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第十五話 ていうか、謝り謝られたりの状態?

 私の少し後に、エイミアも出たんだけど……。


『エイミア・ドノヴァン不戦勝』


 ……だった。

 どうやら裏で、エイミアのお父さんが頑張っているらしい。


「あああ……我が父の仕業なら恥ずかしい……」


 他所の貴族を厚遇していること自体が、何か裏がある……と早く気づいてほしいものだ。


「……まあ……ベスト8に残っただけでも(・・・・・・・)良かったんじゃない? と思われ」


 あ。リジーが落ち込んだ。


「バカッ! あんたはもう少し考えてから発言しなさいよ!」


「……試合前からグロッキーだったリジーを、ボコボコにしたヤツにだけは言われたくないな」


 うっ。


「あ、いやね、あれは試合だったから! 正々堂々と戦わないとダメだから」


「……試合前に『わざと負ける』発言したのはサーチ姉だった」


 うぐっ!


「で、でもね、あんなグロッキー状態のリジーに負けるなんて、逆に不自然すぎて……」


「グロッキー状態にならざるを得なかったのは、サーチ姉が始めた『わざと負ける訓練』が原因と思われ!」


 うぐぐっ!


「……そ、それは……そ、そうよ! 普段の訓練で『体力』をちゃんと鍛えてないリジーが悪い……」


「うちのパーティで一番『体力』が低いサーチ姉に言われたくない!」


 ぐさっ!


「しかも『体力』が一番高いはずの重装戦士なのに『体力』が低いこと自体が変!」


 ぐさぐさっ!


「それにビキニアーマー着たいからっていう理由で、重装戦士を選んだっていう動機が不純!」


 ぐさぐさっどすどすっ!


「そして何より……ビキニアーマー装備してるくせに私より小さい(・・・・・・)!!」


 ずどん! ぶしゅうううっ!!


「……はう」


「サ、サーチ!? サーチ、しっかりして!」


「無念」


「ちょっ!? リルまで!!」


「な、流れ弾が……」


「ごめんなさい。リル姉の前で胸が小さいは禁句(・・・・・・・・)だった」


「うぎゃあ! ……がくっ」


「リルぅぅぅっ! リジー、リルに止めを刺さないで!」


「ごめんなさい」


「サーチ! リル! しっかりしてくださあああいっ!」



「うーん……対岸のお花畑にお婆ちゃんがいた気がする」


 ちょっと臨死体験してたらしい。


「うーん……周りがぽっかぽかの赤い光の中で、幸せなゴロ寝をしてた気が……」


 こたつかよ!

 臨死体験飛び越えて、転生体験かよっ!


「確かにサーチは責められるべき箇所は多大にあって弁護のしようも全くカケラも無いんですけど……」


 私に対しては容赦ないわね。


「それでも言い過ぎです、リジー」


「……うん」


「もっと言えばリルなんて、本当に何の関係も無かったんですよ」


「……はい」


「何より……せっかく試合開始を教えてあげた私に対する仕打ちも許せません!」


 そこかよっ!


「というわけで! サーチはリジーに謝って、リジーはサーチとリルに謝って、サーチとリジーは私に謝ってください!」


 ややこしいな!

 でも……確かにやり過ぎだったわね。


「リジー、ごめんね」


「うん、サーチ姉、私も言い過ぎた……ごめんなさい。それと」


 リジーは私の胸を凝視して。


「大丈夫。僅差(・・)だから」


 ……後で教育的指導を個人的に執行します。


「それと……何も関係無かったリル姉を巻き込んでごめんなさい」


「いいよ……私が勝手にダメージ受けただけだからさ」


 確かに。


「でも……」


 リジーはリルの胸を凝視して。


「……………………頑張って」


「……しくしく」


 ……リジー……またエグってどうすんのよ。


「それからエイミア姉」


 リジーがエイミアに向き直ったので、私も並ぶ。


「はい、何ですか?」


 腕組みをしてエイミアが待っていた。

 そう、腕組みをして。


「…………」

「…………」


 わざわざアンダーバストで腕組みして、意識はまっったくしてないんだと思う。思うけど。

 わざわざ大きさを強調する(・・・・・・・・)姿勢なのがムカついた。


「? ……何です、サーチにゅっ」


 私がエイミアの右頬を。


「ひゃひぃひゅひゅんにゅっ」


 リルがエイミアの左頬を。

 それぞれ持って……!


