play13 連帯のサーチ。
アン先輩と親交を深めたり、マーシャンに襲われたり、クラ子のふぇふぇをからかってリーフに怒られたり、マーシャンに襲われたり、ソース子がマーシャンに襲われたのを助けたり、その代わりに私がマーシャンに…………って。
「何で私がこんなにマーシャンに襲われなきゃいけないのよ!?」
「ん? 何じゃいきなり?」
旅行返りの魔術車の中で、マーシャンに食ってかかる。
「だから! 旅行の思い出を振り返ってたら、マーシャンに襲われた記憶が鮮明すぎて、肝心な温泉のイメージが湧いてこないのよ!」
「ふぅむ、湧いてこないとは…………温泉だけに」
……殴っていいかな。
「だから、何で今回は私ばっか襲ってきたのよ!?」
「襲われたとは言うがの……最初の一二回はともかく、最近は自ら求めあがぶべ!?」
余計なことは言わなくていいのよ!
「ともかく、襲うんだったらアンを襲いなさい!」
我関係なし、と車窓から景色を眺めていたアンが、血相を変えて振り向く。
「何でわたくしが襲われなくてはなりませんの!?」
「アンがマーシャンの召喚主でしょうが! 周りに被害を及ぼす召喚獣の面倒は、召喚主が見なきゃダメなのよ!」
「そ、そういうのなら、最後の最後まで抗えばいいのでは!?」
「最後まで抗ったって、ダメなときって多々あるのよ! タマゴいっぱい降ってきたり、主人公同士で仲違いしちゃったり、別世界の鉄塔のテッペンに突き刺さっちゃったり!」
「……? 何の話ですの?」
あ、何でもありません。気にしないで。
「と、とにかく、逆らってもムダっていうか、何て言ったらいいか……」
「つまり妾のテクニックに酔いしれおぼぎょひぁい!?」
万年色魔は黙ってなさい!
「えっと、つまりはサーチさんの場合は同意の上で?」
おいおい、我が召喚主がとんでもないことを言い出したよ。
「ムリヤリな行為に、同意も何もあったもんじゃないでしょ?」
「そ、それは……」
「ていうか、あんたも一回マーシャンの餌食になったでしょ? そのときはどうだったのよ?」
「あ、あの時はサーチさんが私を売ったんじゃないの!?」
あ、そうだったわ。
「ま、まあ、売ったのは事実だったけどさ、でも抗えたかどうかってのはあんたもわかるでしょ?」
「そ、それは……」
「そうじゃの、初モノ故に何をされても反応は新鮮じゃったおぶふぇい!?」
「言うなぁぁぁ!」
おお、ソース子の会心の一撃がマーシャンにクリーンヒット。
「ソース子……やりますわね」
「ふぇ、侮れません」
ん?
「ちょうどいいわ、ふぇ子」
「ふぇぇぇぇ! クラ子ですぅぅ!」
あ、そうだったわ。ま、どっちでもいいんだけど。
「あんたはマーシャンに襲われたの?」
「ふぇ!? ふぇぇぇ…………」
……襲われたのね。
「ならあんたもわかるでしょ? あの状態で抗えると思う?」
「ふぇぇぇ……無理です」
でしょ? でしょ?
「アンもそう思うでしょ?」
「…………否定できませんわ」
「そうじゃの、感度はアンとサーチが双璧じゃったぶごべぃ!?」
「一回死んでこい!」
「逝ってらっしゃいな!」
『え!? 今、死ぬとか逝くとか言わなかった♪?』
っていうか、いきなり出てきたわねルック船長!
「あんたさ、そういう会話にしか反応しないの?」
『うん♪ 逝ったりするのって、聞いても見てても楽しいし♪』
悪霊だ。粉うことなき悪霊だ。
「オッケー。なら召喚マーシャンを連れて逝きなさい」
『え、いいの♪』
「いいわよ」
「いいです」
「ふぇ、是非」
「勿論ですわ」
『わーい、頂きます~♪♪』
やれやれ、これで証拠隠滅できるゲフンゲフン!
『さあさあ、魂ちゃん、出ておいで~♪』
「う、うむむむ………………むぅ? 妾に語りかけてきた悪霊は其方かの?」
『そうだよ♪』
「むぅ………………其方」
『何かな何かな♪』
「良い身体をしておるのう♪」
『え゛っ』
「うむ、ちょうどダメージが蓄積しておったところじゃ。其方の身体で癒やすとしようかの」
『ままままま待って! 私は幽霊だよ!? 身体なんて無いんだよ!?』
「いやいや、霊体を触るなど朝飯前じゃ」
きゅっ
『はあああああああん!』
「良い反応じゃ」
『ちょっ!? ととと取り憑き主、助けてよ! 大体さ、幽霊に襲いかかる奴なんて初めて見たんだけど!?』
うん、私も初めて見た。
「ていうか、ルック船長。この中でマーシャンに襲われてないのは、あんただけだから」
『だからって幽霊の私が襲われていいはず無いよね!?』
「いや、仲間の連帯感って必要よ」
「そうね、連帯感って重要だから」
「ふぇ、連帯感大切」
「連帯感から信頼関係が生まれますのよ」
『幽霊に連帯感を求めないでよ!』
「良いではないか、良いではないか」
がしっ
『ひえ!? ど、どこ掴んでるんだよ!』
「良いではないか、良いではないか」
『ゆ、幽霊の服を脱がさないで! 服は身体の一部なんだよ!』
「良いではないか、良いではないか」
『待って待って待って、助けて助けて、あああああれえええええ!』
……ない足をバタバタさせながら、ルック船長はマーシャンの謎空間に連れ込まれた。
「……ふぇぇ、わ、私はあの空間に連れ込まれたことは無いんですけど、中はどうなってるんですか?」
「「「聞かないで」」」
「ふぇ?」
「ふむ、興味があるなら其方も来るが良いぞ」
「ふぇ!? ふぇぇぇぇぇぇぇ」
トプンッ
「……二人同時に、しかも片方は幽霊と……」
「やっぱり陛下は、筋金入りの色魔ですね」
「間違いありませんわ」
私達は連帯感から信頼関係を構築した。