

「飛んでけ飛んでけあっちいけええ!」

 べしべしべしべしべしべしべしべしべしべしべしべしべしべしべしべしべ


「蜘蛛いない? 蜘蛛いないよね? よ、よかったああ……」


「……よくありません!」


 へ?


「ど、どしたのエイミア? 何かボロボロだけど……?」


「……あれだけスリッパでべしべしべしべし叩かれれば、ボロボロにもなりますよっ!」


 げっ!

 蜘蛛だと思って叩いてたの……エイミアだった?


「あ、あはははは……ごめんなさい、手元が狂ったのよ」


「手元が狂って何十発も叩く人がありますかああああっ!! ≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)!!」


 バリバリバリッ!!

「あばばばばばばばばばっ!!!」



 二、リジーの場合。


 ふんふーん♪ 〝首狩りマチェット〟も綺麗になって戻ってきた。


「まったくもう! サーチの蜘蛛嫌いも何とかしないと!」


 あれ? この声は。


「エイミア姉?」


「あ、リジー。何か用事があったんじゃないんですか?」


「ん。〝首狩りマチェット〟の手入れを頼んでた」


「鍛冶屋さんに出してたんですか……すごく綺麗になってますね」


 何故か「呪いの武器なら最初から言ってくれ!」と叱られた。鍛冶屋さんは呪われるのが嫌だったらしい。(普通は嫌がるわよ! サーチ姉談)


「どこか直してもらったんですか?」


「持ち手のバンテージを巻き直してもらった」


 ササクレだってチクチク鬱陶しかったのだ。


「へえ〜……どんな風に?」


「こんな感じ」


 ぶんっ

 がんっ!

「あぎゃ」


 ……あぎゃ?


「エイミア姉?」


 ……何で倒れてる?


「……そうだ。〝首狩りマチェット〟に何か当たった感触があった」


 あれ、エイミア姉の頭の感触だったんだ。


「エイミア姉、しっかり」

「…………」

 ……反応ナッシング。

 ……どうしよう。



 三、リルの場合。


「お前らなあ……護衛が護衛対象ぶっ飛ばすなんて、聞いたことないぞ」


「「面目ない」」


 まだエイミアのヤツ、目が覚めないみたいだな。よっぽど当たり所が悪かったらしい。


「こりゃ棄権するしかないか……あーあ、お前らのせいだぞ」


 こりゃしっかりとお灸を据えてやらないとな。



 ガミガミガミガミッ!!



「……で、お前らが悪いわけだ。わかったか?」


 私らしくもなく、長々と説教しちまったな。


「わかったわよ……わかったけど」


 けど?


「警備隊の詰所ぶっ壊したリルに言われたくない」


 ぐっ!


「お、お前……何でそんな古い話を持ち出すんだよ」


「古いって……また一年も経ってないわよ」


「そうだそうだリル姉が悪い」


「リジーは黙ってろ! サーチだって蜘蛛ぐらい(・・・)で大騒ぎして、エイミアを殴ったんだろ? 笑っちまうな」


「ムカ……あ〜ら、いつもいつも身体の一部分(・・・・・・)の話題でぶちギレるのは、誰だったかしら〜?」


「ぶちぃ……テメエは一回シバかれないとわかんねえみたいだな、変態サーチ」


「ぶちぃ……毎回そう言っては返り討ちにあうリーリアドちゃんは、まだ懲りないのねえ」


「「表へ出ろっ!!」」


 バンッ!


「失礼します。僕はエイミアさんと対戦……」

「誰だテメエ」

「邪魔よあんた」


「あ、あのエイミアさんは? 対戦前の挨拶を……」

「失せろ」

「消えて」


「い、いや、しかし」


 ぶちぃ


「ごちゃごちゃウルセエんだよ! ナヨナヨしやがって、キモいんだよ!」


「キ、キモい……」


「あんたみたいなストーカー男を、エイミアに会わせるわけないでしょ! ウザいのよ!」


「う、ウザい…………う、うわああああああんっ!」


「……? エイミア姉の対戦相手、何で泣いて走り去った?」


「「知るかっ!」」



「……で、そのまま対戦相手は戻ってこなかったんですか?」


「仕方ないから私が≪化かし騙し≫(トリック)でエイミア姉に化けて対応した」


「試合は?」


「時間内に対戦相手が現れなかったので、エイミア姉の不戦勝」


「また私勝っちゃったんですね……そういえばサーチとリルは?」


「……巌流島」


「はい?」

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