play12 語合のサーチ。
マーシャンも危なげなく予選突破し。
「うぐっ」
「ふぇっ」
私は余裕綽々で予選突破し。
「うぐぐっ」
「ふぇぇっ」
マーシャンも危なげなく予選突破し。
「うぐふっ」
「ふぇぇん」
私は余裕綽々で……。
「わかります! わかりましたよ! サーチお姉様が何を考えてるか、すぐにわかりましたよ!」
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」
半泣きで噛みつくリーフと、マジ泣きでふぇふぇするクラ子。
「ていうか、何で私が考えてることがわかるのよ」
「顔に出てます」
「ふぇ、顔に、ふぇ」
え、やだ、また?
「うむ。昔からサーチはよく顔に出ておったからの」
「そんな簡単に心を読まれるなんて、武芸者として未熟な証しですわ」
ムカッ。
「えいっ」
きゅっ
「はああああああん!」
「お金持ちのお嬢様が公然ではしたない声をあげるなんて、まだまだ成金趣味が抜けてない証拠ですわ、おほほのほ♪」
胸を押さえてうずくまっているアン先輩の髪の毛が、ユラユラと逆立ち始める。
「誰が……誰が成金ですって?」
「え~、誰がそんなこと言ったんだろ~」
私がからかうような態度をとると、アン先輩はさらに髪の毛を逆立たせる……ていうか、ドリルがビョンビョンしてる時点で、迫力のカケラもない。ていうか、笑える。
「あははは、成金アンちゃん、こっこまでおいで~♪」
ぶちぃ!
「この露出狂がぁぁ! 手打ちにしてくれますわ!」
「できるもんならやってみな~♪」
「むきぃぃぃ! どこまで人をおちょくれば気が済むんですの!」
そのまま扉を開いて逃げ、ある程度のところで。
シュンッ
『えっ』
召喚主であるソース子の中に戻る。
『なっ……』
私を追いかけて大浴場を飛び出したアン先輩は、当然素っ裸なわけで。
『きゃあああああああああ! いやあああああああ!』
お嬢様とは思えない、あられもない叫び声が辺り一面に響き渡った。
「も、もう、お嫁に行けませんわ……」
アン先輩、半泣きで露天風呂に沈むの図。
「心配するでない。その場合は妾のハーレムの末席に加えてやるでの」
「もっっと嫌ですわ!」
うんうん、何だかんだ言っていいコンビだ。
「温泉入りにきて正解だったわね。リーフの心の傷も癒せるし」
「うぐっ」
「召喚主の不甲斐なさも癒せるし」
「ふぇっ」
「過去の大恥も洗い流せるし」
「なっ!」
「いやはや、温泉サイコー!」
「リーフ、落ち着いて、ね。クラ子は勝手にふぇふぇしてて。あ、陛下、アン先輩をお願いします」
何故かソース子があたふたしてたのは、召喚獣のしでかしたことの後始末だろう。いやはや、召喚主は大変だ♪
ていうか、もうおわかりだろうけど、私達は決勝トーナメントまでの中日を利用して、近くの温泉街に泊まりに来ているのだ。無論お金はないので、スポンサーの出資で。
「わたくしの奢りですのよ!? なのに何故わたくしが貶されなくてはならないんですの!?」
「あ、肩をお揉みします」
「髪の毛綺麗ですね~」
「スタイル良くて羨ましい限りです」
急に手のひらを返した私達に、おもいっきり不信な視線を送る先輩。
「……たく、何て後輩達なんでしょう」
「仕方無かろう。妾達のようなセレブと同じにしては可哀想じゃ」
びきっ
あ。ソース子のこめかみに血管が。
「……サーチさん。戦闘準備」
「嫌」
「っ!? な、何でよ!」
「こんなとこで暴れて、露天風呂破壊したくない」
「……っ!」
あ、この雰囲気、絶対命令出すつもりだな。
「なら、絶対命れ」
「えいっ」
きゅっ
「はああああああん!」
よし、力が抜けた今がチャンス。
「マーシャン、ソース子貸します」
「な、何じゃ?」
「一時間ほど好きにしていいから」
差し出された側のソース子は、一気に顔色が変わる。
「ふむ……まあ好みでは無いがの、たまには珍味も良かろうて」
「ち、珍味!? 私、珍味なの!?」
「では一時間、たっぷり可愛がってやろうかの」
「なっ!? ちょっと待ってよ! サーチさん、助けてよ!」
ふんふんふふーん、聞こえないフリ~♪
「なっ、サーチさん、さあああああん!」
「良いではないか、良いではないか」
「いやあああ、あああああれえええええ!」
……ズポン
マーシャンの謎空間に連れ込まれたソース子は、何故か片足だけがはみ出ていた。
「……貴女……召喚獣なら召喚主を守ろうと思いませんの?」
「命の危機ってわけじゃないし」
「貞操の危機ですわよ?」
それは……まあ……犬に噛まれたと思ってもらおう。
「ていうか、それを言ったらマーシャンなんか召喚獣の枠に入りきらないでしょ」
「それはまあ……否定しませんわ。それより貴女」
「うん?」
「サーシャ・マーシャの事を色々とご存知な様ですわね」
ま、そりゃあね。
「同じパーティだったからね」
「同じパーティ……ですか」
私の一番最初のパーティ・竜の牙折り時代の仲間。いやあ、懐かしいわあ。
「……どんな方でしたの?」
「マーシャン? とにかく今と変わんない」
可愛い女の子が大好きで、それ以上に元ダンナのサーシャが大好きで、いろいろ画策してて。
「……ていうか、また何か企んでるんじゃないでしょうね、マーシャン」
「企んでる、と言いますと?」
「まあ、私が巻き込まれたトラブルの半分くらいは、マーシャンが原因だったから」
「…………」
何も言わずに遠くを見るアン先輩。どうやらいろいろすでに巻き込まれてるらしい。
「……ですが……サーシャ・マーシャは、稀に悲しげな様子を見せますわ」
「お、鋭いねえ。その通り、マーシャンはああ見えていろいろと大変な目にあってるわよ。伊達にハイエルフ族最後の女王じゃないわ」
「……その辺り、詳しく聞かせて頂けません?」
私とアン先輩はしばらくの間語り合った。