「いひゃい! いひゃみょーーーーーーーんんんん!!!」


 限界まで引っ張り抜く!


「びえええーーーーっ!!」


 あ。マジ泣きした。


「エイミア姉……」


 そこへリジーが優しく声をかける。


「ひぐっ、ひぐっ……リジーぃぃ〜」


「……天然も度を越すと、身を滅ぼす」


 傷口に塩と唐辛子とカレー粉を塗り込んだ。



 泣きながら夕日に向かって走っていったエイミアは……そっとしておく。


「リジー、ソレイユには私から詳しく説明しておくから。秘蔵中の秘蔵のアイテムをお願いしておくからさ…」


 リジーに合掌しながら話す。


「……ふう、わかった。サーチ姉、もういい」


「リジー……」


「秘蔵中の秘蔵のアイテム多数(・・)でお願い」


 めっちゃハードル上げないでくれる!?


「冗談。でも口利きはお願い」


「……わかったわよ」


 これでリジーとは手打ちとなった。


「いよいよベスト8か…やっぱり〝刃先〟(エッジ)以外も注意しないとダメだな」


「そうね……今回みたいなパターンは防げないけど、予めわかっていたら対処のしようはあったもんね」


 何ができるか、と言っても「わざと負ける訓練」をもう少し時間をかけてできる……くらいが関の山なんだけどね。


「ちょっとよろしいか」


「やっぱり警戒すべきは貴族の横槍よね。どんな妨害をしてくるか、わかったもんじゃない」


「……ちょっとよろしいか」


「だな。貴族に権力がある以上は、常にこっちが不利だと考えねえとな」


「ちょっとよろしいか!」


「貴族なんてカスでゲスでサイテーなキモ野郎ばっかりだしね」


「……! この虫けらがあ!」


 よっと。

 ひょい


「うぐ…!」


 うんしょっと。


「がっ! いたたたた!」


 後ろから女性を襲ってきた不届き者(・・・・)の一撃を避けて、腕を捻りあげる。


「あ〜ら〜、誰かと思えば、エイミアのお父様じゃありませんか〜?」


「いたたたたた! は、離せ! 無礼は許さんぞ!」


「あら! あらあらあら! 背後から私を襲ってきたチカンヘンタイゴーカンマのチョビヒゲ野郎が、何を仰るのやら?」


 リジーとリルを見て。


「いくら貴族でも、このスキャンダルは致命的よね??」


 と聞く。


「マズいな」

「マズい」


「……ということなんですけどー? あ、きゃーー、この変態が私の胸を触ったー」


 わざと(・・・)を押しつけて叫ぶ。よーし、いい具合に観客の皆様も集まったし。


「…さて、どうします? このままエイミアに手を出さずに黙って帰国するのなら……私達も今回のことは忘れます」


 私達に釘を刺しにきたつもりが、逆に刺されるとは思わなかったでしょうね。


「それとも……『セクハラ貴族』という異名を延々と呼ばれ続けたいですか?」


「く……! わ、わかった。エイミアには手を出さん……あ、明日には帰国の準備を始める! だ、だから」


「わかっていただけたみたいですね」


 大人しくドノヴァンさんを離した。


「それじゃあお帰りはこちらで」


 そのまま私とリルとで、会場から叩きだした。



「サーチ……お前わかってて(・・・・・)エイミアを他所へ行かせたな?」


「会場入る前から等間隔で付いてきたのはわかってたから、あとは仕掛けてくるのを待ってただけよ」


「仕掛けてくるって……わざわざデカい声で挑発してたよな?」


「さて……ね。挑発されて乗ってきたほうが悪いのよ」

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